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柿内幸夫の「社長の現場改善」 17

「在庫削減」は銀行の金利分?

 前回、コストを下げるためには、「生産性向上」「在庫削減」の2つを、同時に進める必要があると申し上げました。

 しかし、「生産性向上」には慣れているけれど、どうも「在庫削減」がうまく進まないという会社が多いのが現実です。

 なぜでしょうか? 

 答えは簡単、在庫削減の重要性が、分かっていないからです。
 多くの経営者の方が、この悩みを抱えておられます。「なぜ、うちの社員は、このことを分かってくれないんだろう」と。

 しかし、経営者には当然わかることでも、社員には「コストと在庫の関係」を専門的に説明されても、そう簡単に理解できるものではありません。なにしろ、これまでは、その件についてほとんど聞いたことがないのですから。

 コンサルタントである私としては、何としても、この大切なことを、モノづくりの現場の皆さんに理解していただいて、早急に改善を始めてもらわないと困ります。

 そこで、あの手この手を使って、何とか理解をしてもらおうとしています。そのうちの一つが、「在庫にかかわる、たとえ話」を使っての説明です。
 はじめのうちは、何か子供だましのような気がして、遠慮がちに話していました。

 ところが、意外にも、それらの話が役に立つことがわかってきたのです。そこで、今回から、たとえ話のいくつかをご紹介させて頂きます。

 ある会社のA課長さんが、部下と話をしていた時のことです。
 部下の一人が、A課長に「在庫を減らしたら、何が儲かるのですか」と質問しました。

 このような、極めて基本的なことでも、意外と曖昧な理解がされている場合が多いのです。すると、そのA課長が答えて曰く、「銀行の利息分、儲かるよ」。

 もしそうだとすると、現在の銀行借入の利息はとても低いので、一生懸命に在庫を減らしても、その割には儲からない計算になります。「在庫削減といっても、たいしたことない」という雰囲気になりました。

 経営者の方が聞いたら、その場で血管がぶち切れるような会話です。

 「在庫削減が利息分の低減にしか効かないとは何事か。俺がフリーキャッシュフロー(余剰資金)を増やそうとして、どれだけ苦労しているか、いつも話しているだろうが!」と、怒鳴り声が聞こえてきそうです。

 そこで私はこんな「たとえ話」をしました。

 「実は一年前に、私(柿内)はA課長から一年後に返しますと言って10万円を借りました(もちろん架空の話)。そして、今日が返す約束の日。

 A課長は昨夜、奥様に「柿内から10万円が返って来るから、来月は温泉に行こう」と約束をしました。しかし、当の私は、そのお金を返す気がまったくない。
 ただ、そう言ったらまずいので、「利息はお払いしますからね」と言って、現在の銀行の定期預金の利息分(0.01%)に当たる10円を払って勘弁してもらおうとしました。

 当然、A課長は怒って、突然、私の首を絞め始めます。

 さあ大変、この時、皆さんは私とA課長のどちらの味方をされますか? 

 A課長に対して、「課長、大人気(おとなげ)ないことをしないで下さい、柿内は利息を払うと言ってるんですから、勘弁してやるべきです」と言いますか? 

 それとも、私に対して、「柿内よ、借りたお金は返すものだ、すぐに10万円を工面しなさい!」と言いますか? 

 さて、私とA課長のどちらが正しいのでしょうか。

 もちろん、A課長が正しいです。
 借りたお金は、返さなければいけないものです。しかしここで、「在庫を減らすと、何が儲かるのか」という部下の質問に対する、「利息分かな」と言ったA課長の答えは、お金を返そうとしない私の言い分と同じだということにお気づきでしょうか。

 A課長が言った「在庫を減らすと、利息分が儲かる」という答えは、間違っているのです

 さらに私は、10万円というお金をもし現金で会社の金庫にためようとしたら、どれだけの苦労が必要か、A課長に話します。

 まず、会社が利益を出していたとすると、その10万円には約50%の税金がかかりますから、その倍の「20万円」を儲けなければなりません。そのためには、売上高利益率が2%とすると、その50倍の「1000万円」の売上が必要です。

 しかも、その1000万円の売上を上げるのに販促費を使うと、儲けとして10万円が残らないので、一切の販売経費をかけることができません。
 すなわち、自分の休日を使って、お弁当を持って、自転車を使って、すべてを自腹で売らなければなりません。
なおかつ、その1000万の売上金を販売先からすべて回収しなければなりません。

 そして最後に、私からA課長に質問します。
 
「あなたは、現金10万円を会社の金庫に残すことが出来ますか?」

 考えてみてください。
 もしここで、10万円分の在庫を減らすことができれば、この貴重なフリーキャッシュフロー(余剰資金)が、即座に手に入るのです。

 ここまで話すと、少しずつ、経営において在庫削減がいかに大切なことかが、分かったような気になってきます。しかし、本当に分かってもらうには、まだまだ時間がかかります。

 「造れば売れた」「銀行に頼めば、不動産を担保にお金が借りられた」といった、バブルの時代の幻想を、未だに引きずっていては困ります。

 お金に関する考え方は、その頃とはまったく違います。
 経営者は資金繰りをしていますから、このようなことは、分かって当たり前なのですが、一般の社員の方には、これがなかなか分からない。

 「利息分しか儲からないなら、在庫はそんなに減らさなくてもいいかな」などと考えてしまうのです。そんな考えでは、会社はつぶれてしまいます。

 ですから、少しでも多くの方に、在庫削減の重要性を理解してもらいたいと思います。

 

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