「地方企業の成長策」 11号

地方企業が直面する課題のNo.1「マーケティング」


 大きな構造の変化と、目まぐるしく変わる消費パターン。つい2週間前(前回)に,私が“富裕層市場にビジネスチャンスあり”と書いた矢先、日経MJ(6月2日号)に、「背伸び消費は縮む」?「プチ富裕層」「にわか富裕層」の消費は一気に落ち込んで、高級品は苦戦する?。という特集記事が掲載されていました。

 しかし、大きなうねりからすると、「格差」はますます広がり、背伸び層は去っても国内、外(BRICs諸国他)市場での二極化は確実に進み、新しい富裕層市場が形成されることが容易に予測できます。

 このように,毎日多くの情報が飛び込んできて,すごいスピードで変化し,今までの経験値では理解できないことも多く、いったい「これから」をどう捉え、どのようにしていったら良いのか,悩んでいる経営者の皆さんが多いかと思います。

 こういう時こそ、必要とされるのが「マーケティング」です。「マーケティング」と聞くと馴染みがないし、特に中小企業にとって、今まではさほど必要性を感じなかったかと思います。また、市場調査、広告/宣伝活動のイメージが強く、正確に「マーケティング」を理解している方も少なかったように見受けます。

 ところが、いま中小企業に欠けていて、最も必要とされているのが「マーケティング力」なのです。中小企業庁のレポート『地域中小企業の現状と課題』の中にも、「多くの中小企業が直面する課題」「過去の経営革新の成功,失敗の要因」の一番が「顧客開拓,マーケティング」という結果が出ています。





 「マーケティング」とは、お客様の欲求、要望(ニーズ)を知り、それらのニーズを満たすモノ(商品、サービス)を創り、相応しい形で提供し、お客様の満足を得るまでの一連の交換活動。

 従って,調査から始まり,モノづくり、流通,販売、販促活動などが介在します。

 なんだ、それなら今までもやってきたではないかと思われる方もいるかと思います。正しく老舗と呼ばれる所は、この「マーケティング」を徹底してきたからこそ長年にわたってお客様の支持を得、過去の荒波を乗り越えて隆盛を誇ってこられたのです。

 では、なぜ、改めて「マーケティング」と言うような機能が求められるかと言うと、一方では製造は製造に偏り,販売は販売の都合で活動し、それでも通用してきたが、市場にはモノが溢れ、より贅沢になったお客様を満足させなければモノが売れなくなり,国内だけではなく、海外の企業も含めた厳しい競争の中で自社の「売りモノ」を購入してもらえるように企画/販売して行かなければならない状況になったからです。

 要するに、モノを開発する際に発想の段階からお客様を想定し、お客様の満足を得るためのものづくり、販売の方法,販促のあり方まで、一貫性を持って徹底し、それぞれの要素を組み合わせ,機能させるための企画,実施管理までしていかないと、モノが売れない時代になったのです。

 マーケティングの発想が介在した時と、そうでない時の違いをわかり易い事例で説明すると、私がコンサルタントを始めた頃、わずか5坪の小さな製造小売りの和菓子屋から、業績が大きく落ち込み、このまま事業を続けるべきか判断をしてほしいとの依頼がありました。

 私も和菓子の「わ」の字も解らない状態でしたが,ご主人(2代目)の話を聞いてみると、「和菓子屋は昔から職人としてのプライドが高く、自分のつくった菓子は日本一だから、お客は黙って買いにくるという感覚が抜けないで商売をしている」という話でした。

 この話を聞いたとき、基本的に商品が美味しいものであれば、まだ業績は改善できると判断しました。なぜならば、全くマーケティングが出来ていなかったからです。

 そこで,専門のマーケティングの視点で、その時の現状と理想形とを照らし合わせて改善点を洗い出し、一つ一つ実践することを提案しました。幸い、ご主人が今まで通りを好まない人でしたので、実行に移すことが出来ました。

 まず、『和菓子のある生活を提案する店』という基本コンセプトを設け、新しいライフスタイルの中でも和菓子を楽しんでもらえるよう、コンセプトに沿って店側からお客様へ積極的に近づくために、ロゴマークから看板、店舗、商品、パッケージ、陳列、ディスプレー、ユニホーム,売り方、販促…等々すべてを見直し、順次着手しました。

 その結果、活気のなくなった駅前立地のアーケード商店街の一角でしたが、売り上げを倍増し5坪で年商1億円の店に生まれ変わりました。地元でも行列のできる店として一際目立つ存在にまでになりました。

 私は外国の企業にいた関係で30年以上も前からマーケティングに携わっておりますが、その後コンサルタントとして独立した当初は役所で「マーケティング・コンサルタント」という業種のカテゴリーがなく「経営コンサルタント」として登記したくらいで、日本ではあまり重視されていませんでしたが、ここへ来て「自由競争社会」への移行に伴って急に必要性を認めだしたのです。

 私の目から見ると、価値のあるモノが、「マーケティング」が出来ていないために埋もれてしまっているケースが沢山あるように見受けます。

もったいない!

内海悟


参考図書
 『日経で学ぶ「経営戦略の考え方」
(日本経済新聞社刊 1575円)


出版局トップにもどる
日本経営合理化協会 出版局 TEL:03-3293-0041