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柿内幸夫の「社長の現場改善」 38

「標準書を変える

 前回、「想い出アルバム」という名前の標準作業書を作る話をしました。

 せっかくですから、今回は、作った標準作業書を改訂する時のお話をしたいと思います。

 今日のように変化が激しい時には、私たちは変化に合わせて、自分自身も変えるという努力が求められます。

 すなわち、これまでのやり方が世の中に合わなくなってきたら、すぐにそのやり方を変える必要があるのです。

 標準書は、一回決めたらズーッと守り続けるものではなく、むしろ、その逆で、変え続けるべきものなのです。

 ところが、世の中の多くの人は、なぜかこれと違うことをします。

 例えば、会社においては、誰よりも早く、世の中の変化に合わせて仕事のやり方を変えなくてはいけないはずの管理職の方々が、変えるどころか、むしろ、昔に決めたやり方を守ることに一生懸命になっていることが、多く見受けられます。

 困ったことですが、そういう人が身の回りにたくさんいるのではないですか?

 もちろん、変えることが目的ではありません。世の中の変化に合わせることが目的ですから、場合によっては、変えなくてよいという時は当然あります。

 先日、E県にある金属加工をしているF社において、実際にあった話です。

 F社では、中間工程で熱処理をする必要があります。

 その工程は外注加工なのですが、品種ごとの熱処理の温度基準が大変に細かく、多品種を一緒に熱処理をすることができず、すべて別々に熱処理をしなければならないようになっていました。

 リードタイムを短縮する活動をしているF社では、何とかこの温度基準をもう少し広げて、同じバッチで熱処理をできる品種を増やしたいと考えました。

 しかし、温度基準の変更は、そう簡単にはいきません。

 そもそも、外注の熱処理業者は、処理釜が一杯になる量までモノが貯まらないと加工してくれません。したがって、この問題は社内で解決しなければなりません。

 F社の技術者は、求められている各種の強度検査をおこない。その結果、温度基準を少し広げても全く問題はないという結論に達しました。

 それでも、管理職の方はなかなかOKとは言えません。

 それは、なぜか?

 なぜなら、その温度を決めた人(とっくの昔に退職している)が、なぜそう決めたのかが分からないので、何かあったらどうしようと心配だったのです。

 そこで、私は管理職の方々にこういう話をしました。イギリスの小話です。

 一人の男が、妻の不思議な料理の仕方に前から疑問を持っていました。
 その男の奥さんは、ローストビーフをオーブンに入れて作るときに、必ず両端を切り取るのです。

 「なぜ切り取るんだい?」と聞くと、「お母さんから教わったんだけど、こうすると味が良くなるのよ」という返事でした。

 納得がいかない彼は、近所に住んでいるお母さんの所に行き、その件について尋ねたところ、「それはおばあちゃんからの直伝なの」と言われました。

 おばあちゃんがまだ元気だったので、彼は隣町まで車を飛ばして、おばあちゃんが住んでいるアパートを訪れました。

 そして、「私の妻もお母さんも、おばあちゃんから聞いたと言って、ローストビーフの端を切り取ってオーブンに入れてます。こうすると味が良くなるとおばあちゃんに教わったと言うのですが、本当ですか?」

 それを聞いたおばあちゃんは即座に答えました。

 「昔のオーブンは小さかったから、両端を切らないと、入らなかったのよ」

copyright© saburo

 いかがでしょうか。これに近いことが、実際には多いのではないでしょうか。

 それで、F社はどうなったかというと、熱処理基準の幅を数十種類から数種類へと統合し、その結果、在庫を大幅に減らすことができました。

 この小話をしたから、すぐに変えたというわけではありません。もちろん、しっかりした調査をした上での結果です。

 でも、この小話がかなり効いたことは事実です。

 とにかく、現場の管理職の人たちは、ついつい「失敗したらどうしよう」とか「これまでずっとやってきたことを私が変えていいのだろうか」とか、考えがちです。

 しかし、いったん決めてしまったら最後、もうずっとそのままというのでは、これからの競争についていけないことも確かです。

 この機会に、ご自分の会社がどちらの方に属するか、考えてみてください。

 あともう一つ。

 標準を作るときは、あとで改定するときに困らないように、必要なデーターを付記しておいてくださいね。ちょっとしたことですが、後でとても役に立ちます。

    
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