「地方企業の成長策」 02号

弱肉強食の時代


 大きな変化の実態を把握

 地方企業が、直面する諸問題を解決し、成長策を講じるためには、先ず、いかに現状を冷静に分析し、正しく認識するかが最も重要です。

 確かに、「地域格差」は存在しますし、これらが地域経済や企業に大きな影響を与えていることも事実でしょう。ただし、「地域格差」は過去にもありましたし、いま急に始まった問題でもありません。

 むしろ今、地方企業の経営者の皆さんの頭を悩ませている問題や課題の本質は、もっと別のところにあると言えます。問題の本質を見抜くには、現実を大局的、客観的に分析し、大きな時代の変化と、そこから派生する事象を読み取ることです。

 まず、人口の減少、少子高齢化は既に始まっており、国内の市場規模を縮めるのは確かです。日本全体でも減り始めている中で、都市部に人口が集中すれば、地方の人口減少巾は一層大きくなることは容易に推測できます。

 また、競争が想像以上に激化していることも確かです。自分たちは「国内」とか「この地場で商売」と思って経営していても、市場がそれを許してくれません。インターネットなどで情報が飛び交い、簡単に商品やサービスが国境を越える時代、あらゆる企業は、否応なく「国際品質」で世界と競争しなくてはならなくなっています。 但し、企業にとっては、今や市場は国内、海外を問わず、自ら選択することも出来ます。むしろ、人材の確保の方が難しくなるでしょうが、それも知恵を絞れば解決策が見つかるはずです。

 さらに、日本は自由競争社会を選択し、これによる身内間の厳しさも増しています。「皆で仲良く」という、今まで慣れ親しんできた「団体戦の仕組み」は、皆が「力を合わせ」成果を生み、それを『分け合う』仕組みです。そこにはおのずと「規制」(ルール)があり、これを機能させて来ました。

 もともと農耕民族である日本人にとっては、団体戦こそ、一番総合力を発揮させることができる仕組みだったかもしれませんが、良い悪いはともかく、既に「自由競争」を選択し、移行しています。この流れはもう変わらないでしょう。

 規制が多いうちは、やれ「取り分が少ない」だの、文句も多かったものの、いざ自由になってみると、想像以上に厳しさを実感させられている、というところでしょうか。

 自由競争とは一言で云うと、「弱肉強食」の構造です。「個」(個人、個々の企業)が「自己責任」において、「自由に競争」し、「奪い合う」仕組みです。例えてみれば、原野に生きる動物が自らの力で餌をとって生きている姿です。

 一方、団体戦、特にこれまでの日本国内の団体戦は、動物園の檻の中で保護され、定時になると餌を与えてもらえる動物達の姿でしょう。檻という強固の規制の中で、「全国一律」や「業界組合」「配分」…といった馴れ合いの中でぬくぬくと生きていたのです。

 いま直面しているのは、この動物園で飼われていた動物たちが、突然檻を外されて、さあ、どうぞ自由に自分たちで(自己責任において)餌をとって下さいという状況に変わったようなものです。隣の動物が自分を襲ってくるかもしれません。慌てるのも無理もないでしょう。

 従って、「格差」は当然生じる仕組みですし、厳しい競争を強いられ、同時に多くの問題も発生します。ストレスが何かと多くなり、のんびりなどしていられなくなります。今後は規模の大小、地域にかかわらず、一企業がいかに生きて行くかを自らの責任において考え、実行して行かなければ、生き残れないのです。

 それが証拠に、大手企業も生き残り戦略を模索していて、業界トップ同士のM&A(企業合併、吸収)が毎日のように報道されています。これらが、いま身の回りで起きている実態なのです。



 老舗は変化対応の見本

 ところで世界的に見て、老舗といわれるお店や会社が、一番多く残っているのは日本である、という話はご存知でしょうか。老舗と聞くと、何かカチコチで閉鎖的、昔のやり方に踏襲して古臭い感じ…ととらえる人もいるかもしれませんが、実はまったく逆です。

 老舗は古くからの伝統を守りながらも、常に時代の変化に適応するために、自ら新しいものへ挑戦し、変革を重ねています。だからこそ何百年も続いているです。そして老舗は、意外と地方に多いのも事実です。ここに1つのヒントが隠されているかもしれません。

 多くの地方企業の皆さんも、構造の変化にいかに適応したら良いか模索しているとは思いますが、まだ、環境のせいにして自ら「自立」することを考えていないとしたら、老舗を見習うこともおすすめします。

 地方だから経営が難しいのではないかと諦める必要はありません。地方だから可能なことも数多くあります。新しい環境の中で、自社の「売り物」環境を生かし、自社の存在価値を発揮できるビジネスを改めて構築して行く「覚悟」と「挑戦意欲」があれば、チャンスはいくらでもあります。

 しかし、未だに過去からの延長線上での改善、あるいは現状維持だけを考えて、「挑戦」しないところは、いま襲いかかってきている嵐に飲み込まれてしまうのは必至です。

 再度、「地域格差の是正」では到底解決できない状況にあることを認識し、真剣にとりくんで行く覚悟を決めて下さい。今こそ、地方企業の底力を発揮するときです。

 次回から、具体的な取り組みに関しての話題を取り上げていきます。


内海悟



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