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板垣宏征の「見えない・からだ学」 56号 |
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「潜在意識と病と 〜自己表現というテーマ〜」 |
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日本語に「言わずもがな」という言葉があります。あるいは「以心伝心」などもそうかも知れません。全部言わなくてもわかるだろうという相手への期待から言葉を省略するのですが、現代においてはこれが十分機能しなくなりました。
これが端的に表れているのが夫婦関係です。いまや伝統的な日本の夫婦関係は見る影もなく、夫婦間の日ごろのコミュニケーションはとても大切だという認識が広まってきました。 団塊世代の引退が続くこれからの時代、「あれ」とか「それ」とか言うだけで家長の権威を振りかざすご主人には、熟年離婚という現実が待っています。 わざわざ北海道から来られた男性。昭和23年生まれと言いますから、まさしく団塊世代。あと数年で仕事を引退しようと言うときに、自律神経失調症に陥ってしまいました。 ちなみに、当所(神戸)には、はるばる遠方からやってこられるクライアントさんが多いのですが、これにはいくつか理由があります。個人的なことを話すので、まったく離れた環境で近しい人にそれと気づかれないようにしたいという人。そして、日常生活から逃れた、まったく裸の自分の心に接してみたいという思いで来る人です。 この男性もそうでした。病院で「自律神経失調症」と診断されたことは、職場でも家庭でもひた隠しにされているそうです。企業戦士としての自負、男とのしての自負がそうさせたと本人もおっしゃっていましたが、これこそがいけません。自律神経失調症やうつ病にとっては、悩みを打ち明ける人がいるというのが最良の薬となるからです。 この方も安定剤や睡眠薬が増えるにつれ、隠し通すことに限界を感じ、やむにやまれず、神戸までいらっしゃったというわけでした。 リーディングを開始して、まず思ったことが、この人は非常に頭の回転が速いということでした。記憶力も鮮明画像のようにすばらしい。 また、私との会話ですら私を慮って、こちらの意図を探り、それに会わせた回答をしようとするのです。ワンラリーの会話の中に、この方は3つも4つも思考のラリーをしている様子でした。 「いいですか。ここでは何の気を遣う必要はありません。私はあなたの職場とも家庭とも一切の連絡手段がありません。私は、あなたの目の前の鏡です。あなた自身を写し出していくためにここにいます」 その言葉に安堵したかのように、この方の口調は一気にスピードを緩めました。張り詰めていた「思考」が解除されると、今度は「感情」が高ぶったような表現になりました。 私が質問するひとつひとつに、怒りと悲しみをぶつけるような返答になったのです。 私はこの時、この方の職場や家庭での自己表現の仕方がありありとイメージできました。 私は、言葉は「個と場」だと考えているのですが、「場」の状況が言葉を活かし、また殺しもします。気を遣いすぎて会話をしていると、時に突拍子もない発言が出たりします。 この方が直面していた課題が、まさに言葉の使い方だったのです。 場を読む「思考」にかけては類まれなる才能を持っているこの方は、それが行き過ぎて相手との会話のキャッチボールがずれることがしばしばでした。 例えば、場を盛り上げるつもりで言ったジョークが相手を深く傷つけてしまったことや、会議の場で、ある人の発言を先取りして言ってしまい、ひんしゅくを買ってしまうことなどが何度もあるそうです。 わかっているのに相手に伝わらない。誤解を受けてしまう。自分の言葉が場を乱すことがこの方には耐えられない苦痛でした。 それは家庭においては逆方向に作用しました。職場とは反対に寡黙になり、一言で意図が伝わらないとすぐに感情的になって、奥さんにつらく当たる。 私は「僕はあなたがすごい人に思います。思考力・記憶力・先見性では経営者並みの才能を持っています」と伝えました。「ただ、多くの経営者が苦心しているのは自分の考えをいかに部下に伝わるようにするか、ということです。何度も何度も噛み砕いて伝えること。その実行のために呼吸を意識して下さいとお勧めしています」 「呼吸?」その方はいぶかしそうに聞き返されました。 「吐く息が自己表現。吸う息が相手からの情報収集だと思ってください。もちろんこれは目に見えるものではありません。自律神経失調症の方には、普段から吸う方が多くて吐く方が少ない方が多いのです。つまり、相手が優先されて、こちらの自己表現が十分できないんです。」 「言われてみると、人前ではいつも呼吸が苦しいと感じますね」 「呼吸を合わせる、と言いますね。言葉は「場の共有」があって、初めて力を持ちます。あなたの才能をうまく活かすためにも、長い呼吸をふだんから意識して下さい。吐く方が長い呼吸は、どんな相手でも包み込むことができますから」 彼はふーと長い息を一息つきました。 「呼吸の仕方でこの苦しみから逃れることができるなら、やってみます」 その日、情報水には脳と心臓の呼吸を合わせる波動情報を転写してお持ち帰りいただきました。 後日、電話をいただいたのは本人からではなく奥さんからでした。 「よくわからないんですが、主人がだいぶ変わりました。主人のからだのことなども初めて聞いたのですが、おかげさまで体調もずいぶんいいみたいです。お前から電話した方が板垣さんにはことの次第がよくわかるから、ということでお電話差し上げたのですが・・・」 うーん、心憎い演出。奥さんに自分の実情や悩みを打ち明け、それも「呼吸を合わせて」しっかり伝えたこと、私にはよく理解できました。 今、「企業戦士」として、「男」としての価値観が大きく揺らいでいます。社会という「場」の方がどんどん変化しているのです。これまでの思考が通用しなくなったと嘆くご主人、経営者の方が多く来られますが、呼吸の仕方で「自己表現」の仕方を変えたとき、新たな言葉の伝え方を獲得できるかも知れません。 引退を控えた団塊世代。この世代がまた新しい価値観を作り出して行ったら、日本はまた光り輝くかも知れないな、考えた次第でした。 |
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※板垣宏征氏に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。 okada@jmca.net
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