うえじゅんの「自腹で試した流行りモノ」 23号

あぁ、マーケターの思い違い!?
さまざまな経験をし尽くした女性が
本当にいきつく先は?


『プチアウトドア』

ワクワク、ドキドキがなければつまらない!

先日、北関東で有名な川下りを体験した。
案内の男性が「見どころは、この最初の大きな岩だけだよ」と冗談めかしていっていたが、下り終えてみると、男性のいったことが本当だったことに愕然とした。45分たんたんと川をくだって2500円。

川の際には、旅館が立ち並び、川の流れもどんよりしていて、景色がいいわけでもなければ、ワクワク、ドキドキ感もまったくない。

京都の保津川下りは、嵐山に到着するが、終着間際にエンジンをつんだ船がおでんやらビールやら売りにきて、それはそれで楽しめる。終着地点の嵐山はどんな季節に行っても美しい。それに乗務員の方々がサービス精神旺盛なので、トークだけで楽しませてもくれる。

しかし、北関東のそれにはそういった配慮は一切ない。ただ、たんたんと川をくだったあと到着したのはおみやげ屋。30分ほどまたされてから送迎バスがきた。その理由は待っている間に買い物をしろということらしい。

ワクワク、ドキドキ感がまったくない、ホスピタリティーも一切感じられない、どんよりしたライン下りの途中。歳の頃は60歳。全身を上品なブランド物で固めたお金持ちのマダムが、幼い孫をつれた娘に対して、突然、大きな声で言った。

「私が、やりたいのはあれなの〜!」。

指差した先は、ヘルメットかぶってライフジャケットを身につけたラフティング軍団とカヌー軍団。その何人かは川にぷかぷか浮かんでいる。みんな大声で笑っている。

マダムはテレビで見たことがあるといっていた。ラフティングという言葉はご存知なかったが、「ああいう、もっとスリリングなのがいいのよ」とおっしゃっていた。

うん、確かに。私もあっちがやりたい…。



リピート率ほぼ100%のラフティングツアー

というわけで、私が出かけた先は、徳島県、吉野川の大歩危。
ここでラフティングとカヌーのスクールとツアーを運営なさっている素猿(スモンキー)を主催している田村賢一さんを訪ねた。

この方にぜひ会ってみたいと思ったきっかけは、人気テレビ番組『銭形金太郎』だ。田村さんは『田舎暮らし貧乏さん』として紹介されていた。

テレビでは多いときで月収15万円。オフシーズンはお客さんがいないので収入がゼロになると紹介されていたが、なにしろ、家の目の前は見渡す限り山。車で10分程度で吉野川。借りている家は10個くらいお部屋があるのに家賃15000円なのでビンボー感はまったくない。


カヌースクール・素猿(スモンキー)

「田舎暮らしビンボー」さんは『銭形金太郎』でも高視聴率を取得。そのため、「林間学校」と称し、特番のときにオールキャストが田村さんの元を訪れた。写真は田村さんの自宅兼オフィス。目の前は絶景の山。
http://www.smonkey.jp/



この田村さん、もともと広島のご出身だが、吉野川の魅力にとりつかれて通っているうちに、移住なさったのだという。借家を借りるまでの間はテントで暮らしていたこともあるのだとか。

田村さんが大歩危に移住なさったのは10年ほど前だが、そのあとも、川の魅力にとりつかれて、都会からぞくぞくと若者が移住してきているそうだ。

吉野川の川岸には、東京・渋谷の東急ハンズの目の前にあるアウトドアショップ「モンベル」まであるのだからただの田舎ではないことがうかがえる。

カヌーやラフィティングのツアーに参加する方は、「ビンボー」と紹介されていた、こちらのおうちに泊めてもらうこともできる。おどろくことにリピート率はほぼ100%。顧客には若い女性客も多い。



露天風呂

『銭形金太郎』の特番でオールキャストが訪れたときに、「お礼に」と作ってくれた、はしごをのぼって入る屋根の上の露天風呂。外にあるのになぜか追い炊きもできる。ビールを飲みながら山や星を眺めるのは最高っす!


やぎ

宿泊客は田村さんが飼っているヤギのすずちゃんのお散歩もできます。



カヌーを教えていただいた吉野川は、国立公園でもあり、今までに見たことがないほどの絶景。川の両側には、2万年前の地層がむき出しになってそそりたつ。研究のために世界中の地層学者が訪れているそうだ。



留学したい人とラフティングしたいマダムの共通点

私、うえじゅんはカヌーだけでなく、こちらで生まれて初めて焚き火させていただいた。私は滋賀県・彦根市という家の回りはすべて田んぼという田舎で18歳まで過ごしたが、ボートに乗ったこともなければ、焚き火をしたこともない。アウトドアな遊びとはまったく無縁なインドア少女だったのだ。

で、この田村さんの焚き火がすごい。
丸太をチェーンソーで切り出し、なたを使って割り、チップ状のものを削り、乾いた杉の葉を集め、それらをくみ上げて火をつける。紙や着火剤は一切使わない。

紙を使うから細かい燃えカスがそこいら中に舞い続けるということを田村さんに教えていただいた。美しい炎を見ながら飲むと、東京中のどんなオシャレなバーより幸せな気分に浸れた。

留学をしたい方のサポートをしている『留学図書館』の代表・平川理恵さんがこんなことを言っていた。

「お客様は4歳から70代後半まで。特に最近増えているのが、50代、60代でお子さんの手が離れて、短期留学したいという女性からのご相談です」

このマダムたちが希望するメニューを一言でいうと「安全な猿岩石」なのだと平川さんはいう。

「猿岩石」とは、日本テレビの人気番組『進め、電波少年』という番組で、猿岩石という若手芸人が、世界中を旅するという企画。

留学だからといって、学校と宿舎の往復だけでなく、安全ということが保障されていながら、地元の人との交流があって、わくわく、どきどき、ちょっぴり冒険心も満たされるもののようだ。

この志向、どこか、「ラフティングをやりたい」といったマダムともかぶる。




中高年の女性が本当に欲しているニーズとは?

「中高年になると、人は渋く枯れる」というイメージを、若いマーケターたちは抱きがちだが、それは大きな間違いだと私は思う。

高齢の女性とお話させていただいていてつくづく思うのは「ドラマなんておよびじゃないほどに、たいがいのことはご経験なさっている。ちょっとやそっとの刺激では動じない」ということだ。

人生で起こるさまざまなことのほかにも、都会でできる、グルメやショッピング、旅行やカルチャーも。ちょっとやそっとの揺さぶりでは心を動かすことができないのではないだろうか。

「高級化」という揺さぶりもあるが、それもたいてい自身の金銭感覚が許す範囲内では経験済みだろう。それに比べれば、アウトドアやプチ冒険は、思いもしなかったパンドラの箱といったところか。

恋愛指南のオーソリティー・後藤芳徳さんが、「自分が許容できる範囲内で揺さぶりを大きくかけられた人ほど、相手の気持ちをがっちりと捉えることができる」ということをおっしゃっていた。

ちょっとやそっとのことには動じないさまざまな経験をつんだ女性にとって、「高級化」よりも揺さぶりをかけられたのが、安全を保障されたアウトドアやプチ冒険なのかもしれない。

田村さんの元に一人でカヌーを習いにきた59歳のある女性は鼓のお師匠さんだという。川とカヌーの魅力にとりつかれた彼女は、今では滝をカヌーで下ってしまうほどの腕前に上達したそう。田村さんや田村さんの仲間とともに、ニュージーランドまで遠征し、滝下りを楽しんでいるという。

私も「アウトドアうえじゅん」を宣言したばかりだ。




■今回の自腹■

素猿(スモンキー)カヌースクール費用

 一日15000円×2=30000円


 合計30,000円チーン!。







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