柿内幸夫の「社長の現場改善」 04号

工場が真っ赤に染まる

今回は、なぜ「5S」が、現状の正確な把握に役立つのかを説明いたします。

多くの方が、これまでに発想法として「ブレインストーミング」と「KJ法」を使ったことがあると思います。

 「ブレインストーミング」とは、まずテーマを設定して、それに関して、たくさんのアイデアを出します。 例えば、「100」といった非常に大きい数を決めます。その時のルールは二つのみ。

 一つは、とにかく100という決めた数のアイデアを必ず出すということ。内容のレベルはまったく問いません。人の言葉尻をとらえようが、ダジャレであろうが、100出すこと。
 もう一つは、人の言ったアイデアに対して、一切の批判は禁止。
 例えば、「それってさっき出たじゃん」ということだって批判です。

 次に、「KJ法」では、出した100のアイデアを互いの関連性を見ながらグループにまとめて、それぞれのグループに、表札を付けて、その後グループ間の関連性を検討します。

 この二つの過程を通じて、最初は一見何の関連性もなかった意見の間から、フッと本質的なアイデアが生まれるというものです。

 大企業の研修などでは、この二つがいろいろな場面で使われるのですが、たいていがインチキです。100出すから意味があるのに、30くらいでアイデアが詰まると、「まあ、こんなもんかな」と言って、やめてしまうのがほとんどです。

 本当は、それから先が大切なのに、誰も脳みそ(ブレイン)に嵐(ストーム)を起こさずに、常識の範囲で考えるのをやめてしまう。
 そんなレベルでやるから、良い発想が出たためしがない。ブレインストーミングは、みんなの意見をいちおう公平に聞く手段だくらいに考えているのです。
 そして、低いレベルのたった30のアイデアでは、KJ法で関連性を見ながらグループにまとめて検討しても、あまり意味がありません。

 さて、肝心の「5S」に戻ります。

 じつは、私がやる整理は、この二つの発想法の現場版だと思っています。 
 詳しいやり方は、「最強のモノづくり」の140ページに書いたように、参加者全員が、赤い札を50枚ずつ持って現場に行き、全員が50枚すべて貼ることにします。

 張っていくうちに、使わないモノが見つからなくなる。しかし、貼り切らないと終わらないから、引き出しを開け、工具箱を開け、機械の下を覗く。
 このようにして、すべての赤札を貼り切るのです。

 これで、全員が普段は見ない工場の文字通り隅々にまで目を配る。このプロセスは、口の代わりに目と手足を使うブレインストーミングといえるでしょう。

 そして、その赤札を貼られたすべてのモノを不要品不急品要品の3つに分類する。これも、身体を使ったKJ法といえるのではないでしょうか。

 このようにして、普段は見ないレベルで、工場の隅々に目をやり、そして、発想法の手順に従って、モノを動かす過程で、参加者すべてが、現場の現状把握を正確に行い、その上で、それをどのように変えていったら良いかの発想を得ることになるのです。

 ところで、私の赤札活動は、想像以上に細かく厳しいものです。

 例えば、一箱に同じ部品が10個入っていて、そのうちの2個を今月使うとしましょう。
 そうすると、ほとんどの人が、これは今月使うモノが入っている箱ということで、札を貼らないのですが、私は箱に興味があるのではなく、部品に興味があるのですから、残り8個は使わないモノという判断をします。
 ですから、その箱に赤札を貼ります。

 そして、厳しいということは、とにかく、すべての赤札を貼り切らないと、その活動を終えないということです。

 写真は、前回ご紹介した、A社の赤札活動です。

  いかがでしょうか、工場が真っ赤に染まっているのがお分かりになりますか。

 この活動は社長、役員、管理職、一般従業員、そして、私の全員で行いました。

  これが、「悪魔のサイクル」から抜け出して、「天使のサイクル」に入ったA社の活動の第一歩であったのです。

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