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柿内幸夫の「社長の現場改善」67

“Just” に近づく

 「つくり過ぎのムダ」はトヨタの大野耐一元副社長が書かれた『トヨタ生産方式』(ダイヤモンド社)にしっかりとその重要性が述べられています。

 この本を既に読まれた方はとても多いと思うのです。しかし意外なことにこの本で勉強したから、かえって出来ないと思ってしまう方も多いようです。

 すなわち、『「つくりすぎのムダ」をなくすということは、要はジャストインタイム(Just In Time)をやれってことでしょう。だけど私の業界は自動車とは全く違うんだからそれは無理』、といったことです。

 気持ちは分かります。しかしそのように簡単に決めつけてしまってはいけません、絶対に!! 

 前回申し上げましたが、このムダは本当に致命的なムダなのです。このムダをしっかりと理解できるかどうかによって、改善のレベルは大きく変わります。保障します。

 指導の現場でもこのような意見がよく聞かれるのですが、その時に私は次のような説明をして、皆さんに少しでもこのムダに対して食らいついてもらおうとしています。

 だいぶ前ですが、”Just(ちょうど)+ In Time(間に合う)” という言葉が出てきた時に、英語の専門家の方のご意見だと思うのですが、『これは完全な和製英語であり間違いだ。「ちょうど間に合う」という意味であれば、英語には “On Time” という言葉がある』といった内容が言われていたのを覚えています。

 しかし、この “Just In Time” をそのようにカッチリととらえてしまうと前述の自動車業界じゃないんだからという発言になってしまうのですが、もう少し広くゆったり考えることが必要だと思います。

 製造業に従事する私たちはみんな真面目です。特にお客様の納期に対する責任感は特別に強いと思います。そしてこれが日本の強さの秘密でもあります。 そこで下の絵を見てください。

 A社とB社の二つのメーカーが、私が社長をしているアセンブル(組み立て)の会社(柿内アッシー株式会社)に部品を納入しています。私がそれらの部品を使って製品組み立てをするのは★のタイミングです。

 両社とも★のタイミングぴったりに納入することはできません。そこでどうするか?

 ★より右のタイミングに納入したらこれは遅れですから絶対に許されません。もしそんなことになったら私はすぐにその会社との契約を打ち切ります。

 そこでA社は★の左側の(T1)にもって来ました。遅れたらダメということは、間に合えばいいということです。間に合う=In Time ですね。

 ところが、B社は同じ間に合うでもそれより少し右よりの(T2)のタイミングに持って来ました。

 どちらの会社が私にとってありがたいでしょうか? 

 明らかですね。私はB社を評価します。だってそんなに早く持って来られても意味がないのですから。それどころかいったん倉庫にしまったり、管理したりが増えてしまい大変です。

 同じ左側の間に合うでも★により近い方がありがたいです。当たり前ですね。

 両社とも “ In Time” なのですが、B社のほうが、“Just “ に少し近いということです。

 私は気が小さいですから、なかなか思ったことを口に出せないのですが、一方で単純ですからすぐ顔に出ます。A社に対して、しかめっ面をしていたのに、B社に対してはニコニコ顔になってしまいました。

 そこで慌てたA社は次の納入では(T3)のタイミングに持ってきてくれました。私は更にニコニコ顔です。

 そうすると、そのことに気付いたB社は何と(T4)のタイミングに納入です。両社共に「早くつくり過ぎムダ」の改善が始まったようですね。

 いかがでしょうか、自動車じゃないからではなく、ご自分の業界において少しでも “Just” に近づくだけで良いんですと考えていただけませんか。

 最後に一言、「トヨタ生産方式」は必ずお読みください。既に読んだ方はもう一回読みましょう。この本は改善のテクニックの本ではありません。経営の本です。

 ※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。
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