社長のための “価値づくり” 113

         普及品とプレミアム商品の関係性



●いや〜美味い・・

 
酒井の大切な友人Gくんと会食することになり、ヱビスビールを注文してグラスを傾けた時のことです。 
 「いや〜、ビールってこんなに美味しいものだったんですね。普段、発泡酒を飲んでいるので、味わいが違います」と、彼は感慨深く語りました。
 また別の折に、「先日、サントリーのウイスキー山崎を飲んだのですが、美味くて驚きました。山崎を飲んだら雑味がなく、飲んだ後の香りも申し分なくて、ジャック・ダニエルとは大違いですッ」とも話してくれました。

 もともとGくんは、自分の尺度と価値観を大事にする人ですから、価格が高いとか、単にブランド力があるといった理由だけで、嗜好品を選ぶ人ではありません。彼は明確な判断基準を備えています。
 そのGくんがこのふたつの商品をこのように評価したことを、私は聞き逃しませんでした。
 それは普及品とプレミアム商品との違いを明示していたからです。


●違いが明確に認識できるか

 
ハーゲンダッツが登場するまで、プレミアムアイスクリームといえば明治乳業がライセンス生産するレディ・ボーデンでした。
 ところが、スーパープレミアムアイスクリームとしてハーゲンダッツが参入すると、市場構造が変わります。
 レディ・ボーデンが明治乳業との提携をやめ、独自に事業展開しようとして販路を失うという状況も重なりましたが、生活者は味の違いをはっきり認識してブランドスイッチしました。

 ビールの市場では、発泡酒や第三のビールという、ビール風味のアルコール飲料を各社が低価格で投入し、ビールから多くの顧客が移行しました 
 毎年、数多くの新製品を投入するものの、商品寿命は短命化し、ビールと比べて価格が安い分、売上げは下がっています。

 その一方、外食時に飲むビールや休日だけに飲むビールとして、ヱビスビールやプレミアムモルツの市場が注目されるようになりました。
 発泡酒や第三のビールを、普段、愛飲していれば、味わいの違いが誰にも明確に認識できるからです。
 たまには美味しいビールを飲みたいという意識も顕在化させました。

 先行する普及品(マスブランドのコモディティ商品)に対抗するため、追走する多くの企業は品質を高め、その分だけ価格を上げるプレミアム商品を投入します。
 しかし、成功する商品は限られています。
 いかに高級感を演出した広告を大量に投入しても、顧客はその価値を認めてくれません。

 その最大の理由は、知覚できる品質の違いを認めないからです。
 その一方、デフレの影響で低価格商品が台頭し、味わいに目をつぶった商品が市場で成長している時、本当に高品質の商品なら、その違いに誰もが気付きます。

 プレミアム商品やハイエンド商品を開発する際には、顧客が比較対照する普及品との違いを、瞬時に感じてもらえるかどうか。それが鍵をにぎります。
 スーパーや量販店が積極的にPB商品を開発して売上げを伸ばしています。
 しかし、PB商品の中で売上げが大きい商品やカテゴリーでは、普及品ではなく、むしろプレミアム商品が誕生する可能性があります。知覚品質の違いを、生活者がはっきりと自覚できる環境が生まれているからです。



経営者の価値作り・・・何かを犠牲にした低価格商品が市場で台頭している時、プレミアム商品が誕生する下地が生まれていることに気付けば、ブランドを創造できる。




酒井光雄




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