西嶋和夫の「社長のための坐禅入門」 16

坐禅と直感

(読者からの質問)

 先生のおっしゃるっとり坐禅中は姿勢を正して、考えごとをしないようにしておりますが、不思議なことに、坐禅中、ときどき仕事のアイデアとか企画のヒントが、ふと頭に浮かぶことがあります。

 それらは、なかなか良いアイデアであったり、解説策であったりすることが多いのですが、これは、坐禅中に考えごとをした結果、思いついたことなのでしょうか。

 それとも坐禅の効果の一つと考えていいのでしょうか?

 そのへんのことを、西嶋先生のご経験をまじえて、教えていただければ幸いです。

                                         (O.Mさん)

(西嶋先生の回答)

 そもそも、姿勢をきちんと正して座っているときは、考えごとができないものです。

 彫刻家ロダンの有名な作品に、「考える人」という像がありますが、ご存知のとおり、その男の像は腰掛けた状態で、足に頬杖ついて背中を丸めている像です。

 この彫刻でもわかるように、人が考えごとをするときの姿勢は、背骨をまっすぐに伸ばした状態ではできないものです。

 どちらかというと、私たち人間ば、背中を丸めた、うつむき加減の姿勢で、考えごとをするものです。

 ですから、ご質問にあるように、坐禅中に良いアイデアが浮かんだというのは、考えごとをした結果、得られたものではなくて、どちらかという、坐禅をすることによって、自律神経がバランスがとれた結果であると言えます。

 これまで繰り返し述べてきたように、いわゆる直感というのは、自律神経がバランスしたときに生まれます。

 そうでなくて、自律神経がどちらかに偏っている、つまり、交感神経および副交感神経のバランスが乱れているときには、直感が出てこないのです。

 そもそも、欧米の文化は、直感を尊重する文化ではありません。欧米ではどちらかというと、徹底的に思考することが尊重されて、直感を危険視します。しかし一方で、佛教は直感を判断の基礎だと考えます。

 その点が、欧米の考え方と佛教の考え方の大きく違うところです。

 ところで、私は坐禅をはじめて、6、70年たちますが、坐禅中に多くの直感を得てきました。

 ただし、直感を得ようと思って、座っているわけではありません。しかし、坐禅することによって、自律神経のバランスがとれて、さまざまな直感を得ることができました。

 そのような経験をふまえて言わせていただくと、仕事上の課題も人生の問題についても、考えて考え抜いたからといって、良い結論が得られるものではありません。

 事実、考えて考えて、ようやく出した結論というのは、現実に適合しない場合の方が多かった。

 反対に、「あ、そうか」と結論が先に出た直感の方が、うまく仕事や人生に役立ったと思います。

 そういう意味では、私の場合、直感から得られた結論に間違いなかったといえます。

 ですから、得られた直感が一見、常識的には荒唐無稽なことであっても、それについて真剣に考えてみる価値は多いにあると思います。

 いずれにせよ、過去の経験や知識などを総動員して選択した結論より、自律神経をバランスさせて得た直感の方が、現実に適合してうまくいく確率が高いと思います。

 そういう意味でも、我々は坐禅をして、自律神経をバランスさせる必要があり、またそのことを、数千年前に釈尊が悟ったのだと思います。

                                       (次号へ続く)

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