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柿内幸夫の「社長の現場改善」 10号

我々のモノづくりのレベルが下がった?

 二回にわたって、サプライチェインの考え方をご説明いたしました。
 これは、今回説明する「社長のための整頓」の前提となる考え方です。

 日本の製造業は、その品質とコストの競争力において、世界を長年にわたってリードして来ました。ところがここに来て、その神話に陰りが出てきたと言われています。

 品質面においては、ライバルとされる国々も、研究を重ねたためか、商品によっては、機能品質で日本製の商品と較べて遜色ないレベルにまで上がって来ています。

 また、中国のようなコスト競争力のある国の台頭により、コスト面ではかなわない事態も多く見られます。

 我々のモノづくりレベルが下がったのでしょうか?

  私はそうは思いません。一言でいうと、他のライバル国のモノづくりのレベルが上がってきたにもかかわらず、我々のモノづくりのレベルがあまり向上していないという言い方のほうが正しいと思います。

 少し時代をさかのぼって考えてみます。

 戦後間もない頃のメードインジャパンの商品は、「安かろう悪かろう」の代名詞であったといわれています。「安い」は、当時の為替を考えれば当然です。しかし、「悪い」は困ったことであったはずです。

 その時に、アメリカからすばらしい人が来日されました。アメリカ人の品質管理の学者であるジュラン博士デミング博士の二人です。

 ジュラン博士は管理図の考え方を、デミング博士はマネージメントサイクル(P-D-C-Aサイクル)の考え方を中心に、日本のモノづくりに対して精力的な指導をして下さいました。

 そのときの日本人の受講者は、経営者や技術者が中心でしたが、カラカラに乾いたタオルがすごい勢いで水を吸収するように猛烈に勉強をしたのです。その結果、日本の製造業が、世界のモノづくりを牽引するレベルにまで発展したことは周知の通りです。

 デミング博士は、その時の日本人の真摯な努力に感動し、出版された本の印税を寄付してくださり、それがベースとなってデミング賞が制定されました。それほどに当時の日本人は頑張っていたのです。

 さて、時間を今に戻します。

 現代の私たちは、その当時のような必死の勉強をしているといえるでしょうか。あるいは、この厳しい時代に、再び競争力を取り戻すためには、どの分野で当時のような真摯な努力をすればいいのか分かっているでしょうか。

 モノづくりの要素として、Q(品質)C(コスト)D(納期)の3つがあります。
 「Q」と「」Cは、世界的にもかなり成熟した分野です。しかし、「D」については、まだまだ充分に手がついているとはいえません。

 ただ単に、在庫を持ってお客様の要求に間に合わせるというだけなら充分にできているかもしれませんが、在庫を前提としないで、Dを達成するとなると、この分野での改善余地は無限です。

 著書「最強のモノづくり」で提案している「レベル6」は、この考え方を設計にまで拡大して、設計も含めて納期を徹底短縮する「一気通貫」という言葉で、我々が打ち込むべき新しいテーマを提案しています。

 このための第一歩が、「社長のための整頓」です。その内容を示した図を最後に載せておきます。これから、一緒に考えていきましょう。

『最強のモノづくり』159ページ 第23表 社長のための目で見る整頓
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