「地方企業の成長策」 10号

市場の変化は、新しいビジネス機会を生み出す。


 「自社の売りモノ」を明確にし、「自社の売りモノ」を生かす手段を選択、そして「自社の売りモノ」を磨き上げることが,自社の再生、成長に欠かせないことを解説してきましたが、もう一つ重要なのが、「自社の売りモノ」が活躍する舞台(市場)が、どのように変化して行くのかを読み、「これから」の市場で「自社の売りモノ」が生きる領域、即ち、どのような消費者/ユーザーのどのようなニーズに対応するかを描くことです。

 「今まで」うまくいっていた事業が、うまくいかなくなった、という事は、とりもなおさず、「自社の売りモノ」と「消費者/ユーザーニーズ」との間に何らかの理由でギャップが生じたか、消費者が減ってしまったことを意味します。

 従って、ギャップがなぜ生じ、どのようにしたらギャップを埋めることが出来るかが分かれば、理屈の上では解決するはずですが、そう簡単な話でないことは皆さんが一番お解りかと思います。

 私共も、つい一言で「市場環境の大きな変化」「消費市場に地殻変動」等の表現で、変化していることを表してしまいますが、どのように変化し、どうなるのかを明確に把握できなければ、具体的な対応が出来ません。

 確かに、今まで以上に「これから」は読みが難しいのは事実です。なぜなら、今までに経験したことのない市場構造と環境の中で起こることを予測しなければならないからです。



● 変化の前兆は身近なところからも読み取れる。



上の写真は、先週私が銀座の街角で撮影したものです。

 最近銀座界隈を歩いていると,耳に飛び込んでくるのは日本語よりも中国語と言っても過言でないくらい、多くの中国人観光客が観光バスを連ねて銀座や都内のショッピングセンターに押し掛け、買い物ツアーを楽しんでいる光景を目にします。

 銀座のど真ん中(四丁目交差点)で観察していると、午前10時頃になると一斉にバスが集まってきます。中からは多くの中国人と見受けられる人達が降りてきて、百貨店や有名ブランド店に吸い込まれるように消えて行きます。

 そして、暫くすると両手いっぱいにショッピングバッグを下げて,バスに戻ってきます。そのほとんどが高級ブランド商品です。このような光景が,一日中繰り返されているのを知っていましたか。チャンスがあれば、是非観察してみて下さい。なぜ、銀座に世界的有名ブランドのお店が次々にオープンするのかが頷けます。

 この銀座の街角で垣間みることが出来る現象からも、13億もの人口を抱える中国が高度成長を続け、富裕層が年々増え続けていることが実感できます。

 また、高級ファッションブランドだけでなく、菓子や果物等の食品の世界でも、一方で大半を中国からの輸入に頼っているにも拘らず、日本の食品は「安全で美味しい」との評判から、高価でも手に入れたい、と中国からの引き合いが多くなっているようです。

 その他にも,人口規模が大きくて、広大な土地と、豊富な資源を持つ中国以外のBRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)も高度成長が見込まれていて、爆発的に所得水準が高まり、多くの富裕層が誕生することが予測されています。

 日本の消費は、「人口の減少」「少子高齢化」「資源不足」「格差」等々の問題を抱え、市場の活力を失い、大きな伸びが期待できない状況が続いています。一方で、上記のような新しい市場が形成されようとしているのも事実です。

 今こそ、新しい国際分業の構造の中で、「これから」の日本の役割は、中小企業は、地場産業は、…どうあるべきかを考えるべきです。

 そして、世界的にも定評のある日本の技術のすばらしさ、農水産品をはじめ、工業製品、その他、日本独自の「匠の技」日本人の「感性と知恵」(「売りモノ」)を生かして、より付加価値の高いモノをつくり、世界の富裕層相手のマーケティングに成功すれば、これまで以上のビッグビジネスになることは間違いありません。特に独自の「売りモノ」を持つ中小企業にとっては又とないチャンスかも知れません。

 かつて、イタリアが戦略的に取り組んで,世界市場を狙った高級ブランド開発を成功させたのと同様、日本の高級ブランドがBRICs諸国をはじめ世界市場で市場を形成することも容易に想像できます。

 もう既に、多くの中小,零細企業が他の追随を許さない「匠の技」で世界の市場に進出して成功を収めています。また、工業製品以外にも、漆器,陶器,染色,その他伝統技術を生かして、新しい分野の商品、ブランド開発を積極的に取り組み、パリ,ロンドン、ミラノ,ニューヨーク等の展示会で高い評価を得たのをきっかけに、海外市場でのマーケティングに取り組み始めた企業も多くなっています。

 国内では、不況の中でも「自由競争社会」は格差を生むと同時に、市場の「二極化」を促進します。従って、確実に富裕層が登場し、贅沢品(高付加価値商品)に対するニーズも高まります。

 ニッチであっても、伝統の技術や,地場産業の仕組み(「売りモノ」)を生かすことが出来、大手企業が参入し難い高付加価値市場こそ、地方企業にとって

ビジネスチャンスが潜む選択肢の一つではないでしょうか。

 難しい! と最初から諦めたり、尻込みすることはありません。自社の弱い部分は,知恵を絞れば解決策は見つかります。必要なのは、社長の「やる気」のみです。


内海悟


参考図書
 『日経で学ぶ「経営戦略の考え方」
(日本経済新聞社刊 1575円)


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