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8出口光の「天命と経営」17号 |
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「人の聴き方から天命を推理する」 |
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前号では、人は、大きく分けて、達成的傾聴、親和(関係)的傾聴、献身的傾聴、評価的傾聴の4つの聴き方を持っていることを探求した。
あなたは、経営の現場で、また、家庭で、4つの聴き方のうち、どの傾向が強いかを掴むことができただろうか? また、あなたの周りの経営幹部は、あなたの話を、あるいは、お互いの話を、どのような聴き方で聴いているのだろうか? かつて、私は経営幹部数人と共に「マハトマ・ガンジー」のドキュメンタリー番組を見ていた。インド独立と世界平和のために、数十回も投獄されながら、非暴力・不服従を貫いた偉人の人生だ。 私は、その番組を見ながら、「お前にそのようなことができるのか」と突きつけられているようで、私には「このような人生を送ることはとてもできない」と思い、その場から逃げ出したい思いに駆られた(達成的傾聴)。 ひとりの幹部は、「このような人にぜひ会いたい。どのようにすれば会えるのか」と思ったと言うのだ(親和的傾聴)。もうひとりは、涙をボロボロ流しながら、「私に何かできることはあるだろうか」という想いが出てきた(献身的傾聴)。さらに、他の人は、「どのようにしてこのような人ができたのだろうか?」と興味を持ちながら、観ていたのだ(評価的傾聴)。 私たちは、同じドキュメンタリー番組を、全く異なる世界から聴いていたことになる。私はなにもテレビ番組の感想の話をしたいのではない。実際の経営の場で、人生で、人びとは異なる視点から世の中を見ていることを伝えたいのだ。 経営者としてのあなたの基本的な聴き方、つまり世の中を観る視点を 自覚し、あなたの経営幹部の基本的な聴き方とその世界を掴むことができれば、あなたはその経営幹部と同じ聞き方で相手の話を聴くことができる。 さらに、あなたの言葉が相手にどのように理解されるのかを知ることができれば、その時、あなたの人間関係は大きく前進し、経営の質は確実に高まるだろう。 それでは、第17の天命を経営に生かすための質問は、これだ。 「あなたは、なぜ特定の聴き方をしているのだろうか?」 4つの基本的な聴き方を持つ人たちが、どのような世界に住み、どのような天命を持っているのだろうか? また、それを掴むことで、どのように経営に活かせるのかをさらに探求してみよう。 1.達成的傾聴が顕す世界 まず、達成的傾聴の強い人は、なぜ人の話を、自分に「できるかできないか」と聴くのだろうか? それは、多くの障害や苦難を超えて達成することが基本的な価値だからだ。達成的傾聴の世界では、何かを成し遂げることに価値を置き、動機づけられているからこそ、人の話を、自分にできるかどうかという視点から聴くことになるのだ。 私もこの達成的傾聴の強い世界に住んでいる。このように世の中を観る人は、まず、行動することが大切であり、「とにかくやってみよう」という思考が強くなり、物事を前進させるために激しく行動する人生を歩むことになる。 したがって、この傾聴の強い私には、「自分はいまだ成し遂げていない」という想いが、時々に出てくる。これは、私の世界にとって人生の根本的な嘆きとして存在しているのだ。 しばしば発する言葉は、「絶対にやる」「思い切ってやろう」「負けたくない」「白か黒か」「情けない」「不甲斐無い」「覚悟する」「耐える」などである。 これに対して、周囲の人からは、「人の話を聴かない」「単純」「無茶をする」「よく考えない」などと批判されることもしばしばあり、強引な印象を与えている。 達成的聴き方をする人たちには、物事を切り拓いていく尊い役割がある。このような人たちの人生を振り返って統合してみると、その行動の中には一貫した不動のものがある(第8話参照)。 それは、ここでは天命と呼ばれ、「変革する」「挑戦する」「立ち上げる」「達成する」などの「前進」に関わる動詞で表すことができる。逆に言えば、このような天命があるからこそ、達成的傾聴をするようになるのかもしれない。 2.親和的傾聴が顕す世界 親和(関係)的傾聴をする人は、「自分のグループに関係あるかどうか」となぜ聴くのだろうか? 親和的傾聴で世界を観れば、自分のグループや仲間の利益になるかどうかが価値であり、所属する集団の和を保ち、集団のために行動する人生を歩むことも頷ける。 しばしば発する言葉は、「皆が言うから」「力になりたい」「仲間のためなら」「一緒にやろう」「ルールを守れ」時間を守れ」などである。 これに対して、周囲の人からは、「自分がない」「何を考えているかわからない」「自己表現がない」「自分の意見が無い」「杓子定規だ」などと批判され、集団に合わせてばかりいて、自分がないように思われていることもしばしばだ。 親和的傾聴をするひとには、グループの和や利益が最優先であり、それをいかに実現するかが世界を観る基本になっている。したがって、常に、自分は皆のために役に立っているかという視点から自分自身をフィードバックするので、親和的傾聴が強ければ強いほど、「自分は皆の役に立てていない」という根本的な人生の嘆きが出てくる。 このような聴き方をする人たちには、社会や集団の中に調和を創る尊い使命が隠されており、天命は、「調和をつくる」「役に立つ」「守る」「伝える」といった「調和や親和」に関係する動詞で表すことができる。言い換えれば、この天命だからこそ、特定の人に親和的傾聴が強く備わっていると見ることができるのだ。 3.献身的傾聴が顕す世界 献身的傾聴の強い人は、なぜ人の話を「相手に何をしてあげられるだろう」と聴くのだろうか? その人は、「相手を幸せにしたい」「世の中のためになることをしたい」という価値に基づく世界に住み、相手のために献身的に行動する人生を歩んでいる。 したがって、この傾聴が強ければ強いほど、「相手のことをこれほど思っているのに、分かって貰えない」という嘆きが出てくるのだ。 しばしば自分に発する内的な言葉は、「相手が幸せになるように」「自分をわかってもらえない」「私のことをどう思っているの」「こんなにやっているのに」「感謝されない」といったものである。これに対して、周囲の人たちからは、「話が長い」「迷惑をかける」「暑苦しい」「綺麗ごとを言う」と思われることがしばしばある。 献身的傾聴の強い人は、グループの中であっても、あくまで一対一の関係が基本であり、特定の人に対してより貢献したいと思うのだ。親和的傾聴の強い人は、個人というよりグループに対して役に立ちたいと思う点において、献身的傾聴の強い人と異なっている。 このような聴き方をする人たちには、人を癒したり育てたりする愛情に溢れた尊い使命が隠されている。天命は、「育てる」「癒す」「助ける」「活かす」「救う」といった「愛育」に根ざした動詞で顕すことができる。 献身的傾聴が顕れる源泉は、まさに、この天命が大きく関係しているかもしれないのだ。 4.評価的傾聴が顕す世界 評価的傾聴の強い人は、なぜ人の話を「わかるかどうか」と聴くのだろうか? その人は、「人の話がわかるかどうか」「面白いかどうか」「本物かどうか」を、自分なりの基準で評価しながら世界を見ているのだ。そして、自分の生き方、自分なりのこだわりを貫くマイペースな人生を歩んでいる。 評価的傾聴をするひとは、自分なりの基準に達しているかどうかが物事を評価する基本になっている。したがって、常に、そこから自分自身をフィードバックするので、評価的傾聴が強ければ強いほど、「自分には能力が足らない」という人生の根本的な嘆きになる。 しばしば発する言葉は、「面白い」「無駄なことはしたくない」「失敗したくない」「先が見えない」「わからない」「面倒くさい」といったものである。周囲の人たちには、「冷たい」「考えてばかりで行動しない」「理屈ばかり」などと思われる傾向にある。 評価的傾聴の強い人は、物事の本質を探究する尊い役割が秘されている。このような人達の人生を統合して観たときに顕れる天命は、「工夫する」「作る」「探求する」「楽しませる」「評価する」「解決する」といった「知性」に関する動詞で顕すことができるだろう。 「なぜ人は特定の聴き方をしているのか?」という第17の問いの答えも次第に明らかになってきた。 図1を見てほしい。異なる天命によって、異なる聴き方で世の中を見ているかもしれないことを表現したものだ。 |
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人にはそれぞれの天命があり、それを実行するように、特定の世界観で世の中を観るように動かされているのではないか。 もし天命の種類によって、特定の聴き方が人に備わるとするならば、それはとても興味深く、深遠なことだと思わざるを得ない。 もしあなたは、経営者として幹部や社員の持つ特有の聴き方を知り、そこから相手がどのような世界に住んでいるのかを掴むことができるなら、人の天命の大まかな分野を推察することができる。 もしあなたが、経営幹部の一人ひとりの天命を掴み、その天命への志を持つ人として経営幹部に接することができたらどうだろうか? さらに、経営幹部もあなたの天命への志を知ることができたらどうだろうか? このようにお互いに異なる志を共有する集団はそうざらにあるものではない。それができるに従って、あなたは、仕事のみならず、人生における大切な同志を得ることになるだろう。 これは、観念的な話ではなく、経営の現場での実践によってのみ掴むことができる。ぜひ一人ひとりの天命と関わり、「そのような天命を持った人だ」と接することで、あなたと社員との関係がより深く満足のあるものとなることを実感して頂きたい。 出口 光 |
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※出口光氏に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。
SAKAGAMI@jmca.net |
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