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柿内幸夫の「社長の現場改善」 54

「コンカレントエンジニアリング

 先日、A県のA社において非常に素晴らしい改善を発見しました。

A社では、新商品の立ち上げが過去になく集中していました。社長は果たしてこの厳しいスケジュールを乗り切れるのだろうかと、とても心配しておられました。

 実は私も心配でしたが、絶対に大丈夫だから頑張ろうと言って、皆で前もってやるべきことのアイデア出しと準備をして、その日は失礼しました。

 そして、先日、二ヶ月ぶりに再びA社を訪問しました。

 恐る恐る「新商品の立ち上げはどうなりましたか」と伺ったところ、社長がニコニコ顔で、「大変にうまく行きました」と教えてくれました。

 ほっと一安心した私は、早速現場に行って新商品を見せてもらいました。

 そこで驚いたのですが、できた商品がこれまでのものと較べてはるかに出来がいいのです。明らかに組み立て易いし、部品の共有化も進んでいます。

 「すごく良いではありませんか! 一体どうやってこれらを作られたのですか?」と聞くと、その答えは、「予想以上に忙しくなってしまい、設計部門がパンクしてしまいました。

 そこでしょうがなく、多少の設計の経験があった人たちを製造部門と購買部門から応援に来てもらったのです」とのことでした。

 その結果、製造出身者は、これまでに感じていた組み立て難さを自分たちが組み立て易いように設計しました。

 また購買出身者は、新商品が出る度に新しい部品がどんどん増えていくことで困っていましたので、この時とばかりに似た部品を共通化しました。

 私はそれを聞いて納得しました。

 これはまさに設計のやり方では最先端といえるコンカレントエンジニアリングではないか!

 設計の段階で、それぞれの人が持っている知恵を織り込めば、後で困ることがなくなるわけです。(コンカレントエンジニアリングはサイマルエンジニアリングとも呼ばれ、Concurrent(コンカレント)とは「同時に発生する」「一致した」という意味)

  嬉しくなった私は、「これはすごい!これからもずーっとこのやり方をしたらいいですね」、と申し上げたのですが、皆さんはこのコンカレントエンジニアリングという言葉は聞いたことがなかったようでポカンとしています。

 それどころか、とても忙しかったので応援に行ってもらったけれど、こんなことは特別で、次からは元に戻しますということでした。

 これは46話の問題解決型と課題達成型の話の中で述べた事例と同じだと思うのですが、危ないところでした。

 私が気付かなかったら、せっかくのこの偉大な進歩があっという間に元のやり方に戻ってしまうところでした。

 私は改めて、今の自動車業界では、どのような切り口で改善をしているかをお話しました。

 どのメーカーも、「リードタイムの短縮」に必死です。

 特に、第一工程である設計におけるリードタイムについては、三次元CAD等を活用したり、試作の回数を減らせるようなソフトを導入したりして、大きな成果を上げていますが、この設計段階で、後工程の人たちが一緒に仕事をして最初から必要なことを織り込んでしまうコンカレントエンジニアリングというやり方も大きな成果を上げています。

 A社の皆さんは納得してくださり、これからの設計をコンカレントでやっていくことに決めました。

 リードタイム短縮の切り口はあらゆる所にあるのです。今回の事例を読んでいただいたことで、何かの発見をしてくださればとても嬉しいです。

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