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柿内幸夫の「社長の現場改善」93

「洋上セミナーで学んだこと

 昨年に続き2回目の経験だったのですが、今年も日本経団連が主催する洋上研修に、講師として参加する機会を頂きました。

 出発当日、横浜港の岸壁には出身職場の方々が書いた激励の横断幕が並び、見送りに来た職場の方々が大きな声で「一回り大きくなって帰って来いよー!」と 叫んでいました。

 いよいよ出港する時になると合図のドラがジャーンジャンジャンジャンと鳴り、船は激励の太鼓のリズムと供に、ゆっくりゆっくりと港を離れて行きました。


 【お見送りの方々が書いた大きな横断幕】 
 【いよいよ出航】 
 【太鼓で激励】 

 いったん港を離れてしまえばもう絶対に戻ることが出来ません。『覚悟を決めてしっかりと学び抜こう!!』 動きがあまりにスローなだけに、感慨に耽る時間があり、なおさらその気持ちが強く感じられました。

 船の中で、212名の参加者は「グローバルな環境において必要なものの考え方」や、「求められるリーダーシップ」、あるいは「これからのモノづくり 」についての講義を受けました。

 そして、それぞれの班に分かれて職場リーダーが果たすべき役割についてディスカッションするといった課題研修カリキュラムをこなしまし た。スケジュール的にはかなり厳しいものだったと思います。

 これは昨日まで本当に忙しく働いていた中堅幹部の方々が、ある日突然に仕事場を離れ、船の中という特殊な環境で、全く初対面の人たちと徹底討論をするとい う、普段の生活では考えられない教育方法です。

 最初は戸惑っていた方々が激変した環境に短時間のうちに順応し、友達をつくってカンカンガクガクの議論をし始めるのを拝見して、この9日間という長期間 の研修体験は、多くの方々にとって、今後の仕事や人生において一生の宝になるのではないかと思いました。

 なぜそう思ったか。理由はたくさんあるのですが、主なものとして、次の3つをあげます。

 1つ目はみなさんが自分の会社以外のたくさんの、それもすべて別々の会社の人たちと接触できた事です。

 講師の一人である『ジャパン・インターカルチュラ ル・コンサルティング』社長のロッシェル・カップ氏は「日本人は会社人間になりがちです。その結果、自分の所属する会社という狭い範囲での価値観で頭が 固まってしまい、大きな変化に対して新しい発想を出しにくくなっている。」とおっしゃっていました。

 日本人の私から見ても確かにこの傾向はあると思いま す。しかし今回の洋上研修においては、みなさんが多くの違う会社の人たちと接することによって、その固定観念をガラガラと崩し、そこから新しい考え方を生み出していくという現象が、そこかしこで起きていました。

2つ目は、サボる場所もない中で、半ば強制的に考える時間を何日も連続的に持てた事です。毎日をただひたすら忙しく過ごしていると、しっかり勉強をして、 腰を据えて物事を考えるという時間がなかなか取れないものです。

 そして良いことではないとは思いつつも、ついついこれまでの経験の範囲内で結論を出して しまいがちです。

 しかし、会社からの電話もない洋上の環境(いくら海外対応の携帯電話を持っていても電波がなければ電話はかからないのですね、気付 かなかった!)では、しっかりと勉強をしてたっぷりと考える事ができました。

 その結果、最初は戸惑っていたほとんどすべての方々が、すばらしい考えを堂々と述べ るように変身されました。

 そして3つ目は、こういう厳しいカリキュラムの中にも、ゆったりとした食事やティータイムの時間が用意されていた事です。これはなにも私がお茶とお菓子が 大好きだから言っているわけではありません。

 

 【甲板での楽しい昼食会】 


良い発想とは疲れた頭からはなかなか生まれないもので、時にはリラックスした空間を用意する事が必要なのです。

 参加された多くの方は、日本で忙しく動き回っている時には思いも付かなかった、柔軟な発想を生み出す経験ができたのではないでしょうか。

 この3点(固定観念の排除、勉強、リラックス)は、今後の大きな変化に対応する際に、重要なポイントになると思います。この経験を忘れず、大きな変化が起 きた時にもしっかりと対応して頂ける事を願っています。

 もちろんこのような大きな研修に参加しなくても、いろいろな方法を考えることによって、同様の成果を得ることは可能なはずです。何か良いアイデアがありましたら、是非私にも知らせて頂けると嬉しいです。

 景気回復傾向の中で、毎日を忙しく過ごされている方が多いと思います。しかしそれだけに追われると良い発想は生まれにくいかもしれません。

 ほんの少しで 良いですから、いつもと違った切り口で、今後のモノづくりを考える時間を作ってみて下さい。きっと今までは気付きもしなかった斬新で素晴らしい発想が生ま れてくるでしょう!    

 ※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。
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