社長のための “価値づくり” 114

         普及品に強い企業が付加価値商品を
       投入する際には、明確に戦略を変える



●普及品メーカーが陥り易い商品戦略

 
誰にでも手が届く価格で良質な商品を開発することに、多くの企業は熱心に取り組んできました。
 こうした普及品の販路はスーパーや量販店、コンビニやドラッグストアといった全国に店舗を持つ組織小売業が中心です。

 セルフ販売を前提にした組織小売業では、マスメディアによる広告を投入しないとお客さんに自社商品の存在に気付いてもらえませんから、広告量が少ない企業や広告を投入できない企業は、価格を安くしないと売れません。
 同じ価格なら、広告によって知名度や認知度が高い企業の商品が選ばれるからです。中小企業が組織小売業を販路にする場合、普及品の領域で大企業と競うのは、こうしたハンディキャップがあります。

 そこで考えやすいのが、普及品とは別に高品質な商品を開発し、価格を高くして販売しようとする方法です。
 しかしこの方法では、いかに商品品質が高くても、顧客は認めてくれないことが多いのです。

 普及品を中心に品揃えする販路では、顧客は価格に敏感ですし、普及品をつくりながら付加価値のある商品を同時に売ろうとしても、お客さんはなかなかその価値を認めてくれません。
 普及品をつくる企業の強みは、普及品にあると考えるからです。また組織小売業では誰にでも需要がある商品を品揃えして売上げを上げる仕組みですから、購入頻度の低い商品は店頭に並べてくれません。


●付加価値を売り物にする企業は、選択肢が広い

 
あなたの企業が付加価値を売り物にし、価格を高くして商品を販売したいなら、既存の普及品とは明確に住み分ける必要があります。
 生活必需品を安く買いたい顧客が訪れる売り場で、二兎を追うことはできません。付加価値を売り物にするなら、商品はもとより販路まで付加価値を守る戦略が必要です。

 例えば、軽自動車や小型車を得意とするメーカーが、高級車やスポーツカーをつくっても、お客さんは魅力を感じません。
 ところが高級車や高額なスポーツカーを扱う企業が、手の届きそうな(安いわけではありません)価格で入門者用のクルマをつくると、欲しくなる人が増えます。

 ポルシェと、ボクスターやケイマンが好例です。これはファッションでも同様です。ジョルジオ・アルマーニが、ブラックラベルからホワイトラベル、エンポリオ・アルマーニ、そしてアルマーニ・エクスチェンジへと展開しているのが良い例です。

 上位モデルをつくる企業が、価格を手頃にした中位モデルを出すと、顧客は魅力を感じて購入してくれます。
 しかし彼らは量を売る価格の安い下位モデルはつくりません。企業と商品そしてブランドの価値が失われるからです。

 その一方、下位モデルや普及品をつくる企業が上位モデルをつくる際には、企業名でなく新たなブランド名を用意し、販路も既存ルートでなく新たに構築します。
 トヨタ自動車とレクサスの関係を思い出してください。普及品と付加価値商品とは住み分けなければいけない理由に、ここで気付かれると思います。


経営者の価値作り・・・ブランド価値を売り物にする企業は上位モデルからスタートし、次第に手の出しやすい価格帯に広げていく。
 だが普及品で創業した企業がブランド価値を売り物にする商品を出す場合は、商品から販路まで独自に構築する必要がある。



酒井光雄




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