社長のための “価値づくり”100話 82

社員がついていくもの




●数字の限界

 人間は自分が目指す道が見えた時、持てる力を発揮できるものだと思います。自分が納得する目標を持ち、その実現に向けて行動することは、人間にとって生きる力になります。

 しかし大多数の人たちは、生きる目標を持てずに暮らしています。

 目標とは、夢という言葉に言い換えることもできます。
 「あなたの夢は何ですか?」と尋ねてみてください。きっと多くの人は即答できず、口ごもるはずです。経営者も同様です。「大きな家に住みたい」「高級車に乗りたい」「お金持ちになりたい」そんな夢は口にできても、ではそれが満たされた後に、「どんな夢を持つのですか?」と聞けば、おそらく困ってしまう人が多い気がします。

 経営者は多くの社員を率いて、企業を経営するリーダーです。リーダーがすべき本来の仕事とは、同じ企業に働く者として、共通の目標を掲げ、その実現に向けて社内の求心力を高めることだと思います。

 企業は中期経営計画を立てると、社員に発表します。しかしその内容は、目標売上げであり、目標利益に過ぎない企業が大部分を占めます。しかも社員はその先まで理解して聞いています。「この目標数字が達成されたら、次の目標数字が提示されるだけじゃないか」と。

 人は数字に夢を感じることはありません。また数字が目標値としては最適な尺度だとしても、成果を出した後にも、次の数字を目標にされる毎日では、数字に夢を感じることはできません。

 数字で人の心をつかむことはできないのです。


● 経営ビジョンこそ働く人の心に火を灯す

 成功した経営者に共通しているのは、数字ではなく、企業として目指すビジョン(企業として実現したい世界)を描き、社員はもとより顧客まで魅了して成長していることです。

 また経営者を支え、参謀役を務める有能な人材も、ビジョンが明確な企業には自ら訪れて入社しています。

 本田技研工業の本田宗一郎氏が、無線機の発電用エンジンを自転車に取り付けた「バタバタ」と呼ばれる乗り物を作り販売している時に、後に二代目経営者になる河島喜好氏が本田さんの元を訪れ、入社しています。彼は本田さんの夢に共感して、入社したのです。

 河島さんはその後ホンダがオートバイ市場で躍進を始めることになるドリーム号のエンジンを開発し、箱根の山道を走る耐久試験の運転まで努めています。

 ホンダはこうした有能な社員に恵まれ、当時世界最高の技術を競う実験場でもあるイギリスのマン島で開催されているTTレースに参戦し、必ずここで優勝するというビジョンを掲げるのです。その夢は見事に実現し、後のF1レース参戦というビジョンにつながっていくのです。

 この度、日本経営合理化協会から、経営ビジョンを作るための書籍を刊行します。あなたも本田宗一郎さんに続いて、ビジョンの力で有能な人材を集め、世界を魅了する企業になってください。



経営者の価値作り・・・有能な経営者は、自社の経営ビジョンをまるで映画をみるように映像が心に浮かぶストーリービジョンに仕上げ、社内の求心力を高めて成功している。

酒井光雄




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