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板垣宏征の「見えない・からだ学」 57

「潜在意識と病と 〜ヒステリーというテーマ〜

 ヒステリーという言葉がありますね。現在の私たちには、「きー」とか「ぎゃー」とか金切り声を上げる、というイメージになっていますが、これはもともと精神医学用語だったそうです。

 19世紀の後半、シャルコーという有名なお医者さんが研究し、その弟子、精神分析学の父と言われるフロイトが「ヒステリー研究」を発表して、注目を集めました。

 医学用語で言うところのヒステリーは、何かしら出来事が引き金となる「感情的葛藤(かつとう」)が原因となって起こる、一連の神経症を指すというものでした。

 たとえば、器質的な病気はないのに痛み、運動・知覚の麻痺(まひ)を起こしたり、発熱・嘔吐(おうと)を繰り返したりするもの。また特定の記憶を失うなどの精神症状を訴えるものもあります。これは一般に女性に多く現れる症状とされていました。

 女性に多いとされていた理由のひとつには、その語源にも根拠があるようです。ヒステリーは古代ギリシャ語の「子宮」を表す「ヒュステロン」に由来し、後のローマ時代にも、感情のコントロールの効かない状態を「子宮が体内で動き回る病気」などと呼んでいたと言います。

 来所されたのは40代主婦。味覚と嗅覚がだんだん感じられなくなったということでお越しになりました。ご自身でも「これは脳に問題があるのではないか」と不安を感じて脳神経科を受診。

 検査の結果は「器質的に異常なし」と言われたそうなのですが、症状の方はひどくなっているような気がして、味覚と嗅覚ですから、とうとう料理もできなくなってしまったとのことでした。

 さっそく、心理コードでリーディングを進めていくと、冒頭の「ヒステリー」というコードに強く反応したのでした。ここで、そのまま「あなたヒステリーですね」などと伝えてしまっては、現場が修羅場となりかねません。

 私は心の葛藤が原因となって味覚・嗅覚の麻痺が生じているのか、それに関しての情報を注意深く拾いながら、リーディングを進めていきました。

 「いつごろから、その症状は出始めたのですか」

 私が聞くと、彼女はちょっと考え込むようにして、バッグから病院の診察券を取り出し、「えーと、病院に行ったのはちょうど半年前ですね。でも、兆候はその1年前くらいからあったような気がします」

 「ということは1年半くらい前から、ということですかね」

 「はい、そうだと思います・・・」

 症状が出始めた時期について明確な記憶がない、というのは心理的葛藤によるものの可能性が高い証拠です。

 ヒステリーの一形態として、記憶の奥底に押さえ込んでしまいたい何かしらの出来事が、身体症状に転換している場合は、その発症の時期すら記憶をあいまいにしてしまうのです。

 「何かそのとき大きな事故とか、打撲とかあったんでしょうか」

 「それはないです。だんだん、気づいたらそうなっていたという感じなんですね」

 彼女がそう言うのを受け、私は今回はその話題にあまりつっこまないで終わることにしました。心理的抑圧というのは、無理にこじ開けていいものではありません。

 次回の約束をして、情報水だけはしばらく飲んでもらうことにしました。

 次にいらしたとき、「情報水を飲んでいると、多少マシになったような気はしますが、まだ“におい”や“味”は完全には戻りません」という彼女の前に、このときのリーディングのために用意していた「におい」に関係するGOODSをずらりと並べました。

 香辛料、調味料、消臭剤、お香、香水やオイルなどを10種類くらい。不衛生なものは避けましたが、この中からの相性で「ヒステリー」という心理コードに大きな変化を起こすものはないかと考えたのです。

 順番に手に持ってもらいながらリーディングを進めると、異常に反応したのは「香水」を持ってもらったときでした。

 「何度やっても香水に反応しますね。何か思い当たることはありますか?」

 「香水、香水・・・うーん」

 実はこのクライアントさんにはこのような調子でその後も3回ご来所頂きました。

 その3回目のリーディングのときでした。

 「私の症状が心理的葛藤に原因があるとはあまり信じられないんですけど」と前置きした上で、彼女はこれまでを振り返って、心の抑圧だろうかと自分で思う点を整理してお話してくれました。

 2年前に夫の浮気があったこと。そのときは母親や友人から、男の浮気ぐらい一度や二度は許してやるもんだと諭されて、そんなもんかな、と主人を許したこと。ただ、そこから主人とはすれ違いやすくなり、自分も何か手に職をつけようと資格などの勉強を始めたこと、などなど。

 私は実は2回目、3回目のリーディングの際、そのような点にうすうす気づいていたのですが、この場合、それをご本人の口から、整理して話してもらうことがもっとも大事なことなのです。

 「でも、ほんとうに主人とはそれなりにやっていけていますし、それを引きずっている気持ちはないんです」

 「ええ、そうですか。ところで資格って何を始められたんですか」

 「えーと、最初はパソコン関係でしたが、書道とペン字もやって、最近はアロマセラピスト検定だったんですけど、においが効かなくなったので今は休んでいます」

 ここでようやく全貌が浮かび上がりました。私の推測はこうです。香水とは夫の浮気相手の象徴。確かにすぐにそれとわかる香水をつけてご主人が帰ってきたのが浮気発覚のきっかけだったと言います。

 おそらく彼女はもう二度と浮気はしないでと夫に約束させたと同時に、「今度裏切ったらもう許さない」と自らの心とも約束したことでしょう。

 “絶対しないでほしい、その証拠である香水のにおいだけは嗅ぎたくない”、そんな気持ちが彼女の嗅覚に影響を与えたのです。そのきっかけは、たまたまアロマテラピーのオイルの香りでした。

 また、においが効かなくなって料理もつくれないとは、彼女の抑圧した感情のささやかな抵抗でもあったのです。

 私は、意を決して、ゆっくりと、そんな彼女の気持ち代弁していきました。

 すると、彼女は初めて堰(せき)を切ったように泣き始めたのです。

 「本当は絶対に許せなかったんです。それは認めたくなかったけど、主人に対してだけでなく、あの時の母や友人のアドバイスにも怒りを感じてしまって・・・、もうこれは自分を抑えていくしかないと思ったんですね・・・」

 約2年という月日と計5回のセラピー。遠回りのようでしたが、彼女にとってはそれだけの時間を要して、ようやくきっちりと心の整理ができる出来事なのでした。

 しばらく泣かれた後、あれだけ大きかった「ヒステリー」の反応がすーっと消えていったのが印象的でした。

 第6回目(最後)のリーディングの時のこと。

 「においも味もだいぶ戻ってきました。料理も再開できて、主人との距離も少し近づいたような気がします。やっと許せたんですかね。主人、私のこの症状をかなり心配していたようなんです。自分のせいだとはぜんぜん気づいていませんけどね。私ね、本当は浮気をし返してやろうと何度考えたかわからないんです。でも、今はしなくてよかったと思えます。ちなみに私、この間から料理教室に通い始めたんですよ」

 仕返しとは過激だなー、と思いつつ、でも、それを私に言えるようになったってことはもう、本当にもう大丈夫なんだなと安心もしました。

 「へー、料理教室とはいいですね。腕に磨きがかかって、おいしい料理の虜になれば、男っていうのはもうきっと浮気なんてしないもんですよ」

 ・・・定かでない定説を言ってしまっていた私でしたが、このご夫婦には、なんだかそれが確信できたのでした。

 夫婦間のパートナーシップ。今ほどこれが問われている時代はないかも知れません。それぞれの夫婦にそれぞれのやり方があるとは言え、夫婦とはお互いのからだにも影響をしあっていることをぜひ知っておいてほしいと思う次第です。

 人体の謎研究所&波動リーディングセンター 
  所長 板垣宏征

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 ※板垣宏征氏に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。 okada@jmca.net
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