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柿内幸夫の「社長の現場改善」 46

「問題解決型改善の欠点

 H県のK社で《レベル0》から《レベル1》への改善をしていた時のことです。

 K社では、最終組立工程の中がさらに何工程かに分割されていて、各工程終了ごとに、製品を梱包して次の工程の置き場にに運搬する。そして、次の工程の人が置き場に取りに行ってその梱包を解いて…といった、とても煩雑な作業がおこなわれていました。

 「取り置き」や「運搬」、あるいは、社内での「梱包・開梱」といった付加価値がつかない作業が多く、また、各工程間での停滞がとても多いため、リードタイムが信じられないほど長く、このままでは、これからの厳しい時代を生き抜くことはまず無理といった状況でした。

 そこで、まず考えたことは、複数の工程に分かれている作業を一つに統合すること。

 すなわち、何人もの組立作業者が作業を分割しておこなうのではなく、一人の作業者が「一回掴んだら放さない」というやり方で、最初から最後まで、一つずつ組立てることでした。

 こうすれば、「取り置き」や「運搬」、あるいは「梱包」も一回で済みますので生産性は上がるし、なにより中間での停滞がありませんから、リードタイムが激減します。

 実際にやってみたところ、これまでは作業に着手しても、いつ完成するのかははっきり分からないといった状態であったのが、これからは、30分以内には必ず仕上がるという良い結果がその場で出たのです。

 そこで、私は嬉しくなって、「これで大丈夫ですね、良くなって嬉しいです!」と申し上げたのですが、現場の人たちはけっこう冷めた表情です。

 アレッと思って、どうして喜ばないのかを聞いてみたところ、「このやり方は前から時々やっていますよ」との意外な返事が返ってきました。

 驚いた私は、「一体どんな時に、このやり方で作業をするのですか?」と聞いたところ、「出荷時期が迫っていて、このままではとても間に合わないとなった時だけは仕方なくやる」との返事が返ってきたのです。

 ああ、もったいない、せっかくすごく良い結果が出たにもかかわらず、その良さが分からないままに元に戻してしまうなんて! 

 でも、こういうことはよくあるのです。ナゼでしょうか?

 改善には、「問題解決型」と「課題達成型」の2つがあります。

 両方とも必要なのですが、この会社ではどちらかというと、問題解決型が中心なようです。すなわち、「間に合わないという問題」に対して、こういう方法を見つけて解決できたので、そこで「めでたしめでたし」で終わってしまったのです。

 しかし、問題解決型のみで仕事をしていると前に進めません。下がってしまった位置を元に戻すだけですから。

 もし、このK社が課題解決型で、リードタイムを短縮するという課題があって、常にそれを達成するための方法を考えていたとしましょう。

 そうすると、たとえ偶然であったとしても、リードタイム激減といったすごい結果に遭遇したらば、すぐに、このやり方についての研究が始まったことと思います。

 シアトルマリナーズのイチロー選手があるインタビューの中で、

 「人は悪い結果が出た時にはその原因を分析しますが、良い結果が出た時には喜んでお終いにしてしまうことが多い。しかし、私は良い結果が出たときもその原因を分析します

 と話していたのを読んで、なるほどと感心したことがあります。問題解決型だけではなくて、課題達成型の考え方であるといえるでしょう。

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 今年もあとわずか、来年の課題を明確にする時期ですね。その時に、ぜひとも今回お話した課題達成型のアプローチをさらに強力に織り込んでいただきたいと思います。

 今年一年のご愛読に心より感謝申し上げます。皆さま、どうぞ良いお年をお迎え下さい。

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