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8出口光の「天命と経営」16号 |
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「経営者の耳を磨く」 |
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「人の心を見抜ければもっと仕事がうまくいくのに」、「相手の気持ちがわかれば、もっと関係はよくなるのに」、「私の意見に本当に賛成なのか?」、「自分に何を求めているのか?」など、相手の心を知りたいという欲求は、際限がない。これは、経営者、いや人間の永遠のテーマだと思われてきた。
これまで、私たちは、天命への関わり方を探求する中で、自分の心の奥底にある大切なものが、いかに秘されているかを見てきた。「社員の秘されたものを経営者が掴めるかどうか」で、経営の質は、大きく影響を受けるのだ。しかし、ここでは、人間の永遠のテーマである相手の心がわかると言っていないことに注目してほしい。 社員の秘された大切なものを掴み、良好な関係を結ぶためには、社員が頻繁に繰り返す言葉から、社員の心や感情を捉えることを超えて、それらが指し示す本質を聴くことが大切なのだ。 人が話す言葉に耳を澄まして聴くことで、人の心の奥底に潜む、その人すら知らない本質を捉まえることができる。 それでは、耳を澄まして聴くとはどういうことだろうか? 第16の天命と経営を探求する質問は、これだ。 「あなたは人の話をどのように聴いていますか?」 人の本質を捉えるためには、まず、あなたが相手の話をどのように聞いているのか、また、相手がどのようにあなたの話を聴いているのか、その聴き方を知ることが大切なのだ。 人には大きく4つの聴き方が存在している。その奥に、その人の天命が潜んでいるかもしれない。 「プロジェクトX」という人気のテレビ番組があった。これは、情熱を持ち、使命感に燃えて、戦後の画期的な事業を実現させてきた名も無い日本人たちの物語であり、この番組に感動したという人は多い。しかし、面白いことに、それらの人たちは、その番組の異なる場面で、あるいは、異なる理由で感動しているのだ。 ある人は、苦労してようやくプロジェクトを達成した瞬間に感動し(聴き方1)、あるひとは、プロジェクトを共同してやっている人たちのチームワークに感動し(聴き方2)、ある人は、人間同士の思いやりや優しさに涙し(聴き方3)、ある人は、そのプロジェクトで創り出される技術のすばらしさに、魅了されるのだ(聴き方4)。 人は同じテレビ番組を見ていても、それぞれは、同じことに共感したのではなく、同じ番組を異なる聴き方で観ているのだ。つまり、同じ話を聴いているからといって、同じような聴き方、受け取り方をしていると考えることは、全くの幻想なのだ。 この4つの聴き方をさらに詳しく見ていこう。 第一の聴き方は、人の話を、自分にはできるかどうか、あるいは、やるかどうかと聞いている聴き方だ。これを達成的傾聴(able listening)と名づけよう。このような聴き方をする人は、目的や目標を達成することが価値の基準となっている。 例えば、新しい事業計画の話を聞いたとき、あなたはそれができるかどうか、あるいはやるかどうかと言われているように聞いてしまう傾向があるのだ。相手から攻撃されているように聞こえるのも達成的傾聴の特長だ。 達成的傾聴の強い人は、積極的で、何でもできるあるいは、やってみようと聴くし、負の達成的傾聴の強い人は、自分にはできない、無理だと聴いているのだ。達成的傾聴をする人は、「とにかくやってみよう」、「まずやってから考えよう」、「負けたくない」、「情けない」という表現がしばしば出て来る。 また、この傾聴の強い経営者は、「誰もついて来ないのではないか」という不安を持っていることがしばしばだ。 第二は、関係的傾聴(relational listening)で、人の話を、自分の仲間や部署と関係があるかどうかと聴いているのだ。これは、自分のグループに利益があるかどうかという観点が基準となっている。 この聴き方は、人の話を「自分の仲間に関係があることだ、あるいは、ためになることだ」と聞き易いし、また、負の関係的傾聴が強い人は、「自分の会社のためにならない、あるいは会社と関係がないことだ」と聞く傾向にある。 このような聴き方をするひとは、「仲間のためなら」、「会社のためなら」、「一緒にやろう」、「ルールや時間を守れ」、「皆が言うから」という言葉を頻繁に使うのを観察してほしい。この傾聴の強い人は、「仲間はずれになる」という不安を持っている。 第三は、献身的傾聴(devotional listening)で、これは、人の話を、自分は相手に何をしてあげられるだろうかという聴き方である。これには、話す相手が自分にとって好ましい人であることが前提となっている。つまり、相手を好きか嫌いかまず判断して、好きな人なら、「このひとのために何ができるだろう」という観点から相手の話を聴くのである。 献身的傾聴の人は、人から頼まれれば「なんとかやってあげよう」と聴いているし、負の献身的傾聴の強い人は、「相手に必要とされていないのではないか」と聴く傾向にある。人間関係は一対一であり、経営者であっても、組織の一員という意識は乏しい。 献身的傾聴をするひとは、「あなたのためなら」、「喜ばせたい」、「してもらった」、「してあげた」などという言葉を頻繁に使うのを、あなたは、聴いたことがあるだろう。また、この傾聴の強い人は、「嫌われている」とか「必要とされていない」という不安を持ちがちである。 第四は、評価的傾聴(evaluative listening)で、人の話を、面白いかどうか、わかるかどうか、美しいかどうか、本物かどうかと評価しながら聞いているのだ。この聴き方には、真・美を峻別するという観点からの基準が存在している。 また、自分なりの解決方法や代案を考えながら聞いたり、あるいは未来の結末はどうなるとシュミレーションしたり、分析的に考えながら人の話しを聞いているのである。また、負の評価的傾聴の強い人は、相手の話を「わからない」、「面白くない」と聴く傾向がある。 このような聴き方をする人は、「最上を提供する」、「それは難しい」、 「なるほど」、「結果はこうなる」、「無駄なことはしたくない」、「わからない」「失敗したくない」といった言葉を頻繁に使うことになる。この聴き方が強いひとは、「自分の底が知れる」「馬鹿だと思われる」のではないかという不安を持っている。 あなたは、4つの傾聴法のうち、どの傾向が強いかを掴むことができただろうか? また、あなたの周りの経営幹部はどのような聞き方をしているだろうか? もちろん、一人の人間は、ひとつの聞き方だけをしているのではなく、4つの聴き方を持っている。だだ、経営者としてのあなたのベースとなる最も強い聞き方の傾向を掴み、さらに、あなたの家族を含む周囲の人たちの基本的な聞き方を掴むことができれば、人間関係は大きく前進する。 そればかりか、相手の天命がどの分野にあるのかまで、大まかに推理することができるようになるだろう。次回は、この4つの基本的な聞き方を持つ人たちがどのような世界に住み、どのような天命を持っているのかを探求してみよう。 さらに、あなたに知ってほしいことがある。これは、頭だけで理解する話ではない。日々の経営の中で、人生の中で、掴みとるものなのだ。 出口 光 |
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