小さくても『強い会社』にする経営24法則 16号

法則16 設備投資に適切な基準を持て!

 銀行等第三者の入れ知恵で、借金をして設備投資をしてみたものの、思ったほど収益が上がらず、借金の返済に苦しんでいる経営者は実に多いものです。業績が回復板にもかかわらず、資金的に苦しんでいるのです。

<法則16 設備投資に適切な基準を持て!>

 設備投資をしていいものか経営者は常に悩むものだ。
 設備投資に必要な資金を営業活動によるキャッシュフローでまかなうことができれば、これほど安心なことはない。

 よくいわれている言葉に、「設備投資は、償却前利益の範囲で行うべし」というものがある。その意味を次の損益計算書で確認しておこう。

 もちろんこの利益20は減価償却実施後の利益である。したがって償却前利益とは、

売上100―売上原価60―費用(支出を伴うもの)15=25、
または税引前利益20+減価償却費5=25となる。

つまり、通常の利益=キャッシュではないため、キャッシュを表す償却前利益を算定することになる。そしてこの範囲で設備投資を行えば、キャッシュフローは安泰ということになる。しかし、これはいわゆる現金商売の場合にのみ当てはまる。

 次の損益計算書で考えてみよう。

 
 


 もちろんこの利益20も減価償却実施後の利益である。したがって償却前利益は、売上100―売上原価60―費用(支出を伴うもの)15=25となる。この場合、本当に25のキャッシュがあるのだろうか。

現金収入90―現金支出(60+15)=15 

これが現金の残高になる。つまり、現金商売をしていない場合、償却前利益=現金ではなく、売上債権や仕入債務等の債権債務の調整をする必要がある。

 それがキャッシュフロー計算書(間接法)で算定された営業活動によるキャッシュフローである。


 では、営業活動によるキャッシュフローの範囲で設備投資をしても本当にいいものなのか。設備投資をしても、業績が向上しないことは多々ある。となれば、せっかくの営業活動によるキャッシュフローは水の泡となってしまう。

 だから、多くの場合、設備投資に見合うキャッシュフローがたとえあっても、借金をして設備投資を行う。もちろん、中小企業の場合は、設備投資に見合うキャッシュフローは通常ないため、借金をすることになる。

 さて、問題は、設備投資のために借金をしていいかどうかの判断基準を持たないことにある。

 設備投資をしても、今以上に営業活動によるキャッシュフローが増加するとは限らない。多くの会社が、バブル崩壊後、これで苦しんだ。だから、次のような設備投資を行う際の基準が必要になる。

 営業活動によるキャッシュフローの金額から財務活動によるキャッシュフローのうち、借入金返済金額および株主配当金を控除した金額の差額がプラスであり、かつその差額の範囲内で新規投資のための新規借入の返済を行えると判断できるとき、初めて新規投資に関する新規借入が可能になる。

 こうすれば、仮に設備投資が収入増加に結びつかなくても最悪の事態は免れる。

 ところで銀行はキャッシュフロー計算書の何を見るかを知っておかなければ意味がない。ここでは非常に単純に考えることにする。

 銀行の関心事は、貸したお金が返ってくるかしかない。であればキャッシュフロー計算書は次のように見る。

 キャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュフローと財務活動によるキャッシュフローの中の借入金返済に着目し、そこをピックアップして見る。

 右表の簡略化したキャッシュフロー計算書の差し引きの金額がプラスになっているかどうかがまず最初の判断箇所となり、かつ、ここが最大のポイントとなる。

 よく、営業活動によるキャッシュフローが黒字にしなければならないといわれているが、黒字をいくらにしなければいけないのかを知らなければならない。

 簡単である。右表、差し引きの金額がプラスになるような営業活動によるキャッシュフローが必要となる。大がかりな設備投資をしないことを前提とすると、毎月の営業活動によるキャッシュフローで毎月の借入金返済額が充当できればいい。これが当面の借入による設備投資の目安だ。

 このように考えると銀行はキャッシュフロー計算書を要求してくることは容易に理解できると思う。


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銀行が決算書と最近まで試算表を提出してほしいといってきた時代は終わったといっていいと考えた方がいいでしょう。

今後銀行は間違いなく実績キャッシュフロー計算書だけでなく、予想キャッシュフローを必ず要求してくるはずです。

そのような時、実績キャッシュフローすら作成できない、またはたとえ作成してもパソコンのソフトを活用し、本当に作成の仕方がわかっていないと予想のキャッシュフローは出てきません。銀行が要求してくるということは、会社経営において必要な資料であることを認識すべきです。

銀行は最近になってとくに貸借対照表のことを聞いてきているはずです。

これも損益計算書から貸借対照表へ。貸借対照表からキャッシュフローへの転換期の現れといえます。



日本キャッシュフロー協会 (JCFA)
代表 海生裕明(公認会計士)

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