.
柿内幸夫の「社長の現場改善」 13

成果をあげるために必要な考え方

 今回は、5Sなどを実行して、成果をあげるために必要な考え方について説明したいと思います。

 実際のところ、私が現場に出てコンサルティングを行なっている場合でも、なかなか実行に移さないで、ぐずぐずと後回しにしてしまう人が見受けられます。

 このように、面と向かってのコンサルティングでもそうなのですから、ましてや、私が書いた文章を通じてのコミュニケーションでは、私の言うことが、本当にきちんと理解してもらっているかどうか、とても気になるところです。
 つまり、文章を読んだだけで終わってしまうことが多いのではないかと危惧します。

 そもそも、整理・整頓という言葉は、誰でも知っている言葉です。
 そこで「ああ、知ってる知ってる、やったことある」と判断して、そのまま何の行動にも移さないで終わってしまうかもしれません。

 しかし、第6話のM社長の体験談にあるように、やはりやってみないとその本質は分からないものです。

 下の写真は、飲んで半分に減ってしまったウィスキーグラスです。
 この写真を見て、あなたは何を思いますか。

 これはよく心理学的内容の本に出てくる話ですが、なくなった部分に着目して「もう半分しか残っていない」という人は悲観的な人で、「まだ半分残っている」という人は楽観的だという説明がされています。

 私は、この絵をこう解釈します。

 上半分のなくなった部分を話す人は、「できない理由を説明する人」。
 そして、下半分の残った部分を話す人は、「やる方法を考える人」なのです。

 できない理由をしっかりと説明して、社長とコンサルタントを納得させることができたとしても、会社経営には何の意味もありません。時間のムダです。

 ところが、実際には、こういう人が実に多い。ナゼこんなに多いのだろうと不思議に思っていたのですが、最近その理由を一つ思いつきました。

 よく日本の教育は、詰め込み式で良くないと言われますが、私もその意見に賛成です。

 日本の学校教育は、ペーパーテストの点数で最終的な評価をします。だから、試験の前日に、試験に出そうなことを徹底して詰め込んで、いい点数が取れれば、あとは忘れてもかまわないということになります。

 さらに、この場合の試験には、必ず答えが用意されています。そして、試験中に試験官が「よーく考えるのだぞ」と言っていましたが、実際やっていることは、覚えたことを思い出していただけです。

 でも当時は、それが考えることだと思い込んでいました。そのレベルの「考える」が、今でも見受けられます。

 とくに、学校で成績が良かった人にです。

 たとえば、現場改善の宿題を出した場合、できない理由を言う人はすべて、考えているのではなく、思い出そうとしています。

 自分の記憶の中にない場合は、「そんな経験のないことをして、失敗したらどうする」とか「成功するという保証はあるのか」などと言って、現場の前向きな若手の行動に水を差します。

 そういう人が、私のセミナーに参加したとしても、「知っていることは知っていた」ということで安心してしまい、なんの疑問ももたず、実行責任も感じないから質問もしないことでしょう。

 では、そういう人は何を聞いているのかというと、「自分が知らないことがあったら覚えて帰ろう」という、昔ながらの受験勉強をしています。

 ですから、現場改善の場で、そういう方々が「考えておきます」などと言っても、私は決して信用しません。

 つい「何を考えるのですか? まさか、やるかどうかを考えるなんてことはないですよね。何をするかは決めましたから、あとは考えるより、目と手と足を動かすことだけでいいんじゃないですか」などと、思わず言ってしまいます。
 さすがに、後で「あの言い方はちょっと、いやみだったなあ」とひとりで反省してへこんでしまうことがありますが…。

 ところで、IBM社の社是が、“Think:考える”だというのはご存知でしょうか。

 しかし、この場合の「考える」は思い出すでも覚えるでもなく、次のような意味が与えられているのだそうです。

 まず、マーケットを見る。そして、その上で何をするかの仮説を立てる
 しかし、ひとりで立てた仮説では間違ったり抜けがありますから、人に話してみて批判を受けて、その上で完成させる。そして最後は、即実行です。

 いかがでしょうか。

 「考える」といっても、腕を組んで口で勝負するのではなく、常に手足が動くのです。今のこの厳しい時代において、過去の経験・知識だけで勝負しようなどと考えては、絶対生き残れません。

 生き残るには、まだどの教科書にも出ていない自分だけの問題を作り、実行して、その結果を解答欄に記入します。そして、うまく行ったら、それを答えのページに書き写すのです。

 そういう意味で、この私の連載を知識を得るための教科書ととらえずに、行動のためのワークブックとして読んでいただければ、何より嬉しいです。

 ですから、ご質問がありましたら、どうぞ遠慮なく、どしどし下記にお寄せください。お待ちしております。

 

 ※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。okada@jmca.net
出版局トップにもどる
日本経営合理化協会 出版局 TEL:03-3293-0041