「地方企業の成長策」 07号

「発想の転換」で夢は実現する。…(その2)


 前回は,自社の「売りモノ」を生かし,「弱み」を補って,夢を実現する「餅は餅屋」の発想法をご紹介しました。自社の「売りモノ」を生かすアイデアは他にもいろいろ考えられます。

 一つの事業を長年続けていると,ついつい「井の中の蛙、大海を知らず」に陥りやすくなります。そして、せっかくすばらしい自社の「売りモノ」があるにもかかわらず、業界の常識、業界の動向で,自社の業績も左右されてしまい苦しんでいる会社が多いものです。

 特に、地方企業が抱える格差問題、地場産業として同業者が多く集積する地域等の要素が加わると更に隘路に入り込んでしまい、なかなか抜け出せなくなってしまいます。

 そんな時には,下記の図(マトリックス)を使って、自社の置かれている状況を判断しながら、先ず自社の「売りモノ」を生かす選択をすることです。






土俵を変えて相撲を取る。

 今まで通りでは行き詰まってしまう状況から抜け出す一つの方法は、従来とは違った土俵(市場)で相撲を取ってみることです。(既存の「売りモノ」で新しい市場に参入。…上記図の(3))

 土俵を変える事により,今までとは違った評価が得られ、埋もれていた自社の「売りモノ」が陽の目をみると言った例も沢山あります。

 勝負する土俵の選び方もいろいろあります。


(1)地域を変える。

 今までは、地元のみを相手にしていたのを、対象とする地域を広げて主要都市、首都圏,または全国市場へ広げる。或は海外市場へ進出する。

 最初から無謀だと諦めないで下さい。「餅は餅屋」の発想,その他と組み合わせれば,不可能だと思っていた事も可能にすることができます。

 事実、佐賀県(唐津)のK豆腐店は、以前は自店での販売と地元スーパーマーケットへの卸を行っていたが、利益も上がらず苦しいばかりで、将来を不安に思い,一念発起して「世界一の豆腐屋」を目指して商品開発に取り組み、開発した「ざる豆腐」を全国に販売,10年以上もヒットを続けています。

 また地域外の専門家と手を組み,自社ブランドの開発に成功した香川県の手袋メーカーはショーへの出展を契機に東京での販路開拓を実現。

 インターネットと宅配サービスを組み合わせてオーダースーツの販売を全国に向けて行っている岡山県の紳士服製造販売会社。和筆の技術を生かし化粧筆専門メーカーとなり、海外向けにOEM生産を手掛けている広島のブラシメーカー、などなど沢山の成功事例があります。



(2)業界を変える。

 自社「売りモノ」を応用して別の用途で生かせば,従来からの凝り固まってしまった市場から抜け出し、別の土俵(市場)で、自社の「売りモノ」の力を発揮する事が可能になります。

 福島県の塗装業Y社は、漆塗りの技術を、建築内装材、インテリア製品,携帯電話,自動車部品にまで広げ成功しています。また、不況業種の一つでもある鋳造メーカーが、生き残りのために開発した鋳造技術(従来の厚さの限界の3分の1の鋳造を実現)を生かし、それまでの産業機械部品の下請けから脱し、調理用フライパン「魔法のフライパン」(自社ブランド)で大成功した三重県のN社。

 香川県のH社は手袋の型抜き技術を応用して、プラスティック素材に適用,自動車部品として自動車部品メーカーへの販売に成功。



(3)対象(ターゲット)を変える。

 売り上げを確保するために、やたらと取扱商品の数を増やしてしまって、せっかくの自社の「売りモノ」が目立たなくなってしまった。また、付加価値の高い技術や商品であっても、同じ相手に長く提供し続けてきたために評価されなくなる、或は埋もれてしまうケースも多く見かけます。

 このような場合には、自社の「売りモノ」を再評価して、ターゲットを絞り込んだマーケティングをする事により再び甦らせる事もできます。


 宮城県の水産練製品メーカーM社は品質に徹底してこだわり、プロが認める品質の「揚蒲鉾」作りを展開し、高価格を維持しつつ10年間で売り上げを5倍以上にしました。素材と伝統の製造技術にこだわり、量より質を重視して、絞り込んだ市場でブランドの構築を貫いています。

 新ブランドを立ち上げる際に高級志向の顧客に絞り込んでターゲットとし、意図的にターゲットとなる客層が利用する店舗に限定して販売。ブランド構築に成功している和装小物製造卸の会社などの他、対象を絞り込んで「売りモノ」の価値の再構築に成功している例は沢山あります。

 また、年々客の減少が続き悩んでいるスキー場が、発想の転換を図り,ちょうどシーズンが逆になる豪州人を誘致して大成功している北海道ニセコスキー場や長野県の白馬村なども参考になります。


スキ間にチャンスあり。

 その他にも自由競争の下で弱者にとって有効で,しかも大手企業が手を出し難いスキ間戦略があります。規模は小さいけれども競合の少ない特殊なスキ間需要を狙って,特化した自社の「売りモノ」で対応し、高付加価値の事業を成立させる事ができます。

 スキ間戦略を成功させるには、先ず「売りモノ」を磨き上げて「鋭いクサビ」を用意する事がポイントです。

 多くのマスコミが取り上げて有名になった徳島県上勝町の株式会社いろどりの「葉っぱビジネス」、地元の高齢者を活用して地域の資源である葉っぱを都会の料亭向けに販売し、一つの地場産業にまで育て上げた例、また、前回ご紹介した私が創業した飲食店向けのデザートのビジネスもスキ間商売の典型です。

 まだまだ,自社の「売りモノ」を生かす知恵,創意工夫の仕方がいろいろとありますのでご紹介していきます。

 その間も、それらをヒントに自社の再生、更なる成長をどのようなストーリーで実現して行こうか…の夢(構想)を描き始めて下さい。



内海悟


参考図書
 『日経で学ぶ「経営戦略の考え方」
(日本経済新聞社刊 1575円)


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