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柿内幸夫の「社長の現場改善」79

「お客様が要求するロットサイズ

 今回は在庫のムダの続きに戻ります。

 先回は、購入品を前提に安全在庫を減らす方法についてお話しました。今回は、生産品を対象として生産ロットサイズを小さくして在庫を減らす方法をお話します。

 まず、生産ロットサイズをなぜ小さくしなければいけないかから話を始めます。

 もし大量の注文を受けて、その量を一気につくる必要があったとしたら、それは大ロットでバーンとつくってしまえばいいですね。繰り返し生産ですから、能率も高いし、つくったモノがすべて売れるのですから儲かります。

 しかし実際には、そんな注文はめったにありません。いや、ほとんどないと言った方がいいかもしれません。現実の注文は少量の繰り返しであり、それに対する生産は大ロットで対応しているということが多いようです。ですから、倉庫も管理もコンピューターも必要になります。

 たとえばA,B,Cの3種類の製品をつくって売っているとしましょう。

 1日の販売量はA,B,Cがそれぞれ100個ずつ、合計で300個が売れます。そして、1日の生産能力はひたすらつくり続けて、1日300個だとします。

 段取り替えは1回に1時間かかるので、1日1回、残業でやっています。その結果、つくる品種は1日に1種類。A,B,Cが3日でローテーションして作られる形になります。

 もし、お客様が、今日はAばかりを300個、明日はBばかりを300個、そして明後日はCのみを300個と分けて買ってくだされば、このつくり方でいいのです。

 しかし、そんなことはまずない。毎日それぞれを100個ずつといった買い方になるでしょう。実際にはこんな事だってあり得ません。毎日ばらつきます。

 そうすると、たとえ安全在庫を持たなくてもぎりぎり大丈夫といった現実にはありえない条件であったとしても、やはり在庫を持たないと品切れを起こしてしまいます。考えられる最低の在庫は、その日の出荷が終わった時点で、たとえばAが200個、Bが100個、Cが0個となります。

 さて、このような状況の下で、このロットサイズは正しいでしょうか? という質問をいたします。

 どうお答えになりますか?

 もしこれが大学の経営工学の講義での質問であったとしたならば、講師は次のように答えることでしょう。

 それは「経済ロットサイズ」という考え方です。

 「経済ロットサイズ」とは、在庫を持つことによってかかる費用と、段取り替えにかかる費用の合計の値をロットサイズごとに算出して、その中で最も少ない費用になる点(ロットサイズ)を探すという考え方です。

 在庫にかかる費用はロット数に比例して増えます。そして、段取り替えにかかる費用はロット数に反比例します。

 そこで図のような線を引いてみるとその2本の線が交差した点が最も合計値が少ない点となり、その時のロットサイズが「経済ロットサイズ」というわけです。(図1)

図1 経済ロットカーブ

 うーん、アカデミックですねぇ。よくできた理論です。しかし私はこのような計算を現場で説明したり、実際に計算をしてみたことは一回もありません。なぜでしょうか?

 「計算が難しくて面倒だから!!」 ブブー。違います。意味がないからです。

 この計算は、段取り替え時間というものが全く変わらないという前提の下で、一番コストが低い、そしてできるだけ大きいロットサイズを探すという理論です。

 しかし、そんな計算をして「これで良し!」なんていっている暇があったら、段取り替えをドンドン短くする改善をした方がいいのです。

 計算上の儲かるロットサイズではなく、お客様が欲しいというロットサイズでつくれるようになることを目指しているのですから。

 それと、あと一言付け加えると、たとえばここで一時間かかっている段取り替え時間を3分のワンタッチ段取りにまで改善してしまうと、実際にはこの計算はほとんど無意味になってしまうのです。興味のある方は下記の付録をご覧下さい。

 次回は段取り替え時間の短縮についてお話します。


【付録】
段取り替え時間は60分、1ヶを作るのにかかる作業時間を                        2分とするとロット数によって大差が出ます。
(100:84) 
ところが段取り替え時間が3分になると
ロット数による差がほとんどなくなります。
(100:99)
 ※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。
okada@jmca.net
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