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堀文明の「次のトレンド・コンセプト」10



「特定の客層」からの脱皮

老若男女が踊りまくる「アマラウンス・ラウンジ」


内装:樋口泰輔氏


 並木橋を代官山方面に歩き最初の信号を右下に折れるように曲がって正面のとあるビルの5階に、アマラウンス・ラウンジという妖しいバーがある。

 外から見えるのは、窓から見える赤い店内の光のみ。

 看板もインフォメーションも何もないここが週末の深夜ともなると、どこからともなく溢れてくる夜遊び大好きなお客さんでいっぱいになる。

 今回は、「アマラウンス・ラウンジ」を通じて、客層の幅の広さと彼らが自然にコミュケーションしたくなる雰囲気。そのための仕掛けをいくつか紹介しよう。

 ● 「客層」という壁を取り払え!
 

 「タ−ゲットを明確にせよ!」「客層を絞り込め!」そのために店舗のコンセプトを重要視せよ!と、数々のコンサルタントが繰り返し、繰り返し、語る。

 しかし、気をつけないと、逆に小さいネットワーク、同種の人間達が内輪で集まったような閉鎖的な雰囲気の店になってしまう。

 そして、閉鎖的な空間は、お客様に、どこかで飽きられ、特定の顧客への負担(客単価、来店頻度)が高くなると、客離れの悪循環を引き起こすのだ。

 今回紹介する「アマラウンス・ラウンジ」は、お客様の層が極めて多様・多岐にわたっている。しかも 「アマラウンス・ラウンジ」に5分もいると、たくさん友達ができる。

 お客さんが、適度に酔っ払っている。踊っている人もいれば、ソファで語り合っている人もいれば、バーで立ったまま、お酒飲んでい人もいる。そんな不思議な空間を提供しているのだ。

 ● 「ホスト役」が、お客様同士を結びつける!
 

 この雰囲気つくりの要になっているのがドラッグ・クィーンでママのレジーヌ。

 このコラムでは、すっかりお馴染みとなったドラッグ・クィーンだが、ドラッグ・クィーンとは、女装してお客様同士を引き合わせパーティーを盛り上げる人たちのことだ。今、東京のパーティーシーンを語る上では、欠かせない存在となっている。

 女性でもない男性でもない、ジェンダーフリーなキャラクターは性別や年齢、職業、国籍を超えた様々なゲスト達の媒介役にぴったりなのだ。彼(彼女)の存在がたくさんのお客様同士を結びつける。

 お店に行くと必ず近づいてきて誰か別のお客様を紹介してくれたり。さりげないホスト役だ。

 「いい店」=お客様同士のコミュニケーションが促進されるBARの最も大切な要素は、アマラウンス・ラウンジのレジーヌのようなホスト役がちゃんと機能していることである。



写真提供:平野晋子氏


 

写真中央が、オーナーのレジーヌ

「最初はドラッグ・クィーンにあう店を作ったの。それから踊り子たちが遊べる店を。

 そうしたら、音楽関係の人たちやファッション関係の人たち、本当にいろんな人たちが自然に集まってきたわ。

 コンセプトとかスタイルでお客様を規制するのは嫌い。お客様同士が自然に自由にお店の雰囲気を作ったのよ。それが一番楽しいから。」

 




 ● 老若男女が踊りだす仕掛け!

 店内片隅にはDJブースがあり、いつも日替わりでDJがプレイする。岩村学、須永辰夫、NORI、など著名なDJ達が常連のように選曲している。

 しかし、著名なDJたちの中で最も輝いているのが、無名のDJ/バンビというDJだ。

 1960年代から2005年の現代までその選曲セレクションの広さこそが年齢に関係なく多様なお客様が時を忘れて踊ったり飲んだりする大きな要素となっている。

 ハウスやラウンジなどの最先端の音楽がプレイされていたかと思えば、80年代のダンス・クラシックやディスコ・サウンドがアップテンポにかかる。と思えば矢沢栄吉、山口百恵、沢田研二、プレスリー、シルヴィ・バルタン。70年代に青春を過ごした人たち(現在、40〜50歳)がノスタルジーに浸れる選曲を披露する。

 彼がプレイしだすと、20代から50代まで、年齢に関係なく踊りだす。

 ある時は2005年のラウンジのような雰囲気になり、ある時は70年代のカラオケ・スナックの雰囲気になる。ディスコ・ダンスに興じている人たちがいきなりマイクを握ってカラオケを歌いだす。

 そんな選曲、イメージの転換が全く自然に行われるDJの選曲が、エイジレスな顧客層を魅了するのである。

 ●あえて客層を固定しない!

 ホスト役を果たすスタッフの存在、DJによる雰囲気作りに、加えてここのお店の魅力が多彩な客層。

 年齢、職業、ファッション、カルチャーなど様々な境界を越えた人たちが集う。イニシャルしか出せないのが本当に残念だが、私が知っているだけで、歌手&タレントのNさん(30歳。女性)やインテリア・デザイナーのH(40歳。男性)さん、有名ライターのW(50歳。男性)さん、某化粧品会社顧問Aさん(45歳。女性)、イラストレーターLさん(25歳…が集う。

 本当に様々な人たちが会話したり踊ったりするラウンジなのだ。客層を絞り込んで特定の層に絶大な人気を得ている店は多い。それに対して、ここアマラウンス・ラウンジはあえて客層を特定しないことで幅広い客層を集客している。

 


 ●「新しいお客様」の集客装置 

 注目したいのが隔週土曜日に開催されるPARTY。ゲストDJ、ライヴ、簡単なショーなど. 大かがりな照明設備や舞台のない小さなラウンジで展開されるパーティーには毎回様々な「新しいお客様」が訪れる。

 通常営業ではなかなか訪れないお客様がパーティーを開催する日には来店するのだ。こうした新しいお客様がアマラウンス・ラウンジの常連顧客とMIXされて刺激的で楽しいコミュニケーション空間が作り出される。

 そうした意味で、定期的なパーティーを開催することは客層の新しさ・面白さを作る重要な仕掛けなのだ。

 このように、国際化,業際化、カルチャ−の混合、ジェンダーフリー、が進展していくと、老若男女様々な客層を集め(にもかかわらず一つのコンセプトに貫かれている)店舗が注目を浴びることになると考える。

 そして、そのための接客スタッフ、雰囲気作り、集客ノウハウが求められそうだ。



アマラウンス・ラウンジ

http://www.monstera.jp/amaranth/

東京都渋谷区猿楽町2−5佐藤エステートビル3号館5階

Tel 03−3770−2331


 

   店舗プロデューサー 堀 文明

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