うえじゅんの「自腹で試した流行りモノ」 19号

シニアのニーズを満たして大躍進する旅行会社


「クラブツーリズム

全国各地で遭遇する謎の軍団?!

 私、うえじゅんは旅行が大好きで、時間をやりくりしては、全国を飛びまわっている。

 そのせいもあってか、真冬の北海道・旭川の旭山動物園で、京都で、箱根で、日光で…、やたら頻繁に遭遇する謎の軍団がずっと気になっていた。

 その軍団は、五色の人間が踊るお揃いのバッチをつけている。あるとき、オフィスのある最寄り駅、丸の内線「西新宿駅」のホームの看板に、あの謎のマークを発見した。「世界遺産プラザ」とある。

 そこは、駅に直結しているビルにあるというので、さっそく訪ねてみた。「世界遺産プラザ」で行われていたのは「日本の自然遺産展」で入場料500円。2005年7月に世界遺産登録された、知床半島の他に、屋久島、白神山地などが、写真と解説のパネルで解説されている。

 「旅行会社?」とも、思ったが、よくありがちな、申し込みカウンターがない。会場にもエレベーターにも中高年の男女がやたら多い。「いったいなんなんだ?ここ?」。

というわけで、広報の森田真理子さんにお話をうかがった。



日本で初めて、新聞誌面での旅行販売を大成功させた人

 五色の人間が踊るマークの会社は、旅行会社「クラブツーリズム」。2005年3月期の売上高1288億円。顧客の約70%が50歳から70歳のアクティブシニア。年5回以上旅行を楽しんでいる方が約60%。薄利多売、競争激化で頭打ちといわれる旅行業界の中で、2980円のバスツアーから、数千万円の宇宙旅行までをパンフレットで通信販売を行い、業績を伸ばし続けている企業なのだ。

 海外、国内に関わらず、お値打ちの旅行といえば、新聞誌面に掲載された広告がまず浮かぶが、この「新聞誌面に旅行を掲載して販売する」という手法を初めて試み、大成功させたのが、このクラブツーリズムの会長である高橋秀夫氏なのだ。

 高橋会長は、元近畿日本ツーリストの方。盛岡支店で支店長を務めていたときに、新聞媒体で販売することをスタートし、大成功を収め、渋谷営業所の所長を経て、社長にまで務めあげた方だという。



お客様自身が口コミをしながら、パンフレットを手配り

 クラブツーリズムが他の旅行会社と最も異なることは、「旅の友」というパンフレットで通信販売していることだ。

「たびともバスツアー」パンフレット

バスツアーだけを集めた、「たびともバスツアー」。日帰りから北海道、九州を巡る旅まで。新宿、東京、上野、渋谷、…など、なんと35箇所から出発!! 最寄駅から乗り降りできる。


「旅の友」のパンフレット

国内、海外の旅行掲載した、旅の情報誌「旅の友」。毎月発行されるカタログをお届けしてくださるのは、業者ではなく、なんと、お客様がご近所に手配りで!!


 旅行会社は通常、駅前の一等地に店舗を構える。ところが、そのためには、ものすごいコストがかかる。

 一方、新聞媒体は低コストで利益は大きい。そこで、高橋会長は、新聞媒体で集客した既存顧客に対し、店舗を構えず、パンフレットによる通販を行うという旅行業界における画期的なビジネスモデルを構築したのだ。

 ところが、配送部数が増えていくにつれて、配送コストが負担になるとともに、「旅の友」が捨てられるという事故も頻発。そこで、なんと、お客様ご自身に「旅の友」を有償で配布していただいくようにしてしまったのだ。毎月発行される、この「旅の友」。現在では、なんと全国380万世帯790万人の方に配布しているのだとか。

 この手配りしてくださる方を「エコースタッフ」という。お一人のエコースタッフがご近所300箇所に配る。

 ポスティングでもかまわないのだが、どうやら人は旅行に行って楽しかったことは、話たくてしかたがないようだ。そのため、「私、この前、ここに行ったのよ。あなたもぜひ、言ってみて」と玄関先で、率先して口コミしてくれるのだという。

 これが健康と地元における仲間作りにも役立つと大好評。ギャラはそれほど高くはないにも関わらず、全国で一万人のエコースタッフがいて、さらには、キャンセル待ちが出ている状況なのだとか。びっくり!!



競合他社がまねできないしくみとしかけ

 とはいえ、新聞広告を打ったり、パンフレットを作成して通販を行うことは、他社もすぐできそうなもの。なぜ、クラブツーリズムだけが、一人勝ちできるのか。それはどうやら、顧客との関係作りにありそうだ。

 旅行業界に限らず、どの業界も自社商品に対するロイヤルティーをあげるため、会員の囲い込みを試みている。だが、いずれも、割引特典などのサービスの囲い込みに留まっていて、顧客と対面して要望を聞き入れ、顧客満足を満たそうというものではない。

 そこで、クラブツーリズムでは、この顧客と対面する添乗員に正社員を登用することで顧客満足を満たそうとしているのだ。

 実は、通常の旅行会社の添乗員さんは、皆、派遣社員なのだとか。確かに、繁忙期と閑散期の差が大きい旅行会社で、正社員を抱えていては、人件費がたいへんだ。

 ところが、派遣社員に、お客様から得た情報を旅行会社にフィードバックしてもらうことは現実的になかなか厳しい。なぜなら、派遣社員は、お客様を案内するのに精一杯な上、一つの添乗が終われば、他社のツアーを添乗しなければならない。そのようなサイクルのなかで、派遣添乗員のコメントを企画やサービスに生かす体制を構築するのは、かなり難しいからだ。

 そこで、クラブツーリズムでは、添乗員を自社で育成し、お客様から得た情報を次の新商品に反映するしくみを作ったのだ。



旅を売るのではなく、同じ趣味を持つ仲間作りを支援

 高橋会長が近畿ツーリストの渋谷営業所長だった頃から、旅から戻ると、お客様が楽しかったお礼にと、現地で描いた絵や、写真を届けてくださる方がいた。

 その様子を見て、高橋会長は、「お客様にとって、旅は単に目的地に出かけることではなく、これからは、旅先でどう楽しむかを旅行会社としてもバックアップしていくことが大事だ」と判断。

 送られてきた写真や絵を飾る場を提供したり、カメラ教室やスケッチ教室、旅行のための語学教室、旅行先の文化に触れるセミナーなどを開始。現在では、東京メトロ・丸の内線「西新宿駅」に直結するビルのなんと、地下1階から16階までほぼ8割のフロアを借りて、本社機能とともに、お客様が集える教室や展示場を設け、年中無休で朝から夕方まで、連日いくつものプログラムが展開しているのだ。



国内バス旅行に力を入れて大成功

 多くの旅行会社は、国内3、海外7の売り上げ比率だが、クラブツーリズムは、国内7、海外3。中でもパスツアーに力を入れたことが成功の要因だという。

 テレビ、雑誌で、旅やグルメ情報が、大量に流れていることから、お客様は、行きたい場所、食べたいもの、体験したいことを明確に持っている。その顧客の趣味志向に合わせたその目的を果たせるように商品を企画する。

 たとえば、朝日を浴びる富士山を撮影したり、星空を撮影するバスツアーは、深夜出発して車中泊。地方の花火大会だけを見に行くツアー、京都を低コストで存分に自由時間を過ごしたい方のためには、往復のバスとホテルでの宿泊のみがついたツアーなど、お客様の要望がみえているからこそのラインナップをエリア毎月50本以上提案する。

 さらに、テーマがあるシリーズものの旅も次々と提案。たとえば、「百名山を登る」「東海道五十三次を約二年間かけて歩く」というようなシリーズを発売するやいなや、リピーターが続々と集まった。



一人参加が条件のツアーも

 クラブツーリズムの顧客の半数は50代以上。その中には、配偶者を亡くしてしまった方や、家族や友人はいても、それぞれの予定を合わせるのが面倒という方もいる。そこで、一人参加が条件のツアー「ララ」も提案。首都圏だけで、3万人!もの利用者がいるのだという。

「おひとり参加の旅」パンフレット

おひとり参加が条件のカタログ。ご夫婦や友人同士の多いツアーに抵抗のある方や、ご家族やお友達と休みを合わせるのが大変という方に大好評。ご利用客の79%が女性、50代以上の方が82%。


「世界遺産プラザ」と「日本の自然遺産展」

クラブツーリズムのプロモーション事業として、世界遺産に対する啓蒙を行う「世界遺産プラザ」。年中イベントが行われている。2005年2月にはNPO法人世界遺産アカデミーを設立。チケットのもぎりをしてくださったのは、NPOの活動に参加するボランティアスタッフだった。



 海外へ出かけるツアーでは、旅行前に顔合わせの会を設け、顧客に安心感を与え、旅を仲間と出会うための場として提供しているのだ。

 また、「ララ」で、知り合った仲間同士が、今度は通常のツアーに参加するという相乗効果も表れているのだとか。

 さて、冒頭に私が訪ねた「世界遺産プラザ」は、高橋会長が理事を務めるNPO法人「世界遺産アカデミー」が運営する施設だった。

 世界遺産を訪れたいという方は思いの他多い。こういう方たちに、単に旅行を販売するのではなく、世界遺産に対する啓蒙や保護を訴え、また、クラブツーリズムのプロモーション事業としても活用しているのだ。

 この他にも、クラブツーリズムの中には、いくつかのNPO法人がある。営利企業では、企業はお客様に商品や情報を提供し、また、反対にお客様は提供される側になりがちだ。その垣根をとっぱらいたい。お客様が自主的に活躍する舞台を用意しようと、クラブツーリズムが事業的な部分でバックアップをする別法人を戦略的に作ったのだ。

 単に旅行を販売するのではなく、仲間との出会いや、文化、学び、感動を共有できるコミュニティ作りを促すクラブツーリズム、今後ますます成長し続けるに違いないと確信した。




■今回の自腹■

日本の自然遺産展入場料 500円

 合計500円チーン!。







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