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柿内幸夫の「社長の現場改善」77

「リードタイムと安全在庫の適正量

 先週は3日間中国・上海に出張しました。これまで上海には何回か行った事があるのですが、今回初めて上海国際空港と上海市街を結ぶリニアモーターカーに乗ることができました。

 日本の東海道新幹線にも、初期の車両にはビュッフェにスピード計が付いていましたが、同様に、上海の車両でも各車両の両端の表示盤でスピードを表示していました。

 走行距離が30kmと短いため、トータルの走行時間はわずか7分。その間に時速430kmの地上でのスピードを体験することができました。

 当たり前ですが、確かに速いです。減速してきたので、もう60km/hくらいかなと思って表示盤を見たら、何とまだ200km/hでした。それほど速かった。

 日本の新幹線も、いつかは時速400kmで走るんだろうなあと思います。技術の進歩は止まりません。そしてそれが日本を支える原動力であると私は信じていますし、その原動力を推進する大きな力が「改善」だと確信しております。


 さて今回から、具体的な在庫の減らし方についてお話します。

 前回に申し上げましたが、在庫を減らすことは決してやさしくありません。けっこう大変です。

 その一番の理由は、在庫削減は一人あるいは一部門だけでやろうとすると難しいということがあるのではないでしょうか。

 多くの場合、改善活動は部門ごとに行われています。もし改善の過程で何か困ったことが起きた時には、その活動の一部を他部署に助けてもらうという程度のことはありますが、最初から複数の部門がジョイントして活動を行うことは意外と少ないようです。そういうアプローチには慣れていない会社が多いですね。

 たとえば、前回の最後に載せた、ロットサイズを小さくしたら前より在庫が増えてしまった例はまさにそれです(図1)。製造部門と生産管理部門が一緒に実行すれば絶対に起きない間違いが、製造部門だけでやったためにああなってしまったといえるでしょう。

図1 間違った在庫削減

 どこか一つの部門が単独で在庫削減にチャレンジすると、たとえ一瞬在庫が減ってもその状態が続かないのです。一部門だけで実行すると全体での整合性が取りきれないので、すぐに問題が出てきてしまいます。

 問題が出ること自体は決して悪いことではないのですが、それを解決することができる体制になっていないので、結局対応することができずに、諦めて元に戻ってしまうのです。

 では再びこの元の図(図2)に基づいて話を続けます。

 この図2の状態からさらに在庫を減らす改善を考えてみましょう。考えられる改善は2つ。安全在庫を減らすことと、さらに生産(購入)ロットサイズも小さくすることです。今回はまず安全在庫を小さくすることにチャレンジしてみましょう。

図2 最初の状態

 とりあえず、購入品の安全在庫という前提で説明いたします。購入品の場合は、最初に安全在庫の量を決めている理由を調べてみます。

 もし、その購入品が近くのコンビニエンスストアに売っているものであったら安全在庫を持つ必要がありません。24時間オープンですから、無くなったら買いに行けばいいでしょう。もちろんそうではないから、安全在庫を持っているわけですが、当然それぞれは違う場所から違うものを買っているわけですから、その量には違いがあるはずですね。

 すぐ近くで作っているもので、頼んだらすぐに作って持ってきてもらえるものであるとすれば、安全在庫は少なくても大丈夫です。そうでないものだけを多めに持っていればいいですね。

 ところが、実際の安全在庫の設定を調べてみるとすべての購入品が一律に設定されていることがあるのです。私は実際に多くの事例を見てきました。

 あるいは、現物とそれに対応する発注のリードタイムを見てみると、何でそんな長い時間が必要なのだろうと誰もが思うほど長い期間が設定されていることも多いものです。

 いったん決まってしまうと、誰も現物との照合をしなくなってしまうことがあるのです。これも調べてみて下さい。

 そして明らかにおかしいものを見つけたらば、先方のメーカーと一緒に検討して下さい。意外と簡単にリードタイムを短縮できてしまうことも多いものです。

 やはり、ここでのキーワードは現場・現物です。

 購買部門の方はコンピューターに張り付いて仕事をするのではなく、現場で製造の人たちと一緒に現物を見て下さい。そして実際の改善の際には、メーカーの方達も巻き込んで実行して下さい。そうすれば図3のグラフのように在庫が削減されるでしょう。

図3 安全在庫を減らした結果
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