社長のための “価値づくり”100話 55

最初に情報を届けるべき相手

●メディアに知らせる前にするべきこと

 今年の春のことだが、ヤナセの営業マンが不在中に資料を届けてくれた。資料の中味は今年秋にフルモデルチェンジして登場するメルセデスベンツの新型Sクラスの資料だった。ダイムラー・クライスラー日本社からはまだ正式にメディアに発表されていない外観と内装写真、そして車の仕様書が入っていた。

 メディアの記者発表前に、主要スペックと画像が見られるのは、顧客にとっては何より嬉しいことだ。顧客にこそ誰よりも一番先に最新の情報を伝える姿勢が、担当者との信頼関係を作り、メーカーへの評価にも繋がる。


 これも以前、当時メルセデスベンツ日本だった頃、ディーラー向けの資料を見せてもらったことがある。そこには「お客様には新型車が発売されることは、いち早くお知らせし、仮に発売時期が先でもお客様に期待感を醸成しましょう。」とあった。

 考えてみれば当り前のことなのだが、これがきちんと出来ている業界は自動車以外にも少ないことに気付く。



●大企業の一般的な広報の流れ

 概して大企業は自社で顧客データを持っていないため、新製品が発売される際にはメディアに対して記者発表をして、メディアの力を借りて情報を広める動きをとる。

 この対応は、消費財はもとより耐久消費財でも同様だ。SONYや松下が、既存顧客に新製品の情報をどこよりも早く流すという話は聞いたことがない。

 これは既存顧客を把握せずに、販売にだけ注力した結果、何よりも大切な経営基盤である顧客データを作る仕事を怠ったからだ。

 顧客にはその企業が好きで、その企業だから購入する人が必ず存在する。こうした顧客をしっかり把握し、日頃から相互に情報の交換をしていれば、仮に商品機能が他社と互角であっても優位性は発揮できる。



●顧客が望んでいること

 既存顧客がメーカーやディーラーに望んでいることは、単純かつ明快だ。それは誰よりも自分を大事にしてもらうことだ。メディアに知らせる前に、既存顧客であるあなたに、メーカーから新製品の情報がいち早く届いたら、あなたはどう感じるだろう?

 組織小売業や他社のチャネルに販売を依存する企業が犯しているロスとは、自社の既存顧客のデータを全く持たずにビジネスしていることだ。

 

経営者の価値作り・・・売れない企業は販促視点で新規顧客の獲得に動き、売れる企業は顧客の求める情報を誰よりも早く既存顧客に届ける。この差が企業の経営基盤の違いとなって現れる。

酒井光雄




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