柿内幸夫の「社長の現場改善」 02号

将来の製造業に関する私の予測

 私は、製造業の将来に対して、かなり明るい状況を頭に描いています。

 そこでは、5年後に、日本が再生しているのです。復活した日本の製造業が、再び日本の経済を引っ張っているというものなのです。

 この話をすると、皆さん、とても嬉しそうな顔をします。そして、「柿内、お前はいつも楽観的でいいねえ」といった表情を浮かべます。
 しかし、私がこの話の続きをすると、皆さんの表情から笑いが消えます。

 私は、5年後、日本の製造業が復活しているとは言ったものの、その時に生存している製造業の数は、何と今の半分、その間に、残念ながら、半分の会社がなくなっていると思っているのです。私の話は、決して楽観的なものではありません。

 理由は簡単です。

 私は、現在の厳しい状況の中で、製造業がどのように生き残り、どのように勝ち進めば良いかというイメージを持っているのですが、その内容は、極めて厳しく、困難なものであるのです。

 ですから、現在の製造業のすべてが、その試練に対して、しっかりと覚悟を決めて立ち向かえるとはとても思えない。きっと、半分くらいの会社は、なんだかんだと言い訳をして、改善活動の実行を先延ばしにしてしまい、結局は、時代の流れに押し流されてしまうのではないかと思っています。
 だから、半分しか生き残れないだろうと考えるのです。

 しかし、生き残った半分の製造業は、死に物狂いの努力の結果、自分の会社の姿を、5年前のそれとは、まったく違った形に変えています。
 そして、日本の製造業が全世界において、再び大きな力を持つようになり、その結果、日本の経済も復活しているのです。

 生き残り組の人々は、口々にこう言います。

 「本当に、大変な5年間だったな。だけど、俺たちは、けっして抽選で選ばれたわけじゃない、死ぬほど努力した結果だもんな。5年前と較べれば、造り方も、設計も、購買も、そして、営業の仕方も全然違うやり方にしちゃったもんな。そして、何より俺たち自身が、まったく違ったレベルの人間に変身したからな!」

 世界の人々も、日本の製造業復活に、称賛を惜しみません。「驚いた。日本の製造業は、すべて中国の製造業に凌駕されてしまうのかと思っていたが、とんでもない、またすごい力で、世界のモノづくりを引っ張る立場になった!」

 本当に厳しい時代です。
 以前は、日本が強いレベルを誇っていた「品質」も、海外の製造業の努力もあって、昔ほどの大きな特色ではなくなっています。
 また、中国のように人件費等の面で圧倒的な力を持った国の台頭で、コスト競争力が失われています。今のままでは、日本の製造業は、どんどんと働く場を海外の製造業に取られてしまいます。

 ではどうすればいいのでしょう? 

 心配していれば、いつかは何とかなるのでしょうか。
 何ともならないと思います。
 そうではなくて、まず生き抜くためには、自分の会社がどうなっていることが必要なのか、モノづくりをどのように変えていったら良いのか、ということを一生懸命に考え、その上で、実現のための方法を編み出して実行することでしょう。

 私が考える答を、お話しいたします。

 私はそれを「一気通貫」と呼んで、「最強のモノづくり」という本のメインテーマとして、強調しているのです。
 それは、モノづくりがマーケット、設計、購買等々、関わるすべてと、きわめて短い時間でつながっている状態を達成することです。

 その姿を、もう少し具体的にお話しします。

 お客様が希望を口に出したら、それがあっという間に設計部門に伝わり、設計が行われ、その情報が同時に製造にも伝わり、工程が出来上がります。同じことが協力メーカーにも伝わり、即座に準備が始まって、生産が極めて短時間のうちに実行されます。

 協力メーカーは、ラインサイドの状況と組立の方法をすべて知っており、最初の段階から最終の荷姿をイメージして検討を始めますから、一切のモノの移し替えがなく、作業時には、一切の持ち替えがない、一番やりやすい形での納入を実行します。これらのすべてが、一瞬のうちに実行されます。

 また、このプロセスには、管理というものがありません。私たちは、管理という言葉に慣れてしまっていて、仕事を進めるには、必ず管理というものがついて回るものと思い込んでいる節がありますが、これは間違い。

 管理というものは、付加価値を生みません、無しで済むなら、それに越したことはありません。品質管理は不良が出るから要るのであって、造るものすべてが良品であるのなら、不要です。生産管理も、受けた注文をそのまま、生産ラインで製造できる仕組みがあるのであれば、これまた不要です。

 しかし、そんなこと出来るのか? あるいは、それが出来ている会社があるのか? という質問もたくさん受けます。

 これは永遠の課題です。終わりはありませんし、すでに完成してしまったという例もありません。しかし、実際に国際的な競争力を評価されている企業のほとんどが、この方向で頑張っていることには疑いがありません。きわめて、難しい課題です。

 でも、難しいから意味があります。あとでやるから、そこに置いといて、といった時間調整のレベルで、何とかなるような仕事では、この難局は、絶対に乗り切れません。

 次回より、これらの目標に向かって必死に頑張っている企業の実例を使って、具体的な進め方をお話したいと思います。

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