「地方企業の成長策」 12号

まずは、「成功の下絵」を描こう!


 いろいろ学んできたところで、そろそろ具体的な取り組みに関して,解説していきましょう。

 いずれにしても、市場環境は大きく変わって行くと同時に、競争も激しさを増し,混迷を極めることは間違いありません。特に地方企業は「格差」がより鮮明になり,厳しさをより強く感じるのではないでしょうか。

 しかし,いつまでも環境の理由にしていては生き残れません。肝心なのは,新しい環境下で如何に事業を成立させていくかです。即ち、事業は「環境適応業」です。

 先が読めないならば、自らが市場を創造する位の気構えが必要です。そういった意味では,ベンチャー企業に学ぶ点が多いように思います。

 ただし,ベンチャー企業と違って、「自社の売りモノ」を既に持っている訳ですから、後は、「自社の売りモノ」を磨き上げ、いかに生かすかを実践することです。

 新しいものを創造,開発する作業をより確実に成功に導く秘訣は、ずばり、最初に「ゴールの姿を描く」(より具体的にあるべき姿をイメージする)ことが出来るかどうかです。

 かの,中村天風先生が、「想像は成功への下絵」と表現していますが、正しくことを始める段階で,「成功した姿」を描くことが出来るかが鍵です。

 それも,その内容が、恰好よく見せるためのポーズであっては効果がありません。あくまでも,経営者の本音で描いたものでなければなりません。

 人間でも,企業でも目標が明確になると「元気」が出て来るものです。そして、「夢」「元気」があると、「運」も「ヒト」も「カネ」も集まってきます。

 確かに、先が読めない環境の中に飛び込み、成果を生んで行く作業は、不安も多く,リスクも伴いますが,「答えはあくまでも自らが創り出すもの」です。社長自らが信念と勇気を以て取り組まなければ成功はありません。社長が自社の将来像を描けなくなったら、社長交代の時かもしれません。



● 「下絵」はシンプルな程,力を発揮する。

 私が顧問をしていた株式会社フォーラムエンジニアリング(技術者の派遣会社)の大久保社長は、将来の技術者不足を見越して派遣法が制定されるよりずっと以前から、企業へ技術者を出向するサービスを始めました。

 業界に先駆けて技術者のアウトソーシングサービスを始めたベンチャー企業として、急成長し,現在は売上350億円、社員数6,700人にまで成長し,更に業績を拡大しています。

 大久保社長は設立当初より今の姿を具体的に描き、取り組んできました。社員数がまだ1,000名になるかならないかの時に、21世紀に入ったら社員数6,000名の会社にすると宣言し、私共は社員全員に周知徹底するための何かツールを考えてほしいとの依頼を受け、ステンレス製のパネルを作り,そこに

 ”FORUM21 6000----Challenging・・・“

と文字を彫り、各事業所に置きました。

 この時は、私も正直なところ本当に実現できるかな?と思っておりましたが,社長の中では、将来像が明確になっていて,それを公言してはばからなかったのです。そして,事実21世紀に入って目標であった社員数6,000名を達成し、更に今では10,000名を目指しています。

 他にも、本田宗一郎氏が「世界一のオートバイ屋」になるんだ,という夢に向かって努力を重ね、実現した例をはじめ,多くの成功した創業者が同様にシンプルに描いた「下絵」を完成させています。



● 「成功への下絵」の描き方

<作業その…5>

(1)先ず,以前まとめた「自社の売りモノ」をベースに描いたビジョンを明文化する。

(2)自社の将来像をイメージし、成功への粗筋(ストーリー)を短く数行にまとめる。そして、そのストーリーにタイトル(目指すモノを最も短い文章,数字等で表現)を付ける。

 この作業のために情報,意見等は広く集めても良いですが,最終的に社長の本音で,社長自身のモノにした文章、数値でないと機能しません。

(3)出来上がった「下絵」は自らの魂のこもった書にしたためるなり,パネル等にして、人目に触れる所に飾って,自らも毎日目にする。

 あくまでも、ポーズではなく、自らの決意を表したものとして、覚悟と信念をもって、ブレることなく描き上げることが,成功の秘訣です。

内海悟


参考図書
 『日経で学ぶ「経営戦略の考え方」
(日本経済新聞社刊 1575円)


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