社長のための “価値づくり”100話 78

上質と高級の違い


●経験してみて初めて理解できること

 過日依頼を受けた企業の研修で、ザ・リッツ・カールトン大阪を会場として利用しました。セグメントマーケット(顧客を絞り込んだ市場)で成功している企業を実際に利用し、異業種から自社に有益な視点を学んでもらうことが目的です。

 参加したメンバーはマーケティング部門で働く社員の中から選抜された30代を中心にした人たち20名程で、ハイエンドホテルを利用するのは全員初めてです。実際に客室やバーなどを顧客として利用してもらった翌日、どんな発見があったか発表してもらいました。

 男性社員はロビーやレストラン、客室などのインテリアの違いなどに目が向くのに対して、女性社員はベッドのリネン(シーツ類)や枕の材質、バスルームの洗面台がふたつしつらえてある(ダブルシンク)といった指摘が上がります。想像した通り男女では観察するポイントが違い、学習する範囲がとても広がります。

 中でも女性社員たちが素晴らしい発見をしました。

○高級感とアットホームなくつろぎ感とは相容れないと思っていたけれど、このホテルを利用してそれが間違っていたことがわかりました

○高級な商品とは、金色を使うというイメージがありましたが、それは偏見だったと気づきました

などという指摘からは、私も新たな気づきを得ました。


●高級を履き違えてビジネスする時代の終焉

 かつて高級ホテルや高級レストランと呼ばれる場所がありました。その中には時代に取り残されてしまったところが数多くあります。また高級をうたう、商品が市場にたくさん出た時期がありましたが、やはり生き残っている商品は限られています。

 内装にいくらお金を掛けても、その場所を利用して快適でなければ、顧客は再び利用しません。内装がいくら豪華でも、接客レベルが上質で顧客の心理が読める高度な対応でなければ、人は快適とは感じないからです。高級とは顧客に緊張を強いることではないのです。

 また商品のラベルに金色を多用したからといって、販売価格を高くできるはずもありません。どれだけ品質が優れていても、人が魅了されるとは限りません。上質な時間や日常では味わえないくつろぎという情緒性を提供しないと、生活者は納得しないからです。

 上質を知らない人が、高級という意味を履き違えてビジネスする時代は終わりました。これからは豊かな時間の過ごし方を熟知した人が、新しい高質な時間や空間を提供する新たな時代が始まります。



経営者の価値作り・・・上質な世界を自身で経験し、その価値を熟知した経営者だけが富裕層を相手にビジネスを成功させることができる。

酒井光雄




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