社長のための「売れる高級品」開発塾 15号

「クチコミだけで売れ続ける“幻のバター”」

−「特撰バター」 カルピス株式会社 -

 外食産業、菓子業界も非常に厳しい市場環境下で生き残りの為の戦いが続いています。口の肥えた消費者はより美味しいものを求め、吟味し納得したものをこぞって選んでいます。

 商品の価値に見合ったものであれば高くても買うという傾向は飲食や菓子の世界でも顕著で、中途半端では消費者の支持は得られません。

 料理でも菓子作りでも、プロといわれる人達は、口を揃えてうまいものを作るには先ず、素材の良し悪しで決るといいます。もちろん匠の技、調理の技術がその素材の良さを更に際立たせるわけです。

 一流のシェフ、パティシエがこだわる素材の一つにバターがあります。今回ご紹介するカルピス株式会社(東京都渋谷区)の「特撰バター」は幻のバターといわれ、業務用として一流シェフやパティシエの間で高い評価を得、なかなか手に入らない逸品として噂になっていました。

 その内、秘伝の味を知ろうとする20〜30代の女性を中心とするお客様からの質問にお店側が答えていくうちに、問屋や会社にまで問合せが入るようになりました。「お客様の声を大切にしよう」という会社の方針で、それまでは業務用にしか販売していなかったのを、一般消費者向けに昭和48年より、販売を開始しました。

 このバターは本場のフランスの味に近く、「香り」「風味」と特に「のび」「滑らかさ」がプロから高く称賛されています。品質の良い牛乳から乳脂肪分を分離して作られる為、牛乳に近い白い色をしているのが特徴でもあり、品質の証にもなっています。

 「カルピス特撰バター」は限られた量しか生産しないため、なかなか手に入らない事から、幻のバターとも呼ばれ、値段は発売当初から変わっておらず、一般的なバターの約2倍(一般的なバターは200g−約300円で「カルピス特撰バター」は450g−1200円)もするのですが、微妙な美味しさを出す、隠し味として欠かせないものとなってプロの間で確実な需要があり、長期に渡りロングセラー商品となっています。

 現在でも宣伝は一切していないにも関わらず、口コミのみで年間20万個、約3億円を一般市場で売り上げています。もっとも今でも生産量に制限がある為、毎年同様の売上規模となっています。(バターの市場規模は年間800億円、内約3割が一般消費者用)

 食品に限らず、プロが使う商品が、一般消費者、ユーザーに知られ口コミ等に広まるケースは良くあります。特に質の高いものを求める傾向が高まっている消費者には「プロユース」の商品は魅力的であり、値段は高くても当たり前という感覚で捉えられます。

 高付加価値商品の開発の切り口にはこの「プロの認めた本物」というコンセプトは大変有効で広い範囲で応用ができます。以前ご紹介した大金ハムの「ロースハム」や錦見鋳造の「魔法のフライパン」などもその例です。

 現在プロ向けの商品や製品を手掛けている企業は一般市場へのマーケティングを考えてみるのも売上拡大の一手かもしれません。

内海悟



出版局トップにもどる
日本経営合理化協会 出版局 TEL:03-3293-0041