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柿内幸夫の「社長の現場改善」88

「品質を守る“技能伝承”のやり方 その2

 前回に引き続き、先輩が持っているレベルの高い技能を、後輩に伝承出来るようにする目的での、改善事例をご紹介します。

 技能の伝承・習得が難しいという事例はいろいろありますが、その中で多いのは「見えない」ことが原因で、教育訓練が難しくなっていることです。

 しかし今は、便利な道具が私たちの身の回りにはたくさんあります。今回は「見えない」から技術の伝承が難しかった仕事を、道具を使って「見える」ようにして、問題を解決した改善事例をご紹介します。

 ■G県R社の事例

 極めて小さい部品の検査を、顕微鏡を使って行っている。合格・不合格の判定には微妙な部分があるので、習得が難しく、出来る検査員がK氏1人しかいなかった。

 そこであと1人検査員を養成することになり、若くて目が良いH氏が先輩・K氏から習うことになった。先輩・K氏は合格品と不合格品のサンプルを使って、H氏に顕微鏡を覗かせて、その違いを一生懸命に説明した。

 しかし、一緒に顕微鏡を覗くことも、あるいは違いのある部分を指さして教えることも出来ないので、なかなか理解が進まなかった。

 そして、この作業のやり方だと、2人が本当に同じ部分を対象に、議論をしているかどうかすら良く分からない状態になり、なかなか訓練が進まなかった。

 【R社の解決策】

 顕微鏡を覗く部分にアダプターを使ってデジタルカメラを取り付けて撮影し、それをプロジェクターで拡大して映写した。

 そうすると、2人が同時に同じ画面を見ることが出来るだけでなく、違いのある部分を先輩・K氏が指さすこともでき、それまでの「核心部分を本当に共有化しているか」の不安が一気に解消し、理解が深まった。そして教育成果が急速に上がり始めた。

 ■T県N社の事例

 極めて小さい部品を溶接する作業を教えていた。しかし小さい部品である上に、火花が出るので、暗いマスク越しにしか見ることが出来ない。それゆえに良く見えず、習熟に時間がかかった。

 また、習得したという人の作業を見ると、それぞれの作業方法にはバラツキが生じているようであり、そのためか品質不良の発生が、なかなか減らず困っていた。

 【N社の解決策】 

 ビデオカメラに、ファイバースコープでつながれたCCDレンズを取り付けて、溶接がされていく状況を撮影。それをプロジェクターで拡大して映写した。(ビデオテープに録画して見るのではなく、ビデオカメラを通じて同時に拡大映写した)。

 自在に曲がるファイバーでつながれたCCDレンズなので、火花を直接に見ること無く、レンズを溶接部分に近づけることが出来る。その結果、溶接がされる状況を全員が安全に拡大して見ることが出来た。

 そして、全員が交代して作業をすることで、それぞれの作業を見比べることもでき、これまでは全く議論できなかった部分が全員に共有化され、技能レベルの上がり、品質を向上させることが出来た。

 ここから先は雑談…。

 このレンズを見ていたら、よからぬ用途を次々を思い付いた。そこでそのレンズを持ってきた人にそのようなことを尋ねたところ、「これはマニアには必須のアイテムですと」のお答え。

 外でレンズを活用して新聞に載ることがないように、工場からは持ち出し禁止にすることを提案しました。

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