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堀文明の「次のトレンド・コンセプト」 7号



「東京一のレストランの作り方」

フーディングストラン AOYUZU(アオユズ)

写真提供 杉田学

 JR恵比寿駅東口を駒沢通り方面に降りると、そこは昔ながらの商店とカフェが立ち並ぶエリア。

 商店街の一角に小さく開いた入り口を地下へ降りると186席のダイニングを配した、ジャパ二―ズ・レストランAoyuzu(アオユズ)がある。階段の両サイドにはドレープ状のカーテンが螺旋を描き、天井からのオレンジ色の淡い照明が、外の商店街のイメージから一転し、オシャレな店舗空間をより引き立てる。

 今回紹介するのは、堀がプロデュースに関わった店舗だ。

 ここは、2001年の開業以来、パリで始まったDJブースを備えたフーディング・レストランの先駆けとして一世を風靡し、現在でも週末は席がとれないほどの繁盛ぶりを実現させている。

 前号でも触れたが、ここはレストランでのイベントやPARTYをいち早く仕掛けたことでも有名。

 今回は、AoyuzuのPARTY戦略を通して、東京一のレストラン・プロデュースについて解説する。





ダイニング奥にある水槽に囲まれたアクア・ラウンジ
このスペースは、癒しとリラックスをテーマとした。

写真提供 杉田学




 ●知名度を一気に上げ、ムーブメントを作り出す!

 Aoyuzuは、もともと日本発の本格的なフーディングレストランとしてオープンさせたため、毎日のように、都内各クラブやイベントでプレイしている有名DJをゲストとして招聘し、レストラン内のDJブースでプレイさせていた。

 オープン当初からそこそこの集客を実現させていたものの、さらに集客力・知名度をあげる仕掛けを必要とした。

 内装、メニューなどは、新しいトレンドを意識した形に仕上げた。残るは、東京一のお客様を集めることが出来る仕掛けさえ整えば、東京一のレストランにすることが出来ると考えていた。

 そこで、強烈なインパクトのあるイベントを実施して一気に知名度をあげる戦略を練ったのだ。数々のアイデアの中から、一気に知名度を上げるにふさわしい戦略が出てきた。それは、デザイナーズ・ホテル「コスト」でDJプレイしているステファン・ポンプァニャックの招聘だった。

 ステファン・ポンプァニャックは、今でこそ世界のレストランやクラブ、音楽シーンでは有名な存在になっているが、当時は、まだまだ知名度は低く、名前だけで集客できるような存在ではなかった。

 東京はもちろん、ホテル・コスト以外で、ましてや世界の飲食店でプレイすることはありえないDJだった。

 しかし、私がDJステファン・ポンプァニャックに注目した理由は、GUCCIのファッション・ショーでプレイするDJとして、ファッション関係者の中では知名度が高かったことだ。

 そこで私は、知名度ではなく「GUCCIのパーティーでしかプレイしないDJ」が、東京のレストランで、いったい、どんなプレイをするのだろう。そんな期待を、多くの業界、メディア関係者などに対して、期待をあおったのである。いわゆるPR戦略を使った。

 もちろん、東京の飲食業界、音楽業界で、彼を知っている人は少ない。知名度がほとんどないステファンを招聘して、果たして、集客できるのだろうか。一抹の不安はあつたが、不安を大きく裏切って、1200名のお客様が御来店した。

 180席しかない店内は、たくさんのお客様で大変な盛り上がりを見せたのだ。





GUCCIのパーティーでプレイしていた
DJステファン・ポンプァニャック(Aoyuzuにて)

写真提供 高山臣慶




 ● 東京No.1レストランへの集客戦略。

 ここで、Aoyuzu(アオユズ)のイベント集客戦略に注目してもらいたい。

 それは、顧客へのDM告知の他に、いくつかの有力なネットワークを使ったことである。新たなお客様を集客することができる人・企業を「絡ませて」、彼らの持っているネットワークを集客につなげたのだ。

 ここで詳細に説明することはできないが、Aoyuzu(アオユズ)では大きく分類すると、6つのネットワークを駆使した。

 大使館関係、芸能関係、外資系企業ネットワーク、ファッション関係、音楽関係、夜遊び大好きな人達のネットワークである。

 6つのネットワークを利用した理由は以下のとおりである。

 

 6つのネットワークを利用した3つの理由

1.和食が、ジャパ二―ズ・フードとして、世界のトレンドとなっていることから、外人客を狙らった。特に、寿司は、SUSHIとして、世界の飲食シーンの「グローバル・スタンダード」となっていたためだ。


2.Aoyuzu(アオユズ)は、レストラン以上でクラブ未満の業態を狙っていた。レストランに+αの要素を求める層、クラブで遊び飽きた層をターゲットとした。従って、深夜まで夜遊び慣れしている人達をレストランに取り込みたかった。


3.Aoyuzu(アオユズ)の強みは、「食」と「音楽」である。特に、レストランでの音楽として脚光を浴びてきたラウンジ・ミュージックの発信基地としてNO.1ポジションを印象づけたかった。従って、音楽、ファッションに敏感な人達を集めたかった。

 

 こうした、ネットワークを操作・活用していく戦略の中で大切なことは、店舗のコンセプトや想定顧客層をはっきりとイメージした上で、想定顧客へ、もっともアプローチしやすいネットワークを利用することである。

 こうしてネットワークを戦略的に活用して、Aoyuzuの顧客を集客。1200人も集めることが可能となったのである。




「Aoyuzuに行かないかって、5人に誘われたわ。」


 モデルのMさんの言葉である。Mさんが素敵なモデルで、いろんな男性から誘われるというのは事実ではあるが、注意したいのは、MさんのところへPARTYの御案内が、『5つの別々のルートから』流れて到達したということである。これを聞いた時、AoyuzuのPARTY戦略の成功を確信した。

写真提供 高山臣慶

 

 ●いろいろな層のお客様をバランスよく集めるのが大切

 東京一のレストランを作るのであれば、社用族のみ、遊び人のみ、ファミリーのみ、お金持ちのみ…など偏ったお客様だけを集めても到底実現することは出来ない。

 ネットワークを活用する上でのポイントは、ネットワークのバランスである。それぞれのネットワークで、どれぐらい集客できるのか。どんな顧客層を、どんなヴォリュームで導入したいか、ある程度のイメージを持つことが大切なのである。特定の客層のみが集まっても、いいイベントやパーティーはできない。

 さらに、どんな客層を集めるかに加えて、どんなバランスで集めるかが重要なのである。これは、メソッドや仕組みの問題ではなく、感性の問題になってくる。

 その感性を養うには、日々、店舗の現場にたって、お店のベストとなる雰囲気、客層のバランスを敏感に嗅ぎ取る感性を養うことが大切だ。

 ここで、1977年NYは、西256番地に開業した伝説のディスコ「スタディオ54」のプロデューサー、スティーヴ・ルベの言葉を紹介する。

 「MIXだよ。大切なのは。サラダみたいなもんだ。いろんな野菜が混じってる。ストレートとゲイ。黒髪にブロンド。イタリア美女がいれば北欧のモデルがいる。アラブの富豪がいればアメリカの金持ちがいる。どれか一色じゃだめなんだ。」

 このMIXサラダのように、いろいろな層のお客様をバランスよく集めなければならない。

 ●パーティーのお客さまを自店の顧客にする

 さて、東京NO.1レストランになるためには、最終的にはパーティーやイベントで集客したお客様を、通常のディナー営業につなげていく戦略を必要とする。

 そこでAoyuzu(アオユズ)では、顧客化のために「Aoyuzu CLUB」という会員システムを立ち上げ、定期的なイベント情報の提供、メニュー変更時の試食会への御招待など、様々な展開を試みた。

 もちろん、パーティーのホスト役と通常のディナー営業でのサービスとが、有機的に連動していくこと。レストラン・スタッフが積極的にパーティー顧客を通常営業につなげていくサービスが重要であることは言うまでもない。

 Aoyuzu(アオユズ)の流れを受けて、現在、都内の多くのレストランで、イベントやPARTYが開催され始めている。

 そこで重要なことは、どんな内容のイベントを開催して行くかという、コンテンツの問題ではなく、そのコンテンツを取り入れることで利用できるネットワークの質とヴォリュームなのである。

 世界中の食材、調理法、人材、情報が東京には溢れている。ロンドンやNYと並んで、レストラン・カルチャーが成熟しつつある今、何度も言うように、味とサーヴィスだけの差別化はきわめて困難な状況となっている。

 Aoyuzu(アオユズ)のように、様々なネット・ワークを駆使したイベント戦略、パーティー戦略が、やはり、今、注目されている。



AOYUZU(アオユズ)

http://www.aoyuzu.com/

渋谷区恵比寿1-8-14大黒ビルB1F
TEL 03―3449―5075

 

   店舗プロデューサー 堀 文明

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