●年末に目撃したこと
暮れも迫った12月21日、友人と久し振りに深夜まで会食した。ボーナスも出揃い、街には人が溢れていた。景気が上向いた恩恵が個人レベルにも表出し、六本木もかつてのバブル経済期の賑わいを彷彿とさせる。
タクシーに乗ろうとしたところ、何十年振りかで空車がいない。顧客が通りに溢れているからだ。仕方なく空車が見つかるまで、歩くことにした。西麻布の交差点を過ぎて、反対車線に空車が走ってきた。帰宅を急ぐ人が手を上げると、急にその車は「迎車」表示に切り替えた。明らかに乗車拒否だ。
●悲しいサガ
バブル経済期に日本人は舞い上がり、傲慢になり、消費に明け暮れた。しかしバブル経済の崩壊とその反動は大きく、社会構造の変革には12年以上もの時間を必要とした。タクシーの業界にも規制緩和の波が襲い、新規参入が容易になった。
景気が上向いても、タクシーを利用できる人は限られ、ドライバーの年収は一向に向上しない。タクシー会社は料金を下げて利用を促進する視点と、車両をグレードアップして快適性を売り物にする考え方の企業に別れ、相互に競い合う。
しかし日々の売上げを上げる方法は、ドライバー個人に委ねられ、企業として独自の戦略と戦術を展開するところはほとんど見かけない。またマナーの良いドライバーも、最悪のドライバーも一律の料金体系で、売上げは「運」任せのようなビジネスだ。
景気が上向いたといっても、年が明ければまたタクシーの需要は冷める。もうかつてのように皆が昇給する時代ではないからだ。だがドライバーの中には、「夢よ、もう一度」と他力本願の人もまだ見かける。
需要が多いと、サービスレベルが低下し、ドライバーのワガママが表面化する。逆に需要が減ると、顧客の奪い合いとなり、サービス意識が高まる。だがこれではいつまで経っても、この業界のビジネスモデルは高度化せず、社会的評価も向上しない。
●そこにブランドがある
景気に連動するビジネスは、数多い。だが強い企業とは、景気が後退している時にその力を発揮する。東京MKタクシーがその代表例だろう。この企業は料金体系の見直しに一早く取り組み、また車のグレードアップとドライバーの接客マナーにも独自性を発揮した。
タクシー業界で初めて、企業のブランドを作り上げた企業だろう。東京の同業他社より稼働率も売上げも高い最大の理由は、時間指定配車の仕組みだ。「何時にどこに行く」ことを事前に決められる人とは、ビジネスでもプライベートでもイニシアティブを発揮できる決裁権を持つ。そう、こうした人々とは、お金が使える顧客層なのだ。
お金が使える立場にいる人なら、移動距離も長く、料金もそれに連動する。
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