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出口光の「天命と経営」 9号



未来をも人生のパワーの源にする

        

 前号の問いは、「あなたの過去の人生を通して貫くものは何か?」だった。

 この探求を通して、自分の過去にある否定を受け入れ、その中からあなたの人生を貫く一本の柱を発見したとき、それは、あなたの人生の指針となり得る。

 つまり、人生を貫く一本の柱を見つけ、それを自身の天命として志すことが出来るならば、あなたの過去は統合され、計り知れない人生のエネルギーとして変換されるのだ。

 多くの人たちの人生を振り返るとき、さまざまな形ではあるが、ひとり一人、確かに人生に一貫するものが存在する。それぞれの人生に、「新しいものに挑戦する」、「変革する」、「和をつくる」、「人を癒す」、「人を楽しませる」、「困っている人を助ける」、「人を育てる」、「ものを創る」、「問題を解決する」などを発見することで、過去の統合が起こりうるのだ。

 「私の人生は、常に、困っているひとの問題解決をやってきた!」「私の人生は、変革を起こすことで、さまざまな状況を改善することで一貫している!」 というような統合だ。あなたは、自分の人生を振り返り、終始一貫しているものを、掴むことが出来ただろうか?

 何度も言うが、天命はあなたの人生の中に秘されているのだ。

 しかも、あなたは気付かないだけで、それをやり続けている。それを掴むことは容易ではないが、自分自身に「人生で一貫しているものは何か?」の問いを発することで、必ず見つけ出すことができる。

 それは、あなたの中に既にあるものだからこそ、顕すことができれば、底知れぬパワーがあるのだ。

 そして、それを見つけ出し、自分の言葉で表現できるようになった時、次第にそれが自分自身に馴染みだし、明確に、天命が人生や経営の中に影響し始めるだろう。 図1を見てほしい。






 

 過去を振り返ると、あなたには、自分の両親を中心とする生い立ち、学生時代、そして仕事の経歴の中に、さまざまな経験がある。

 それらの経験を肯定すればするほど、さらに、その人生の中に存在する「一本の柱」を見出すことができれば、経営者自身に、とてつもないパワーが宿り、新たな経営の原動力として活用することが可能となる。

 あなたの人生の中には、動かざる柱が必ずある。そして、あなたの未来は、その延長線上にあると言い切りたいのだ。ならば、天命を経営に活かす道を歩むためへの、第九の問いは必然的にこうなる。


    「あなたは、自分の未来をどれくらい肯定的に含んでいますか?」


 再度、誤解を畏れずに言おう。
あなたの未来は、過去の延長線上に存在する!

 これは、自分の過去の延長線として存在する未来を、どれくらい肯定的に自分の人生に含めるのか、ということだ。

 非常に分かりにくいことだが、この質問の意図は、あなたの天命を考えるために非常に大切なことなので、具体例を使って掘り下げてみたい。

 もし私たちが自分の人生の期間だけで事業を考えているならば、生きている間は、いまのような大量のエネルギー消費が続いても、地球が人間の住めないところまで汚染されることはないだろう。 つまり、私たちは、なんとか安全だということだ。

 しかし、私たちの子供、孫、その先まで含めて考えて見ると、子孫が安全に、 この地球に住め、しかも事業を継続できるかは疑問だ。

 私たちが何代も先の子供達の未来をも、私たちの人生として考えた時、ゴミやエネルギー、温暖化の問題など、さまざまな行動を今から起こす必要が出てくる。

 熱心に環境問題に取り組む経営者たちは、「いま」の自分の人生に子孫のことまで含んでいるのだ。つまり、未来をどこまで含めるのかという考えひとつで、「いま」の私たちの生き方や行動は変化する。

 しかし、もし、その未来を含む行動が、あなたの過去を統合したところから来る未来でないならば、パワーは、実に弱いものになる。

 つまり、あなたが最も時間と情熱を傾けてきた自分の事業の中で、環境問題に取り組むことが必要なのだ。それ以外のボランテイア的な環境活動では、大きな違いは造れない。

 また、未来を創る新規事業も、あなたの過去の統合からくる不動の核を引き継ぐことで、本物のエネルギーを得ることができる。

この図2を見てほしい。

 私たちの人生や仕事を振り返ると、多くの成功や失敗、感動したこと、楽しかったこと、失敗、苦いこと、辛かったこと、思い出したくないこと、多くの相矛盾するように見える経験が存在する。





 もしあなたが、過去の人生を肯定し一本の線で繋ぐとき、過去の全ての経験は、「いま」のあなたのエネルギーとなって顕れる。

 さらに、その一本の延長線上にあなたの未来は存在する。あなたは、過去にやってきたことならできるし、未来もやり続けることができることは確かだ。

 「私の人生は、物づくりを通して人を楽しませることで一貫している。それは、過去ずっとやってきたことだし、これからもそれをやり続けることは間違いない」

このような悟りにも似た確信を得ることができたらどうだろうか?

 さらに、あなたがどのくらい過去の延長線上として未来を、自分の人生に含めるかで、あなたの動かない志が形成され、いまの行動(経営)の方向性にパワーと自信を与えることになる。

 言い換えれば、 あなたの人生を貫く天命とも言うべきDNAが、未来の事業の中に存在するかどうかが、重要なのだ。

 もし100年後の未来を自分の人生に含めるなら、あなたの事業を百年続かせるために、あなたの過去の統合の延長としての未来を描けているだろうか?

 あなたが過去を統合し、幾代もの未来までを、自分自身の未来として統合した立場から、「いま」を生きるとき、あなたの存在は、これまでとは別の次元になるだろう。

 そしてあなたに、とてつもないエネルギーを与えることになるだろう。

 「私の人生は、物づくりを通して人を楽しませることであり、事業を通して100年後にもそれを存在させる。そのために、物づくりの楽しさを教える社内教育制度を造り、それを多くの人ができる専門学校に発展させる。また、すばらしい物づくりをした人達を表彰する制度を造ろう」。

 このような熱い想いが湧き上がってきたらどうだろうか?

 私は、観念上の話をしているのではない。これは、現実にある話だ。実際に、あなたの中に存在する、自分でも想像できない、とてつもない力を表に顕すことになるのだ。

 あなたが社員や取引先、お客さま…などの人前に立った時、全身全霊、あなたの姿に、統合された人生、すなわち天命が顕れているだろうか。

 もし、そうでなければ、あなたがたとえ、どんなに素晴らしいことを言ったとしても、それがあなたの人生の中で統合されたものでなければ、「言葉」にパワーはなく、ただのすばらしい話で終わってしまうだろう。

 経営者であれば、自分の天命に志した言霊で、経営を語り、人生を語り、天命からくる経営を実行し、自分自身の天命がDNAとして生き続ける事業として、 後代まで残したいのではないか。

 そのための、ファーストステップは、あなたが、人生の統合を行い、魂から来る本来やるべきことを発見し、それに志し事業をするならば、次第に、あなたにしかできない独自性を帯びた事業となり、その本質はあなたの天命的DNAとして、未来永劫、事業が続く限り顕れ続けるに違いない。

                    
      

                          出口 光

 
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