社長のための “価値づくり”100話 79

経営者の誇り



●考えることをやめてしまった報復


 OEMの仕事を専門に行う企業の経営者が、あるセミナーで私にこう尋ねてきました。「取引先から言われたモノならいい商品を作る自信はあるのですが、自分たちだけでは何を作ったらいいのかわからないのです・・」

 私は正直なところ、言葉を失いました。

 納品先の企業から、「これを作って欲しい」「こんなモノは作れないか」という課題を与えられることに慣れてしまい、自分たちで世の中に必要なものを考えて自らの手で作ることを止めていたからです。いわば組織全体が、思考停止状態になってしまっていたのです。

 受注規模の大きいOEMの仕事が決まれば、企業は大きな売上げを上げることができます。しかし明日も必ずその仕事が来るとは限りませんし、見積りの安い別の企業が現れたら、その企業に外注することも当然有り得ます。

 販売価格の主導権が握れず、自社で販売すれば利益が出せる場所で自社の強みを発揮できないところが、OEM受注の最大の問題点です。


●ブランドが生まれる時


 SONYの創業者である盛田昭夫さんが、小型のトランジスターラジオを開発し、アメリカで販売しようと営業活動をしていた時です。ある企業から何万台もの製品を購入したいという連絡が入り、先方に出向きます。

 その担当者の口からは、「ただし御社の名前でなく、うちの会社の名前をつけて販売して欲しい」という条件が出されます。SONYがトランジスターラジオのために費やした開発費は相当額に及びますから、盛田さんにとってこの話は喉から手が出るほど欲しかったはずです。

 しかし彼はきっぱりと断ります。他社の名前をつけて一度でも販売してしまえば、SONYの名前が表舞台に登場することがなくなるからです。盛田さんは「いつかきっと世界中にSONYの名前をとどろかせてみせる」と心に誓い、この商談を打ち切ります。

 売上げを上げたい。利益を増やしたい。経営者なら誰でも考えることです。でもその前に、経営者として絶対に譲れない考え方は何かという問いに答える必要があります。

 あなたは売上げと利益をあげるためなら、何でもする企業になるのですか?

 それとも、経営者として絶対にこれだけはしないと決め、誇りを持って社員と共に事業に邁進する企業を目指すのですか?



  経営者の価値作り・・・ブランドとは、経営者の誇りから生まれる

酒井光雄




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