うえじゅんの「自腹で試した流行りモノ」 06号

ひとり暮らし歴25年の「負け犬」×
「おひとりさま」だからこそ、
身にしみるサービスの勘違い


「おひとりさま」向けサービス

いま、「おひとりさま」がねらい目

「どんなに美人で仕事ができても、30代以上・未婚・子ナシは『負け犬』」。--
流行語大賞に選ばれはしなかったが、今年、相当に世間をにぎわしたキーワードだ。

 それに続くかのように、近頃、注目を集めているのが「おひとりさま」だ。「おひとりさま」とは、レストランなどを一人で利用する際に、「お一人様ですか?」と聞かれることからと、ジャーナリストの故・岩下久美子さんが著書『おひとりさま』の中で定義した。

 岩下さんによれば、「『おひとりさま』とは、自分ひとりの時間や生活を大切にできる、『個』が確立した女性のこと。仕事にもプライベートにもいきいきと生き、家族や恋人との時間も大切にする女性を指す。女性一人でもバーやレストランに行って楽しんでしまおう」というものなのだとか。

 この「おひとりさま」を狙って、右肩下がりのホテルや飲食、旅行業界はこぞって「おひとりさま」プランを打ち出している。

 「おひとりさま」はイイと思ったらどんどんクチコミで拡げてくれるし、常連になってくれるし、おカネ払いもいいし…。それはもう、不況やリストラでぐったりしたオジサン客達とちがって、まさにねらい目。


筋金入りの『おひとりさま』にはスグお店の姿勢が分かる

 さて、個が確立しているか、仕事もプライベートもいきいきと生きているかはさておき、私、うえじゅんは『負け犬』なうえに、自活×一人暮らし歴25年の筋金入りの『おひとりさま』だ。

 思いたったときに、自分が好きなように、見たり聞いたり、飲んだり、食べたりできるのがお一人様のよいところ。お茶、飲み、コンサート、ホテルはおろか、一人焼肉、一人旅館、一人温泉はなんのその。ハワイに遊びにいくのも一人だから、「自立じゃなくて孤立じゃん」とつっこまれそうだが。

 こんな風に一人で行動していると、出向いた店が本当に顧客満足を満たす店がどうかというのが見えてくる。

 そうして思うことは「大勢で行って顧客満足を満たす店が一人で行って顧客満足を満たすとは限らない。しかし、お一人様対応がすばらしい店は、どんな客が訪れても、気持ちよく過ごすことができる」ということだ。

 「うちはお客様に満足していただけるように努力しております」と声高にいっているようなお店はたいてい信用できない。

 お店に入って「一人です」と告げるやいなや、「お一人様ですう」と、山びこのように掛け声が店内中に響き渡る。勘弁してくれって。

 一人焼肉でよくおじゃまする叙々苑では、「お願いだから、勘弁してください」と数回お願いしたおかげで、やっと大コールをやめてくれた。

 「一人で焼肉かよ」と思われるかもしれないが、新宿のある叙々苑のランチタイムは半数近くが一人中高年女性だ。まあ、私のような独身はレアケース。大半が既婚者のようだが。


「おひとりさま」に配慮できるお店は繁盛する

 超高級フレンチの「クイーンアリス」も、中高年の女性一人客が多い。自分の好きなものを、気兼ねなく食べられるのがよいのだろう。

 「クイーンアリス」がメインダイニングとして入っている「パンパシフィックホテル横浜」の鉄人シェフ・石鍋裕氏らが自ら腕を振るうディナーショーでは、一人参加のマダムも多い。

 顧客満足のお手本ともいわれるディズニーランドに私は何度か一人で遊びに行っている。一人だから、並んでいる間も本を読んでいればいいから、全く退屈しない。

 私の番になると、さすが、ディズニーランド。ペアで並んで乗るような乗り物の場合、「お一人様ですか?」と、私にだけに聞こえるように、小声で聞いてくれる。

 先に私が「一人です」といえば、お相手は「わかりました」というように、微笑みながらうなづくだけだ。この配慮がうれしい。

 一方、三好和義氏の写真集『和の楽園』にも載っている温泉に行ったときのことだ。写真以上のすばらしい宿とサービスに感動した。しかし、翌日の朝食がいけなかった。

 夕食はそれぞれの部屋でとるのだが、朝食は宿の都合で、ひとつのお座敷につめこまれ、一人分のお膳に乗せられた朝食をいただく。

 このときのレイアウトがすごかった。全員がフォークダンスのように大きな輪を描くようにお膳が並べられていたのだ。ご夫婦、未婚の恋人同士、不倫カップル、私お一人様。自己紹介しなくとも、一目でどういうカップルかが判断できてしまう。うーん。これじゃまるでつるしあげだ。

 「奈良ホテル」では、一人で泊まると、家族連れやカップルと自然と目線が合わないような席に案内してくれる。だからといって、「一人だから末席」ではなく、一人だからこそ、鹿や桜を眺めているだけで幸せな気分になれる席に案内してくれるのだ。もちろん、「お一人様ですう」の大連呼はない。


いまどき、大盛がサービスのつもり?!

 先日、取材で北海道の洞爺湖と旭川を訪れた。旭川で女性のタクシー運転手さんに「夕食に絶対オススメ」と案内された居酒屋に一人で出かけた。嫌な予感がした。案の定「お一人様ですう」の大コールだ。

 席につくと、若い女性店員さんが「飲み放題になさいますか?」という。聞くと90分1280円で、大ジョッキ3杯分飲めるのだそうだ。

 「いや。いくらなんでも、一人でそんな飲めないから」と断った。

 メニューの写真を見ながら、「手作り出し巻卵」と「じゃがいもあげ餅」と「アスパラベーコン」を頼んだ。「足りなかったら、後で頼みます」といった。最初に出てきたのは、ほぼお盆と同じサイズの大皿に乗った出し巻卵。

どどーんと出てきた、なんと卵8個分の出し巻卵 470円。
大きさとか大盛自慢もいいけれど、一人でこれ食べたら、もう後、何も食べられないとかって考えない?!

 あまりの大きさに目を白黒させていたら、さきほどのかわいい女性店員さんが、「卵8個分です」と微笑んだ。

 「一人じゃこんなに食べられないから、おはしつける前に、まかないのときにみんなで食べない?」というと、「お持ち帰りの折も用意してますから」と小走りで折と袋と用意してきてくれた。

 次に出てきた自家製いも団子は、両手で丸を作った大きさほどの餅状態のものが4つもある。もうほとんどフードバトル状態だ。

 どうしても、おにぎりが食べたくて、頼んでみると、これまた丼一杯ほどの大きさのおにぎり。

 元気のいい掛け声と、満面の笑みもいいが、なぜ、オーダーをしたときに、「お客様、うちはすごく大盛ですよ。たとえば、ご注文になった出し巻きは卵8個使っていますが、大丈夫ですか?」と一言、声をかけないのだろうか。

 ほとんど一口づつつまんだ状態の料理を残し、「おひとりさま、お帰りですう」の大輪唱を背に受けながら、「マニュアルに書かれている以外のことをやったり、言ったりしたら、怒られると思っているのか?」と疑ったりもした。



おひとりさまのワガママ

 この前日、若い女性憧れのリゾートホテル「ザ・ウィンザーホテル洞爺」に泊まった。ここに入っている「ラ ロカンダ デル ピットーレ」は、私が思うにここは日本で一番のピザ屋だ。味はもちろん、サービスもすばらしい。

若い女性憧れのリゾートホテル「ザ・ウィンザーホテル洞爺」のピッツェリア「ラ ロカンダ デル ピットーレ」は、うえじゅんが思うに日本一のピザ屋。

 私が一人だとわかると、店員さんはメニューを持ってくるやいなや「メニューには書いておりませんが、ピザはお好みのピザをハーフ&ハーフでお作りすることもできます」「ピザ以外のメニューもハーフサイズでお作りすることもできます」と、さらりと案内してくれる。

 私が「ピザもパスタも食べたいけど、そんないろいろ食べられないなあ」と悩んでいると、「では、ピザはハーフサイズのハーフ&ハーフにして、パスタもハーフサイズにしてはいかがでしょうか」と提案してくれる。

いろいろ食べたいおひとりさま心に配慮してくれるお店はありがたい。

ハーフサイズでハーフ&ハーフのピザ「ピアチューレスペシャル」2860円。


で、こちらはハーフサイズのパスタ「ペンネゴルゴンゾーラ」1120円。

このちょっとづつというのがホント、嬉しいのだ。


 「そんなことまでお願いできるんですか?」と驚き、お礼をいいながら、よさげなものを3つ頼んだ。

 すると、「お客様、そのピザだと、両方トマトソースで、味が似てしまいますから、ピザの半分はこちらはいかがでしょう」とすすめてくれた。

 出てきたピザをデジカメで撮影していたら、「シャッター押しましょうか」と笑顔で声をかけてくれた。そう。一人だと自分が映った記念撮影はほとんどないことを察してのことだ。



実はちゃんとお勘定に入っていたりしても嬉しい!

 さて、お勘定だが。ハーフサイズだからといって、値段は決して半額ではないと思う。そう、値段なんて全く覚えていないのだ。それよりも、ただ気を使ってくれたことがうれしく、東京に帰ってきてから、このピザ屋と居酒屋の話を何人の人に話してきたことか。

 男性のおひとりさまがひきこもり系なのに比べ、女性のおひとりさまは、一人でも、友人とも、ボーイフレンドとも、家族ともと相手も行き先も多様化している。

 そのうえ、体験してよければ、さまざまな相手を連れて足繁く通い、悪ければ、「あれはひどいわよ。やめたほうがいいわよぉ」と、大きく話が膨らんで伝わる。

 エンドユーザーをお相手にビジネスをなさっている方は、どうかお一人様を大事になさってください。きっと大きな見返りがありますから。(笑)


■今回の自腹■

某大手居酒屋チェーン店 北海道・旭川店
生ビール(中) 370円
お通し 350円
卵8個分の出し巻卵 470円
自家製いも団子 280円
アスパラベーコン 520円
おにぎり(梅) 150円
シジミ汁 150円

で小計 2290円

「ザ・ウィンザーホテル洞爺」のピッツェリア
「ラ ロカンダ デル ピットーレ」

ピザ「ピアチューレスペシャル」 2860円
ハーフサイズのパスタ「ペンネゴルゴンゾーラ」1120円。
生ビール600円
ミルクティー 400円
サービス料 498円

で小計 5751円


  

やっぱりハーフサイズでも料金は普通サイズとほとんど同じじゃん!! 知らなかった・・・・・・。まあ、ちょびっと引いてくれてくれてるからいいか(笑)。おいしいし、おなかいっぱいだったし、残すの嫌なんだもん。
よーく考えたら、ピザ屋さんでの方が余計に払っているのに満足してるこの感覚、お分かりいただけます?

 合計 8,041円チーン!




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