社長のための「売れる高級品」開発塾 08号

「なんと、一万円もするフライパンに注文が殺到!」
 4万人がウェイティング。今、注文しても1年8ヶ月待ち。

−「鋳造フライパン」錦見鋳造(三重県木曽岬町)-

 マスコミを通してご存知の方もいらっしゃると思いますが、鋳造のフライパンが今、飛ぶように売れています。

 この大人気のフライパンを製造販売しているのは、名古屋の郊外にある鋳造メーカー、錦見鋳造(三重県木曽岬町、錦見泰郎社長)です。錦見社長は、このフライパンを開発するのに何と10年近く掛けて苦労の末やっと出来上がった商品です。

 この商品の一番の特長は、鋳物でありながら厚さ1.5m/m、重さ980gという今まで考えられなかったような薄さと軽量化が計れているところです。しかも耐久性はアルミの30倍、鉄の4倍もあるというのですから驚きです。

 技術的な面ではまだまだ語れる点が多いと思いますが、錦見社長の開発したフライパンの一番の人気のポイントは、家庭のコンロの火力でも中華のプロが作ったのと同じように、チャーハンがパラパラとした仕上りに簡単に出来てしまう魔力です。

 社長に伺ったところ、元々は業務用として開発したのだそうですが、出来上がってみるとプロはもちろんのこと、むしろ素人の人からの人気が高く、注文が殺到しているのです。

 開発成功物語にはよくある話しですが、嬉しい誤算で当初の狙いとは多少違った対象者あるいは用途で、ヒットすることがよくあります。

 この商品の機能性のすばらしさはもちろんのこと、私が大変興味深く思っていたのは、何故1万円というフライパンとしては高額の値段で売ろうとしたのかでした。社長とのお話の中で、その辺の裏話を聞くことが出来ました。

 実は、出来上がったフライパンを某有名ホテルのシェフに評価してもらった際、この出来であれば、通常使っているフライパンは、3〜6ヶ月に一度表面をコーティングし直さなければならず、それには1万円位掛るので、「1万円だったら買うよ。」という返事が返ってきたので、1万円に値付けしたのだそうです。

 しかし、実際に流通を経由して小売り販売するとなると流通マージン、その他が加わり2万円〜3万円でないと合わない勘定になるため、一部直販ルートを除き、大半をインターネットを通して直接末端の消費者に販売しているそうです。

 業界での常識を打ち破った値付けであっても、価格に見合った価値を実際に利用するものが認めれば、需要は喚起出来るし販売の方法にしても今や伝統的な流通システムに頼らなくても、直接ユーザーに情報を伝達し、販売することも出来るのです。むしろ、その方が良いものを安く、経済的に提供できることにもなります。

 社長との会話の中で、この大ヒットに関して「たまたま偶然に当っただけですよ」と強調していましたが、私も開発者の一人として、脱下請けに掛けた一念と、10年もの歳月と、試行錯誤を重ね諦めることなくこのフライパンを完成させた信念と情熱に敬服します。

 開発あるいは脱下請けを目指し新しいものに挑戦していらっしゃる方々に、錦見社長の開発に対する姿勢を是非見習って頂きたいと強く感じました。

内海悟



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