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板垣宏征の「見えない・からだ学」 72

「予防のココロ 〜自殺と老衰〜

 「予防のココロ」シリーズ第10回目。今回、取り上げたいのは、日本人死因の第10位の「自殺」と12位の「老衰」です。

 2005年の1年間で、自殺で亡くなった方は30,539人、一方、老衰で大往生を遂げた方の数は26,336人です。

 全死因に占める割合で見ると、自殺が2.8%、老衰は2.4%となります。老衰で亡くなる人の数より、自殺の数の方が多いのがこの国の現実です。さみしいですね。

 みなさん、何となく、「自分は老衰で、家族に看取られながら死ぬもんだ」という、淡い期待を持っていませんか。でも、その確率たるや、100人いたら3人いかないんですよ。

 だから、大往生を遂げようと思ったら、けっこう気合が要るんです。そう、「わしは、PPKで死ぬぞ!」(PPK=ピンピンコロリ)という明確な意志とVISIONが必要です。

 健康に死ぬということを目標に、その終着点をもとに人生設計ができたら、ちょっといい人生を送れるでしょうね。

 ところで、歴史学者・国際政治学者の斉藤孝さんが、どこかに書いていらっしゃいましたが、進化論を提唱したダーウィンは、その著書『種の起源』が持つあまりのセンセーショナルさから、本を仕上げてから出版まで、なんと20年も待ったそうです。

 教会その他、当時の風当たりを避けるためとは言え、自分の生涯をかけた研究内容を20年も未公表にするとは!自分の業績をすぐに発表したがる現代人には、決して真似のできない芸当ですね。

 それはさておき、斉藤孝さんがそのダーウィンの姿勢について指摘されているのは、「ダーウィンは自分の人生を晩年の方から見渡せた人である」ということです。

 この表現に私は、思わず「あ!」と声を漏らしてしまいました。

 なるほど、自分の人生を、その終着点から見渡す「目」を持てる人というのは、天才の共通点かも知れない。

 イチローは、40歳代になっても、いかに一流プレーヤーとして活躍できるかを想定しながら、今プレーしているそうです。

 たまたま知り合いからイチローの小学校6年生の時の作文というのを読ませてもらったことがあるのですが、小学校6年生の時から、

 『僕はプロ野球選手になります。プロ野球では、こういう活躍をします。そのために高校はここへ行きます。だからいま、これだけの練習をします』

 と、「ほんとうに6年生なのか?」と疑うような人生設計が出来ていたのに驚きました。

 このように、イチローは将来の自分のあるべきイメージを見越し、その将来の自分の視点に立って、今、自分のやるべきことを位置づけていたのです。つまり、未来と今とがしっかりつながっている。

 そして、これはイチローだけではありません。世の天才経営者、カリスマ起業家などにも、自分の仕事についての明確なビジョンがあり、彼らはそのビジョンの実現が10年後の未来であれば、そこから逆算して、“では5年後はどうありたいか?” “3年後は? 1年後は?”“半年後、1ヵ月後、明日は?” と、どんどん現在の方に倒してきて、「今」の行動につなげていきます。

夢やビジョンも、今としっかりとつながりさえすれば、これはもう、りっぱな事業計画です。「みなに惜しまれながら、健康に、死のう!」 

 一流プロスポーツ選手や一流経営者などにならずとも、この人生最後の、誰もが迎える「死」のあり方を明確にして、そこから自分の人生を見通せたら?健康という側面で、しっかり今の行動計画まで落とし込めたら?

 なかなか、そううまく行かないのが人生の味噌であるのかも知れませんが、健康面において人生の最後から今を見渡せる目を持てる人は、とても色鮮やかで彩りのある人生を送れるに違いありません。

 ところで、先日、わたしの知り合いの息子さんがバイク事故で亡くなりました。

 30代半ばの人生でした。彼の死を惜しむ友人達が、親御さんがびっくりするくらい大勢集まり、口々に彼の生前の思い出を語りあい、葬儀が終わっても、なかなか帰ろうとしなかったそうです。

 その話を聞いて、わたしはこう思いました。人生の充実度を決めるのは「どれだけ、人の記憶に残るか」なのではないか。

 お金を貯めても、知識を貯めても、自分の内側でいくら色んな思いを貯めても、「あいつはどんな人だった」という記憶にはかなわない。

 他人の脳裏にどれだけ爽やかなものを残せるか。あの笑顔、あの歌声、あの物腰、あの姿勢・・・。

 この息子さんの人生は、もちろんあまりに早すぎた人生だったのですけれど、彼にとって、死ぬ間際、俺はここにこう生きた、と言える人生だったとしたら、それはとてもカッコいいし、その意味では、十分生きたということになるのでしょう。

 誰にでも訪れる「死」。想像したくはないが、あえて、その地点に立ち、そこから自分の人生を逆に見ることをやってみる。

 日本は先進諸国の中で、上位の自殺大国になっています。年間30,539人ということは、1日に84人ペースで、自らの命を絶つ人がいるということです。

 人生で一度も自殺を考えないという人の方がまれでしょう。だれもが、一度や二度は「もう死んじゃいたいな」と思った経験はあると思います。

 でも、そう思うのと実行に移すのとでは、そこには雲泥の差があります。また、10代のそれ、20代のそれ、30代、40代、50代でのそれには意味合いや事情がまったく違うものになっているはずです。

 壁にぶつかり、何もかも投げ捨てたくなったとき、そこを抜け出し、救ってくれるのは、まずひとつに、どう死にたいかという、人生終着の明確なビジョン、そして第2に、自分はどれだけの人から影響を受け、どれだけの人に影響を与えてきたか、という人との関わりになるでしょう。

 自殺の予防のココロなどという大それたことは、わたしには言えません。ただ、こちら(現在)からと、あちら(未来)からと、人生を複眼的に捉える眼力を備えていく努力は、あなたにとっての自殺のリスクをかなり下げてくれるのではないかと、わたしは信じています。

 株式会社なぞけん ココロとカラダの謎研究所 
  代表取締役 板垣宏征

 ※板垣宏征氏に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。 okada@jmca.net
 ●板垣氏のパーソナル・リーディングについて
 5月14日(月曜日)、東京サロンにて板垣氏による「予防のココロ・エグゼクティブコース」が実施されます。板垣氏とのマンツーマンの個人リーディングで、ガン、脳卒中、心臓病など、気になる病気を予防する心のケア方法を、じっくりアドバイス。詳しいお問い合わせは「ココロとカラダの謎研究所」 (TEL)078−782−6673、(メール)info@nazoken.com まで。
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