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柿内幸夫の「社長の現場改善」 19

目標設定の大切さ

 来週、久し振りに中国の工場に行きます。
 先方から、必ずインフルエンザの注射をして来るようにとの指示がありました。

 もし現地で風邪を引くと、SARS(サーズ)との区別がつかないので、下手をすると、10日間、隔離される可能性があるとのことです。

 さっそく、近所のお医者さんに行ったのですが、目の前にある注射器の針を見たら、じつに太くて痛そう。
 そこで、とっさに思いついたのが、岡野工業(東京墨田区)の岡野雅行社長が、苦心の末に完成した「(か)の針の太さの注射針」。

 目の前の女医さんに、「テルモの直径0.4ミリの極細針を使って下さい」と、リクエストしてみました。

 言ってみるもんですね、その針に替えてくれました。さすがです、チクリともせずに、注射は終了。改めて、その針を見ると、まあなんて細いこと。そして、これがプレス加工でできているとは、本当に驚きです!

 岡野社長はテルモの依頼を受けて、1年半をかけてプレス加工の深絞りの技術を駆使して、1枚の鋼材から長さ20ミリ、穴の直径が0.06ミリの注射針をつくりあげました。

 まだ、岡野社長のお話を聴いていない方は、ぜひテープでお聞きください。あるいは、ベストセラーの「俺が、つくる」(中経出版)をお読みください。そして、機会があれば、病院でその極細針を使った注射を受けてみてください。

 さて、本題に入ります。

 前回に引き続き、「在庫削減に関するたとえ話」の3回目です。
 もちろん、下記の話は作り話です。登場人物の奥さんは、現実にはいるはずがないほどのバカな奥さんです。

 しかし、恐ろしいことに、この程度のバカな会社は、たくさんあるのです。

 だから、「こんなバカな奥さんがいるはずはない」ということで、簡単に切って捨てないでください。そうではなく、「わが社は、この奥さんを笑うことができるのだろうか?」「わが社の在庫はいったい何か月分あるのだろうか?」と考えてみてください。

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 あるところに、非常に心配性の奥さんがいました。
 その奥さんの心配事とは、食事の材料のことです。日本国内で消費している食材の多くが海外からの輸入に頼っているので、もし何か問題が起きたら、それらが突然に入ってこなくなるのではないかといつも心配しています。

 そこで、彼女は自分の台所に大きな冷蔵庫を5台も持っていて、そこに肉・魚・野菜をなんと3ヵ月分、常に備蓄しているのです。

 彼女は毎日近所のスーパーに行き、3000円分の肉・魚・野菜を買います。そして、買ってきた食材をすべて冷蔵庫の中にしまいます。その上で、今日の料理には、3ヵ月前に買った古い材料を使うという生活をしています。

 平和な家庭であったのですが、ある日突然に問題が降りかかります。

 高校2年生の息子さんがいるのですが、彼の修学旅行の行き先が変わったのです。それまでは、国内の東京ディズニーランドに行っていたのですが、今年から、アメリカのディズニーワールドに行くことになりました。

 そこで、積み立て金が不足するので、3ヵ月後に20万円を現金で払わなければいけないことになったのです。

 奥さんは困りました。20万円の現金はどこにもありません。

 夜、帰宅したご主人に相談したところ、彼も困ってしまいました。銀行は貸してくれないだろうし、消費者金融から借りると利子がとても高くて返せない。しかし、息子にはなんとしても修学旅行には行かせたい。

 そうこうしているうちに、ご主人が結論を出します。

 在庫を放出しろと言うのです。奥さんはナゼそうすると、20万円の現金が手に入るのかは分かりません。しかし、愛するご主人が言うことなら間違いないと、さっそく、次の日から生活を変えることにしました。

 次の日の午後3時、いつものように買い物に行く時間ですが、今日は行きません。そして、いつもだったらスーパーに支払っている3000円を貯金箱に入れます。その上で3ヵ月前に買った材料を使って料理を作ります。

その次の日も同じです。スーパーには行かないで、3000円を貯金箱に入れます。そして3ヵ月前に買った材料を使って料理を作ります。

そうしているうちに、空になる冷蔵庫が出てきました。空の冷蔵庫を冷やす必要はありませんので、コンセントを抜きます。その瞬間から電気代が下がります。

 ご主人にそのことを報告したところ、もう冷蔵庫はこんなに要らないよというので、リサイクルショップに売りました。その結果、ちょっと収入があっておまけに台所が広くなりました。

 そして、3ヵ月が経ちました。冷蔵庫は4台無くなり、残るは1台のみ、台所はとても広くなりました。

 「そうだ!今日は久し振りにスーパーに買い物に行く日だ」と気づいた奥さんは、スーパーで3000円分の食材を買ってきました。今までのクセで、それらを冷蔵庫に入れようとしましたが、その必要がないことに気がつきました。直接、料理をすれば良いので能率的でした。

できた料理を食べたご主人と子供は、「お母さん、今日の料理はおいしいね!」と誉めてくれました。新鮮な材料を使ったので当然です。

 「電気代は安い」「部屋は広い」「管理が不要で能率が良い」「料理が旨い」と思った時に、貯金箱のことを思い出します。3000円×30日×3ヵ月=27万円が貯まっていました。

 そして、子供に「アメリカ行ってきなさい!」と、20万円渡して、さらに、お父さんに「いつもご苦労様!」と、1万円の臨時お小遣いを渡して、そして自分のへそくりに6万円!

 このお金は、返す必要のないお金です。もし、消費者金融から20万円借りたらどうなっていたでしょうか。

 テレビ広告でおなじみの消費者金融の平均的な実質金利は25%、これで3ヵ月借りたとしたら、返済金額は利息約13,000円を加算されて、約22万3千円にもなります。

 というふうに、わずか20万円であっても、そのつくり方によって、こんなにも違ってくるのです。

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 話は戻って、冒頭でご紹介した岡野工業は、従業員6人で売上6億円を稼ぎ出すスーパー町工場ですが、岡野社長の話を聴いて、目標設定の大切さを肌で感じました。

 しかし、けっして岡野工業みたいにならなければダメだというつもりはありません。著書「最強のモノづくり」で示した6レベルのどこのレベルを目標として、わが社はそのレベルに、いつまでに行くのかを明確に決めること、そして、今すぐ、改善を始めること。これが大事なのです。

 出来ない理由を、一生懸命に言う人はたくさんいます。しかし、出来ない理由を社長が納得しても、コンサルタントがあきらめても、何の意味もありません。やる方法を考えることのみが意味のあることなのです。

 ※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。okada@jmca.net
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