社長のための “価値づくり”100話 84

付加価値を高める重要な要素



●価値を伝える

 
付加価値が理解できない企業に共通しているのは、商品コンセプトから商品のパッケージデザイン、会社案内からホームページ(HP)のつくり方、そしてオフィス環境まで「デザインする」という概念が存在していないことです。

 零細な企業で、価格の安さだけで小売店に扱ってもらっている商品を一度チェックしてみてください。豆腐、納豆、卵、牛乳の業界では、特にデザイン概念のない企業が数多く存在しています(ということは、ビジネスチャンスがそれだけ多いことになります)。いくら高品質な商品であっても、顧客から企業や商品が魅力的に見えなければ(コミュニケーションする力)、価値は伝わりません。

 美味しい食事を提供する食堂だとしても、その店が美味しく感じられない内装や接客では、少なくとも女性は利用しません。商品を選んでもらうには、商品の価値を高めるデザイン要素を加味することは前提条件です。


● 日本旅館の致命傷

 京都で日本の伝統的な商品を扱っている企業を調べてみると、面白いことを発見します。1200年という歴史がある古都に立地するせいで、顧客は京都にある小売店に対して老舗のイメージを持って購入しているケースが多いのですが、その中には歴史の浅い企業がかなり存在していることです。よく知られる和菓子や扇子を販売している企業のHPを調べれば、わかると思います。

 商品を選ぶ際、「美味しそうだ」「品質が良さそうだ」と顧客に感じてもらわなければいけません。デザインに無頓着な経営者ほど、モノづくりには熱心ですが、付加価値を高める重要性に気づかずにいます。

 良い例が日本旅館です。せっかく伝統のある建物を持っていながら、照明器具に蛍光灯を平気で使用しています。もしこれを白熱灯に変えるだけでも、客室の雰囲気は一変します。飲食店でも同様です。安価な店舗ほど妙に明るく、顧客単価が高くなるほど照明は光と闇を上手く演出しています。

 なぜこんな簡単なことに気づかないのか?それは経営者が他業態の研究をしていても、観察能力を高めていないからです。見るべきものを見ずに、見なくてもいい所を見ているのです。見る場所を間違えていては、知恵が生まれません。また自身で暮らしを楽しもうとしないと、顧客を楽しませることなどできません。どこでも蛍光灯で暮らすことに疑問を感じない感性では、デザインによる付加価値づくりに思い至ることはないのです。

 経営者が付加価値を高めようと思ったら、「見て、感じて、考えて、行動する」ことです。経営者の感受性を磨いておかないと、重要な意思決定をする際に、大きな過ちを犯すことになります。たまには奥様と二人で、外食や旅行に出掛けてみてください。これまで見えなかったモノが必ず見えてくるはずです。けれどその時は、蛍光灯を使用している場所を使うことだけはやめてくださいね。


経営者の価値作り・・・有能な経営者は、人が見逃しているモノを見る目を持って、自社のデザインを行なっている



酒井光雄




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