.

柿内幸夫の「社長の現場改善」84

「不良をつくるムダ

 7つのムダの話も、とうとう最後の「不良をつくるムダ」まで来ました。「不良をつくる」ことそのものは誰が考えても良くないことなのですから、ムダに決まっていますよね。

 これまでの6つのムダについては、何故これがムダであるのかという説明を最初にしていましたが、この項目についてはその必要が全くないと思います。

 ですから皆さん、不良をつくらないように頑張って改善して下さい。以上で7つのムダの話を終わります。ありがとうございました。

 というわけにはいきません。しっかりと説明させていただきます。

 世の中には品質不良が発生することによって、大変なことが起き続けています。今現在の最大の問題はエレベーター事故でしょうか。

 コストについては改善が少々遅れても、すぐには大問題にはつながらないことが多いのですが、品質や安全については、起きた瞬間に大問題になることが多々あります。

 問題が起きる1秒前までは大丈夫であったわけで、起きなければ問題ではないと考えてしまいがちです。

 ですから、ついつい後回しにしてしまうことがあるのですが、問題が起きてしまった後の影響の大きさを見ると、やはり常日ごろからこの問題に厳しい目を向けて、改善を続けなければいけないと分かります。

 品質不良というのは一筋縄では行かない非常に複雑な問題です。しかしそのような複雑なものであるからこそ、現場・現物を通じて、しっかりと品質をつくり込むための見方を理解することが必要でしょう。

 実際の現場ではいろいろな問題が起きていますが、今回はそのような観点から私の考え方を実際に経験したことをベースにお話したいと思います。

 ある会社の塗装現場で改善指導をしていた時の話です。その会社では、塗料の粘度が求められる範囲内に入っているかを見るために、ある一定量の塗料を穴の開いた入れ物に入れて、何秒で空になるかを測定していました。

 現場に記録用紙があって、毎日の測定結果が書いてあるのですが、毎日その値がすべて見事に中央値(20秒)付近に集中していました。

 あまりの集中ぶりに私は少々疑問を感じたので、その作業をしている人に、この時間は毎日どうやって計っているのかを聞きました。

 すると、時計を使って計るという答なのですが、その人は腕時計をしていません。壁にかかっている時計には秒針がついていません。

 しつこく今日はどうやって計ったのかを聞いたところ、今日はたまたま時計がなかったので感覚で計ったが、毎日やっているので正確だという、すごく怪しい答が返ってきました。

 そこで私も、自分で時計を使わないで計ってみることにしました。ただしその場にいる人に同時に時計を使って計るようにもお願いました。

 私は仕事がら、秒単位の時間の計測をすることが多く、30秒くらいなら時計を使わないでほぼ正確に時間を測れます。

 その時の私の体内時計(?)を使った計測は26秒で、横で時計を使って計っていた人とピッタリ一致しました。ちょっと大人気ないパフォーマンスだったかなとは思ったのですが、とっさにやってしまいました。

 すなわち、残念ながらこの現場では、しっかりした品質の塗装をするためのデーターの取り方のルールが守られていなかったということです。

 このようなことはめったにないと会社の方々は言うのですが、私はしょっちゅう経験するのです。

 めったに起きないことが私の周りではしょっちゅう起きる。しかし私がとても運の悪い人間で、そんな例に人より多くぶち当たるということではないと思います。そうではなくて、多くの人がこのようなことを見過ごしているのだと思います。

 まずは、品質をつくり込むベースとなる日常のデーター管理が実際はどのように行なわれているのかを現場でチェックして見て下さい。

 ちゃんとするように言ってあるのだからできているはずとか、やるべきだというのは意味のない発言です。まずは現場で実際のデーターがどのように取られているかを見てみましょう。

copyright© saburo
 ※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。
okada@jmca.net
   【柿内先生の最新刊】

現場のコトバ
シツケができる!ダンドリ上手になる!カイゼンが進む!

柿内 幸夫 (著)

価格: ¥1,155(税込み)
中経出版

出版局トップにもどる
日本経営合理化協会 出版局 TEL:03-3293-0041