社長のための “価値づくり”100話 57

顧客との関係で企業が目指すべき財産

●カタログハウスが行動したこと

 過日、日経新聞のコラムに紹介されていた話だ。酒井の友人もいる、カタログハウスでの実話である。

 9月初め東京を襲った局地的豪雨で、被害に遭った杉並区に住む主婦のもとに、カタログハウスから豪雨の後、2週間ほどして手紙が届いた。お見舞いの言葉と共に、同社から購入した商品が浸水で被害に遭った方には、無料で修理または交換するという内容だ。

 この主婦は幸い被害には遭わなかったけれど、同社の対応には感銘したという。

 こうした地道な活動を酒井は知らなかったが、同社では阪神大震災以降、地震や台風などの被災者に商品の無償修理や交換、代金の支払い猶予を申し出てもらうようにしていたのだ。


●顧客が望んでいること

 世の中、不景気が続き、リストラだの少年犯罪だのと、嫌なニュースが続いていた。どうやら景気は回復期に入って嬉しいけれど、心のすさんだ生活者はまだいる。また不況の時期に企業の不祥事が続出し、顧客と企業との関係に修復しがたい傷を残し、それをまだ回復できない企業もある。

 その上に、地震や台風、大雨で被害に遭った人の心の傷は、言葉にならないだろう。だがこうした時に、その企業から購入して本当に良かったと思える企業に出会えたら、顧客はその後どんな行動を起こすだろう?

 さしずめ酒井なら、講演を依頼される度に、カタログハウスの事例を引き、年間何千人にも登る経営者や生活者に、この話をし続けるだろう。また自分が既に顧客であれば、間違いなく継続購入を続けて行くだろう。


●コストか投資か?

 多くのビジネスマンは自社商品を売る時には熱心だが、購入後の顧客対応には関心を持たない。それはアフターサービスを『コスト』として見ているからだ。コストならお金をできるだけ掛けたくはない。だがザ・リッツ・カールトンは常連顧客に対して、そうはしない。

 ある大学教授が大阪のザ・リッツ・カールトンの客室に、老眼鏡と講演資料を置き忘れて新幹線に乗って東京に戻ってしまった。しかも当日は、その資料で講演するのだ。

 ザ・リッツ・カールトン大阪のスタッフはその時、どうしたか?

 顧客に言われたのではなく、自らの判断で新幹線に飛び乗り、東京駅で待ち合わせて忘れ物を届けた。この大学教授が、この日に行う講演で、何を話すか? それは容易に想像がつく。

 彼らはコストでなく、投資と考え、行動を起こしたのだ。こうした積み重ねが、企業の神話を作り、企業の価値とブランド力を作っていく。カタログハウスの事例も同様だろう。

 
経営者の価値作り・・・優れた企業は、社員に「コスト」と『投資』の違いを理解させ、社員が自主的に考えて行動できる判断基準を備えている。その基準とは、経営者が作るものだ。

酒井光雄


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