仕事と人生の楽しみ方 15

「ガケ」

レンジャーが崖をロープを使って昇り降りする訓練って、知ってますよね。

あれ、昼間だから、まだいいんです。

ヤバイのは夜の訓練。暗いところは基本的にヤバイ…。

それも、昼間でも普通の人は絶対に入り込まないような、うっそうとした山。

夜にもなると、何も見えない。足元はおろか、自分の足も見えない。仲間の隊員も見えない。本当に真っ暗…。

すぐ隣で一緒に行動していた同僚が、突如、崖から転落して、大ケガしてしまったことも、実際にありました。本当に何も見えないんです。

皆さん、本当の暗闇を経験したことあります?

あー、いつも暗闇かぁ(笑)

ある日、いつも通り、深夜の山中を移動をしていた時のことです。

たまにあるのですが、コンパス(方位磁石)が、全く効かない地帯に突入してしまった。磁場の関係なんでしょうけど、日本でも、結構コンパス効かない地帯ってあるんですよ。

レンジャーはマラソンでも、地図なんかありません。コンパスが常に命綱なんです。

困った。でも、任務を遂行するため、皆で声を掛け合いながら移動を続けていたんです。

しばらくして、突如、号令!

「1歩も動くな!! 絶対に!!。」

瞬間で空気が変わったよね。マジで…。

日頃から命令には絶対服従のレンジャー隊員たちは、文字通り、1歩も動かない。ピタリと完全に静止したまま、じーっと潜んでいる。かなり直感でヤバイと思った。

確かに、ナニかイヤな予感が…

そのうち、だんだん、夜が明け、空が白んでくる。

すると目の前に、想像以上の信じられない光景が…

部隊は、100メートルはあろうかという、崖の直前だったんです!

その崖の先端に倒れた木があり、自分の足はまさにその上…

文字通り、死の一歩手前。死に片足突っ込んだ状況…。

もう、一生の思い出…。今でもアリアリと思い出す。

落ちてたら、どうなったんだろ? オー、コワー!

危機管理って、よく聞きますよね。最近では大企業の不祥事とか、テロとかのニュースとかでも。危機管理が出来ていない。危機管理マニュアルに不備がある、とか…

危機って、本来、想定できないことが起きたから危機なんです。

マニュアルで対応できる範囲は、「計画通り」なんです。

何も見えない中での、最後のドタンバでの瞬間的な判断とか、カンっていうのは、人間の本能なんです。直感です。

しかも、色んな多くの修羅場くぐるほど、危機に対応する本能が発達するんですよ。だから、我々には分かったんです。

それに、任務を遂行する、という責任感だと思う。ボーっとしてたら、絶対に察知できなかったと思う。それと、集中力のおかげだね。

人間、チャンスに気付いて掴み取るのも、前向きに努力している人間だけにある本能。

危機を察知するのも、修羅場を経験した人間が、責任を背負っている時に目覚める本能なんですよ。

まあ、運が強いからね。

マネ、しないでね。(笑)

村冨 譲二



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