小さくても『強い会社』にする経営24法則 03号

法則3 数字に強く・明るくあれ!

 まずは、ある弁護士と会社経営者の会話をお聞きください。

経営者「先生、もうだめです。どうしたらいいんでしょうか」

弁護士「で、どうしたいんですか?」

経営者「・・・・」

弁護士「どうしたいのかわからないんですか?」

経営者「ええ、いえ、会社を立て直したいと・・・」

弁護士「本当にそう思っているのですか?」

経営者「できればそうしたいと・・・」

弁護士「そんな考えなら、さっさと整理した方がいいのではないですか」

経営者「いえ、整理は考えていません」

弁護士「と言うことは、このまま続けるという言うことなんですね?」

経営者「ええ」

弁護士「わかりました。ではこれから質問をしますから、ちゃんと質問に応えてください」

そう言って弁護士は経営者に対して矢のような質問を浴びせ始めました。

弁護士「まず、最近の貸借対照表の数値から伺います」

経営者「最近と言うのは、いつの・・・」

弁護士「今は月の半ばだから先月末の数字でいいですよ」

経営者「正確な数字は」

弁護士「わからないんですか。よくそれで経営者って言えますね」

経営者「・・・」

弁護士「まあ、いいでしょう」


<法則3 数字に強く・明るくあれ!>

弁護士の質問内容を一部、抜粋してみよう。

 総資産はいくらか?負債の総額は?純資産はいくらか?負債にはどんなものがあるか?その金額はいくらか?変な債権者はいないか?今言った以外に負債は本当にないのか?保証はしていないか?支払が差し迫っている負債は?資産のうち回収可能なものは?

 弁護士から貸借対照表の質問が次々と来るため、通常の経営者はしどろもどろ状態となってしまう。弁護士は経営者から聞いた内容をホワイトボードに書き、貸借対照表を作っていく。

 この会社、当座預金がなく手形・小切手の振出がない。つまり、倒産したくてもできない会社だ。死ぬ気になれば、買掛金や未払金の支払の延期をお願いできるだろう。

 もちろん税金や社会保険の未払い等、債権者が官公庁である場合、差押の心配をしなければならない。最近では、特に社会保険庁の取立が厳しくなっている。このため預金口座をもうひとつ開設をしておき、預金差押の回避を最低限しておくことだ。






 略式貸借対照表を作成する場合、資産は回収可能性と回収時期を、負債は支払時期と簿外の有無を重視すればいい。その結果がこの貸借対照表だ。一般に言う経営分析をすれば、この会社は債務超過に陥っており既に死んでいる会社と評価されてしまう。しかしこのような時、経営分析など何の役にも立たないものだ。

だから弁護士はこの状態でも大丈夫と言い切る。

問題はキャッシュフローがどうなっているかですね

 弁護士は次に毎月のキャッシュフローを経営者に問いかける。たとえ貸借対照表が債務超過であってもキャッシュフローがあれば何とかなることは誰でもわかる。この会社の毎月のキャッシュイン、つまり営業収益は約8,000万円程度、経費のキャッシュアウトも約8,000万円程度。毎月のキャッシュフローでは未払金や借入金、つまり過去のツケの返済資金を捻出できない。ここからが本当の勝負だ。弁護士は売上債権の回収に焦点を絞った。

 弁護士「毎月のキャッシュイン8,000万円に売上債権の回収は入っていますか」経営者「もちろんです」弁護士「その回収金額を含めて毎月のキャッシュインが8,000万円なんですか」経営者「毎月の売上が大体8,000万円ですから」弁護士「と言うことは、売上債権の回収金額はキャッシュインに入っていないじゃないですか」

 損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)そしてキャッシュフロー計算書(C/F)の関係が瞬時にわからない経営者に多く見られる現象だ。

キャッシュフロー計算書のキャッシュイン、つまり営業収入は次のような図を書くとよく理解できる。しかし、これは簿記の知識が必要となってくるのでここはがんばってほしい。





 


 売上が8,000万円でも、未回収分5,000万円のうちいくらかの回収により、営業収入、つまりキャッシュインは11,000万円となる。先ほどの経営者の言った8,000万円と明らかに違ってくる。

 実はこの弁護士、RCC(整理回収機構)の委員である。もちろん、会社の数字に強くなければならないポジションにいることは確かだ。それにしても数字のつぼをしっかりと押さえている。

 「弁護士と言えども、数字がわからないと話にならないことに気づき、かなり前になりますが独学で簿記の勉強をしたんですよ。そりゃ、会計士にはかないませんがね。経営者も当然、簿記の勉強をしているものだと思っていましたが、結構、勉強せずに決算書を読んでいるんですね。簿記の構造がわからないと決算書は読めないことを知っているんですかねって言いたい時がよくあります」

 この弁護士の言うように簿記の知識がなければ決算書を読むことはできない。長年、決算書を見ていると読めた気になる人がいるがこれは錯覚だ。B/S,P/L,C/Fの流れがわからなければ決算書が読めるとは言えない。

 たとえば、キャッシュフロー計算書の営業収入がどのような計算過程を経て算定されたかなどは、B/S,P/L,C/Fの流れの典型例だ。数字に強い社長は簿記を勉強しているだけでなく、先ほどのB/S,P/L,C/Fの流れを図で考えているからすごい。だから判断が素早い。

※B/S,P/L,C/Fの関係の理解のため、少し計算をしてみよう。

損益計算書の売上高が50,000とした場合・・・

≪ケース1≫ 期首売上債権が2,500、期末売上債権が10,000の時、営業収入の金額はいくらになるか

≪ケース2≫ 期首売上債権が8,000、期末売上債権が2,000の時、営業収入の金額はいくらになるか

回答は次のとおりとなる。

≪ケース1≫ 42,500   ≪ケース2≫ 56,000



すぐに計算できただろうか。
 倒産した会社の多くは、経営者が数字に弱く、また経理を軽視していることが多いのです

 数字に強いと言われている社長の秘密は、第1回目でのお話いたしましたように、意外と素朴なものなのかもしれませんね。(談)



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代表 海生裕明(公認会計士)

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