「地方企業の成長策」 06号

「発想の転換」で夢は実現する。…(その1)


● 先ずは,「売りモノ」の生かし方,「弱み」の解消法を学ぼう。

 自社の「売りモノ」が決まり、「売りモノ」を基に。将来構想を描き,一日も早く取り組んで行きたいところですが、いざ具体的な計画を立てようとしても,限られた経営資源しかない中で、“どこから,どんな計画を、どのように” 手掛けていったら良いのか,さっぱり分からない、というのが本音ではないでしょうか。

 むしろ、考えれば考える程、逆に自社の※『弱み』ばかりが頭に浮かんでしまい,自信を失うばかりで,つい悲観的になってしまうのが普通かもしれません。


※ <作業その…(4)>  第3回目にもお願いしましたが、一連の作業を行う際、頭に浮かんだ自社の「弱み」をリストアップして下さい。

 そこで,具体的な計画案の前に,どのようにしたら自社の「売りモノ」が生かせるか,また、「弱み」を解消する事が出来るかを,成功例を参考に、その発想法と具体的な手段を学び、併行して夢(構想)を膨らまして行きましょう。



「餅は餅屋」の発想で、不可能を可能にする。

 前回紹介した,私が創業した飲食店向けデザートの企画/販売の専門会社は、ほとんど資源のない中で事業(ビジネスモデル)を組み立て,成功した例です。

 そこで、同じように多くのハンディを抱え,限られた資源の中で,再生を図らなければならない立場の地方企業の経営者の皆さんには、ぜひ参考にしてもらいたいと思います。

( 今後も要所々々で同ビジネスをご紹介しますが、このビジネスモデルの詳しい解説は『日経で学ぶ「経営戦略の考え方」』(日本経済新聞社)に紹介されています)

 当初、売り上げ拡大を強く望んでいる顧問先の菓子製造小売りの会社(数社)と、デザートで困っている飲食業との橋渡しをすることにより,両者に対して貢献でき、同時に今までにはなかった新しいビジネスが成立するのではないか、と漠然と考えたのです。

 しかし、その際に自社の売りモノと云えるものは「企画力」と,強いていえば「菓子製造元とのネットワーク」位でした。その他経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)らしいものはほとんど有りませんでした。

 構想の内容は、「デザートで困っている全国の飲食店(和、洋、中華,その他)に魅力的なデザートを企画し、手間をかけずに店で提供できる食材をお届けする事で、繁盛店作りに貢献しよう」というものでした。

 その時、このビジネスを実現するために必要な条件,機能の中で、

自社の「売りモノ」
自社の「弱み」
<資源>
<必要とする機能、条件>
企画力

菓子製造元との繋がり

(持たざる強み)

菓子製造機能(なし)

営業力

受発注機能(なし) 人材不在

配送機能(なし)

まとまった資金(なし)





 といった状況で、まったく,企画した事業を実行に移すための資格が無い(ナイナイづくし)、ほとんど不可能な状態でしたが、“なんとかできないものか”、との思いがつのり、机上で考えを巡らす中で、「餅は餅屋」の発想が浮かび上がりました。

 以前から、顧問先の問題解決のための手段として、「コスト」「質」「スピード」を同時に解決する手段は無いものかと考えていた最中でした。

 解決策を考慮している際、思い付いたのは、「大工が一軒の家を建てる時代」は、とっくの昔に終わっている。今や,設計から諸々の工事まで分業化されていて、それぞれを専門の業者が受け持ち、請負った会社の管理のもと,一軒の家が建てられている。

 そうだ、事業を構成する仕事のそれぞれのプロに “必要な時に、必要なモノを、必要なだけ” 提供してもらい、それらを束ねれば、「コスト」「質」「スピード」が同時にクリアーできる。

 しかも、すべての機能を内に抱えるよりも、リスクも少ないし、質の向上も計れ、また、既存のサービスを繋げるだけで済むから、直ぐにでも開始できると考え,各専門のサービスを提供する企業の情報を集め、早速、計画内容を伝えて協力を要請しました。

 そして、下の図のようなビジネスモデルが出来上がり、たった二人(社内)で全国の飲食店へ、デザートを販売することが可能になったのです。





 「餅は餅屋」のネットワークの成功例は他にも沢山あります。石川県のF社(酒造業者)が自社の米の発酵技術を生かし、地元化粧品メーカと大学と連携し,それぞれの専門性を有効に組み合わせて、化粧品の開発に成功。新たな事業を柱に育て上げることに成功した例や、日本と同じように中小零細企業が多いイタリアでは、この「餅は餅屋」のネットワークシステムが一国の経済活性化に一役買っています。

 「餅は餅屋」の発想をもってすれば、自社の「弱み」を「強み」に変える事もできるし、不可能と思われる事も可能にする事が出来、また、すべての課題を社内で解決しなくても、弱い部分を餅屋に委ねる事ができれば、効率化と同時に自社の「売りモノ」に特化でき、より磨きをかけられます。

※ 「餅は餅屋」(ネットワークビジネス)を成立させる為のノウハウ、ネットワークビジネスと下請けとの違い等、後々解説します。

 いつまでも、“地方だから…” とハンディキャップのみに心を奪われてしまわないで、知恵と創意工夫次第で,限られた資源の下でも、自社の「売りモノ」を生かすことも、「弱み」解消もできるのですから、あくまでも積極的な心で、明るく先を見据えて,夢を描く(構想を練る)事を心がけて下さい。

 次回も、自社の「売りモノ」を生かす発想法,手段について事例を通して学びましょう。

内海悟


参考図書
 『日経で学ぶ「経営戦略の考え方」
(日本経済新聞社刊 1575円)

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