●後世に何を残していくのか
塩見氏が使用する携帯はauのごく一般的な機種。
「全角500字で50ページ分の言葉のメモが入っています」
頭に浮かんだヒラメキや気になった言葉などを素早く携帯に入力する。
画面には「PR業者からムーブメント製造業へ」「お香は仏様の食べ物である」等などのフレーズが並ぶ。
「そもそも思いついたことをノートに書きとめていました。でも、満員の通勤電車の中ではとっさにひらめいても思うように書けない。社内での手書きは狭かったのです。
やがてポスト・イットに書いたものをノートに貼るようになり、インターネットの時代に移ってからは、今のカタチになりました。」
塩見氏は1989年から通販大手のフェリシモに勤務。
28歳の時に思想家・内村鑑三の著作『後世への最大事物』を読み、「我々は何をこの世に遺して逝こうか、金か、事業か、思想か、」という一文に大きく影響を受ける。
そして、99年に退職。綾部に帰郷して半農半Xの実践と発信を自らのミッションと定めるに至る。
「自分は明日、死ぬかもしれない。次の世代に何を残せるかと自問して、知恵やアイデアを発信していこうと決めました」
と語る塩見さんは、現在、自身のブログでケータイメモを「メモ銀行」と名付けて公開している。
その狙いについて塩見さんは、「ブログを見に来てくれた人が、メモ銀行を見て、新しいアイデアや自分にとってのXを発見する手助けになれば、これほど嬉しいことはないですね」と説明する。
「これからは知恵を私蔵、死蔵しないでどんどん共有する時代。自分だけの独り占めは気持ち悪いじゃないですか」。
そういって、氏は笑った。
●ITが開くサステナビリティ
塩見氏は「アイデアや新しい発想は既存のものを組み合わせることで生まれます」と語る。
氏が提唱する「半農半X」も、作家・翻訳家の星川淳氏の言葉「半農半著」(農的暮らしをベースに執筆で社会にメッセージする生き方)から生まれたものだ。
そして「すでにある物を活かす」というスタンスも、実は単なる発想技術にとどまらず、地球環境の有限性への氏の洞察に根ざしている。
塩見氏は語る-----
「今あるものをただ消費しているだけでは、資源の限られた地球は持続不可能。受け身でなく、すでにある物から新しいものを自分で創ることが持続可能につながります。」
そこで求められる知恵の共有に、ケータイやブログといったIT技術は大いに役立っているのである。
「知られていないのはないのと同じ。一日一発言、一行動が大切です」と説く塩見氏にとって、ケータイメモは強力なツールとなっている。
ところで、半農半Xについてだが、「生活に農を取り入れる」とは、単に田畑を借りることに収まらない。
例え、東京のど真ん中に住んでいようとも、植木鉢に野菜の種をまくところから始められるのが長所だ。
大切なのは農を通じて自然や生命を感じること、「センス・オブ・ワンダー」をはぐくむことにある。感性を磨くことが新たな創造に結ぶつく
サステナブル(持続可能)な社会を創造的に生きる作法、それが半農半Xなのだという。