社長のための “価値づくり”100話 66

市場の衰退を招く企業の思い込み

●ミニコンポとHDDの台頭


 オーディオなるものがいつの間にかミニコンポに変質し、またウォークマンタイプのCDやMDプレーヤーがHDDプレーヤーに代わって行きます。

 ミニコンポは安価で使い易く、そこそこの音質で楽しめるため想定できる顧客数が多く、市場規模は大きかったわけです。またウォークマンタイプのプレーヤーはイヤホンで音楽を聴くので、手軽で便利です。メーカーは市場が大きくなると、どの企業も必ず追随してしまいます。

 またパソコンでCDやCD-ROM、DVDが使用できるため、パソコンによる音声出力を若者は利用しています。


市場を衰退させる行為


 売れる物だけを作っていると、実は大きな過ちを犯す事があります。それは自社が折角育てた市場を陳腐化させてしまうことです。

 かつてオーディオは今でいうならオタクがこだわり、マニアが好むものと認識された時代がありました。今も何百万円もの大金を、こうした機器に投資するヒトは確かにいます。DVDの普及によりシアターサウンドの需要が生まれても、メーカーは量産効果が出る一般生活者向けの廉価な商品に注力します。

 こうした新しい商品は若い世代に支持されるのですが、このままにしておくと、市場は確実に衰退していきます。

「音質なんて、この程度でいい」

「部屋が狭いんだから、どうせ音が大きく出せない」

という顧客をたくさん生み出していくことになるからです。

 また高額品とはマニアの物だという企業側の思い込みにより

「操作方法が複雑な方が、マニア好み」

「あれこれといじれる機能が多い方が、高く売れる」

といった過去の顧客イメージそのままに高品質商品を作り続けることになります。

 その結果、市場は廉価なマスプロダクツの普及品か、マニア向けしか存在しなくなり、結果として市場は衰退していきます。オーディオメーカーを見れば、その動向は誰の目にも明らかです。

 市場には必ず普及品から始まり、ハイエンド商品まで用意されます。でないと、市場が飽きられてしまうと、市場そのものが消滅する可能性があるからです。自動車や時計、レストランやホテルなど、どの市場でも同様です。

どうしてこうした事態が起きるのか?

 それは売れる物だけ作り、他社の模倣を続け、市場を育てないからです。人と同じ場所で競わず、高付加価値による高額商品で高収益を上げている企業は、必ず市場を育てる戦略を持ち合わせています。


 経営者の価値作り・・・高付加価値経営を実現させる経営者は、他社とは同化せず、しかも独自の市場を育て、その市場を自社のブランドに変えるパワーを発揮しています。

酒井光雄




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