社長のための “価値づくり”100話 93

ブランドにも人格がある



●魂をつくったら、カタチにする

 
多くの経営者は、自社の社是やミッション、ビジョンをつくり、社内で運用しています。にもかかわらず、企業としてブランド力には大きな違いがあり、また優秀な人材の獲得にもなぜ差がつくのか疑問でした。
 どうやらその違いは、企業のパーソナリティに問題があるようです。

 企業も人間と同じように、人格があります。
 「信頼できる」「誠実だ」「独創性がある」「洗練されている」など、企業によって様々な性格があります。こうしたパーソナリティは、創業経営者や社の業績に貢献する社員や幹部によって形成されます。
 企業のパーソナリティが自社の大切な顧客層に好ましく伝わると、顧客の印象が向上し好感を持って選んでもらえます。

 企業のパーソナリティが発揮される場所は、まず広告や販促物です。
安心と信頼を最大の強みにしているのに、広告では商品名だけを連呼しているようでは、企業の性格は理解されません。
 また価値を売ろうとしているのに、安売りチラシを大量に配布していては、企業のパーソナリティは伝わらず誤解されます。

 さらに社内のインテリアや社のツール(名刺や封筒など印刷物)、ホームページのデザイン、経営者や社員の気質などからも、社風が社会に伝わります。ここで損をして、ブランド力を発揮できていない企業がとても多いのです。

 ある経営者が新卒採用者向けのリーフレットを作成し、現物が私の手元に届きました。
 人材採用会社に依頼しただけあり、オシャレなデザインに仕上がっています。これなら学生たちの目を引くだろうと思いました。
 しかしこれからが課題です。というのも、その企業は洗練されたデザインのリーフレットのように、社全体が洗練されたデザインで統一されてはいないからです。

 広告や販促物を使い、洗練された企業なり商品としてアピールすることは可能です。しかしその企業に洗練された風土がないと、企業全体のデザイン化がついていかず、また社員の対応も洗練されていないと、企業に一体感が醸成できません。
 顧客はもとより、その企業で働こうとする若い人材にも、こうしたミスマチッチはすぐに気付かれてしまいます。

 これは人間で言えば、多重人格です。企業が多重人格では信頼されることはなく、いつまでたってもブランド力は高くなりません。


●企業のパーソナリティを決めてコミュニケーションを行う

 企業が多重人格になる最大の原因は、ふたつあります。
 ひとつはあれこれ口を出す人が多すぎることです。これは大企業によくあるケースです。創業者がいなくなった大企業では、顧客に都合のいいことだけを打ち出そうとして、結果的に企業人格がバラバラになります。他方は企業のパーソナリティを考えずに仕事をしている企業です。これは中小企業によくあることです。

 企業のブランド力を高める第一歩は、ビジョンとミッションを策定したら、自社のパーソナリティを決め、顧客に魅力的にアピールすることです。そして競合企業との違いをその中で発揮することです。

 例えばトヨタとレクサスを比較してみてください。同じ経営母体なのに、受ける印象が大きく異なることに気付くでしょう。
 またマイクロソフトとアップルの広告を比べて見てください。マイクロソフトがビジネスユース中心なのに、アップルはデザイナーなどプロユースや若者向けの個人ユースとして、企業のパーソナリティを発揮していることに気付くはずです。

 あなたが創業者なら迷うことはありません。あなたが何よりも大切にしている哲学を、顧客に対して魅力的な言葉にし、また競合企業が「やられた!」と思う表現にして、すべてのコミュニケーションを展開すればいいのです。


経営者の価値作り・・・企業も人間も、多重人格では信用されない。自社のブランド価値を向上させる経営者は、細部にわたり一貫性を大切にすることだ。




酒井光雄




出版局トップにもどる
日本経営合理化協会 出版局 TEL:03-3293-0041